コロナショックで地方の事務所が伸びてくる?

日本では緊急事態宣言が延長され今後の経済活動が不透明です。アメリカでも徐々に経済活動を許可する州が増えてきましたが、段階的で実際に以前のレベルまで戻るのにどのくらいの時間がかかるかはわかっていません。そこで、今後予測されるコロナショックによる不景気を乗り越えるためのコスト削減について考えたいと思います。

人が中心のコスト体系

アメリカの特許事務所の場合、コストのほとんどが人経費です。優秀な人材を集めるために条件をよくすると、やはり人経費が上がります。特に、特許弁護士はそもそも必要資格をとれる人材が少なく、それに伴い、給与も他の弁護士よりも高くなってしまう傾向があります。また、働く環境としても、アメリカの大都市の一等地にオフィスを(複数)構えていたりするので、売り上げに対する人に関するコストの割合がとても高いという特徴があります。

アメリカの大手特許事務所はニューヨークやワシントンD.C.、サンフランシスコ、シカゴなど特に大都市に多くの拠点を抱えているので、そこで雇う弁護士の人経費や家賃などが弁護士費用の一部として組み込まれています。

日本でも特許事務所は東京に集中していますよね。つまり、日本でも同じようなコスト体系になっていると思います。

予算縮小による仕事の減少

しかし、特許事務所にとっての収入源を見てみると、クライアントからの弁護費用(出願準備、契約、訴訟なども含め)がほとんどです。つまり、コロナショックで不景気になりクライアントの知財関連予算が縮小されたら、必然的に仕事が減るか、何らかの費用減額交渉をしなければいけない状況になるはずです。そうなると事務所の全体的な収入は落ちます。しかし、人が中心のコスト体系なので、いままでの人材を維持していれば、損益分岐点は変わらず、経営が悪化することになります。

また、クライアントが長年同じ事務所に出願を依頼していても、別に(契約違反の時に違約金が発生するような)長期契約をしているところはほぼないと思うので、条件が合わなかったら別の事務所にスイッチするということも可能です。(実務で対応する知財部員さんは担当者が変わって大変だと思いますが。。。)

そして、今回のコロナの影響でクライアント側が出願数をより厳選し始めたり、知財に対して消極的になってしまったら、多くの広告主がコロナの影響で広告費用を削減したのと同じように、知財業界全体の規模が縮小していく可能性もあります。

コスパがいいところが勝つ?

このように、いままでのようなコスト高な体制だと、今後の仕事量が減り、新規の仕事も取りにくい環境になるはずです。そこで、個人的には、コロナショックで地方の事務所が伸びてくと思っています。

地方の事務所にはコスト面で、大都市に大きな事務所を構える大手には絶対に勝てないメリットがあります。そもそも地方での生活費は大都市に比べ大分安いので、その分、待遇を大手レベルにしたとしても人経費を安くすることができます。また、オフィスの家賃も大都市の一等地と比較すると安価です。

今回のCOVID-19の影響で、特許事務所のようなリモートでも十分成立するサービス系の業態が大都市に立派なオフィスを構えておく必要はなくなったと思っています。いままでは、「箔をつける」ために大都市の一等地に素晴らしいオフィスを構え、たまに来るクライアントや働く弁護士や従業員にアピールする必要があった思いますが、COVID-19の影響でリモートワークでも十分業務ができることが証明できたと思います。つまり、大都市に大きな事務所を構えているところが必ずしも「いい事務所」ではないということが周知になったと思っています。

この新しい「常識」を得て、会社側から予算を減らすように言われたクライアント側はどうするでしょう?依頼するならとりあえず「大手」という意識が変わって、地方のよりコスパのいいところとも仕事をするようになるのではないでしょうか?

このような需要のシフトに加え、供給にも変化があると思っています。と言うのも、今まで大都市にある大手で働いていた弁護士も、感染リスクや健康上の問題から、3密の大都会に住むのではなく、もうすこし自分のスペースが持てる地方に移動するのではないでしょうか?そうなれば、いままでは地方の事務所には目を向けなかった優秀な弁護士も地方に移動し、クライアントとしては(人に関するコストが下がるので)よりリーズナブルな費用で同等のサービスが受けられることになります。

私が地方で特許事務所をやっているなら、今すぐに新規顧客を取り入れるキャンペーンを計画し、新規事業が来るにつれ、都心部の優秀な弁理士を引き抜けるような環境作りをしていると思います。

都心の大手にも対応策はある

今回のCOVID-19の影響で今後は地方の事務所が大きく伸びる可能性がありますが、都心にある大手事務所はこれで終わりという訳ではありません。

例えば、リモートワークで業務が通常通りできている(それ以上に生産性が上がっている)のであれば、働きかたを変えて、コロナ終息後もリモートワークを中心とする業務形態に移行するのはどうでしょうか?

実際に事務所に行く必要がなければ、従業員はわざわざ都心の近辺に住む必要はありません。もし今後従業員が地方に住むことを検討しているのであれば、それを推奨したり、引っ越しや一時的な住居手当を行い、彼らの生活費を低くすることで、給与を上げないでもより豊かな生活を送れるようにしたらどうでしょうか?

後は、同一労働同一賃金とリモートワークの考えを合わせることで、従業員に生活費の高い都心ではなく、よりコスパのいい地方での生活を考えてもらうような仕組みもいいですね。この活動がうまくいけば、都心のオフィスの規模も縮小でき、より固定費のかからない事業運営ができます。

そのような活動を通して事務所のコスト体質を変えられれば、事務所のネームバリューを保ちながら、よりコスパの優れたサービスを展開でき、今後伸びてくる地方の事務所にも十分対抗できるようになるはずです。

まとめ

COVID-19の影響で、特許事務所の業務を行うのに必ずしも都心に事務所を構えておく必要がないことが多くの人に知られたと思います。コロナショックの不景気で求められるのは、コスパです。地方の事務所のように人にかかる費用が少ないところが有利になって、市場を大きく変えていく可能性を秘めています。

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