新しく米国特許庁長官になったIancu長官の公式発表によると、Iancu長官 は、予測可能なシステムの構築を目指していて、特に、PTABにおける手続きに力を入れているということです。Iancu長官 は、指名承認公聴会でPTABのBRI基準(broadest reasonable interpretation)による解釈が手続きの不透明さを引き起こしている原因だと指摘。このような指名承認公聴会での発言を元に考えると、 Iancu長官はPTABでの審査基準を現在のBRIから地裁などで使われているPhilips Constructionに変更するのではということが予測されます。
元記事の著者は、この変更が数ヶ月の内に行われるのではないかと予測しています。また、補正されたクレームにはBRIが継続して適用され、実際には新しい基準はすでに権利化されたクレームの分析にのみに適用されるのではないかと予想されています。しかし、この変更がどの範囲まで及ぶかは不透明で、例えば、新しい基準が継続中のPTABにおける無効手続き等に適用されるのか、reissuesや reexaminationsにも適用されるのかはわかりません。
PTABがPhilips Constructionを採用がどのくらいの影響を及ぼすのかはわかりませんが、PTABでIPRなどを申請する申立人(多くの場合、特許訴訟で被告人として訴えられている)にとっては深刻な問題になる可能性があります。例えば、今までのPTABではBRI基準、地裁ではPhilips constructionの状態の場合、PTABのIPR手続きによって特許を無効化する際はより広い解釈が使え(つまり、先行文献等で特許を無効にするのに有利な基準)、地裁で侵害の判断を行う場合、特許クレームを狭く解釈するPhilips constructionを用いて、侵害を回避できるという、ダブルスタンダードで主張ができますが、地裁とPTABでの基準が両方共Philips constructionになった場合、そのような都合のいい主張はできなくなります。また、PTABと地裁で同じPhilips Constructionが採用されるのであれば、PTABにおける手続きと訴訟が並行して進む場合(または、PTABにおける手続きにより訴訟が一時中断する場合)、PTABにおけるクレーム解釈が地裁でも拘束力のあるものとして採用されることが考えられます。ほとんどの場合、PTABにおけるクレーム解釈の方が訴訟におけるクレーム解釈よりも早い時期に決まるため、PTABにおける手続きでも地裁で行われるMarkman hearing的な、より地裁におけるクレーム解釈の際に行われる手続きが採用される可能性もあります。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Scott A. McKeown. Ropes & Gray LLP
PTAB Likely to Adopt a Philips Construction for AIA Trials in 2018