Court of Appeals for the Federal Circuit(略してCAFC、連邦巡回区控訴裁判所)は、販売契約の提示のみでもOn-Sale Barになりえると判決した。
On-Sale Bar − 米国特許法102条(b)において、米国出願日の1年以上前に販売された発明は新規性を喪失します。これは通常、On-Sale Barと呼ばれ、新規性が失われるので特許が無効になってしまう。
この事件では、Hospira 社がthe Medicines Companyの売るAngiomaxという薬に関わる特許の無効を主張。The Medicines Companyは、購買契約書に則って配給業者のIntegrated Commercialization Solutions, Inc. (ICS)にAngiomaxの販売を提示(offer for sale)。この提示は、問題になっている特許の出願日より1年以上前に起こっていた。ここでは、この提示がOn-Sale Barになるかが問題になった。
地裁では、販売契約はICSがThe Medicines Companyのアメリカ配給業者になるという意味でしかないとし、購買契約書はAngiomaxの販売提示ではなく、米国特許法102条(b)のOn-Sale Barを満たさないとした。その後、CAFCに上訴。
2018年2月、CAFCは、購買契約書の内容からThe Medicines CompanyとICSが商品の購買契約を結んだことが明らかだとし、地裁の判決を覆した。ここで問題になった契約書の条項が、1)The Medicines Companyが商品の販売をICSに望み、ICSが購入し、分配することを希望するという部分、2)商品の値段、3)購入スケジュール、4)The Medicines CompanyからICSへの所有権の移行などだ。
このような条項は、販売契約書が販売の提示(offer for sale)であることを示し、以前の関係を変え、品物が流通センターについた際に所有権がICSに移るということは、この行為がAngiomaxの販売の提示(offer for sale)を意味しているとした。
すでに世界規模の供給に関して適当な時間と料金が示されている契約は、販売の提示(offer for sale)を意味するものだという判例があり、今回はその判例を拡大したものになる。問題になっている販売契約は、ICSを一定期間The Medicines Companyのアメリカにおけるたった1社の購入者とするもので、The Medicines Companyは買われるかわからない任意の購買合意を結んでいたわけではないとした。もし買われるかわからない任意の購買合意(an optional sales arrangement )であれば、販売の提示(offer for sale)にならない可能性も示唆した。
しかし、CAFCは、問題の販売契約は販売の提示(offer for sale)として扱われるような条項を含んでいたので、商業的な契約であり、販売の提示(offer for sale)として扱われるべきだと判断。
この事件は、販売契約などを作成する弁護士に対しての教訓になった。契約書のタイトルが何であれ、書かれている条項によっては販売の提示(offer for sale)とみなされ、契約がOn-Sale Barのイベントになってします。意図しないOn-Sale Barのイベントを防ぐためにも、契約を作成する場合、はっきりと曖昧ではない言葉使いで、契約を結ぶ当事者の意図を明確に示す必要がある。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Jonathan M. Lindsay. Crowell & Moring LLP