オンデマンド弁理士

コロナに対応した新しい生活様式が求められる中、知財関係者の働き方も変わってくると思います。今回は、様々な市場のギグワーク化から、オンデマンド弁理士の可能性について考えてみたいと思います。

アメリカでは多くの弁護士がコロナで仕事を失った

この図からわかるように3月から4月にかけて法曹界の雇用が極端に下がりました。アメリカでは知財も法律事務所の1つのサービスとして行われていることが多いので、知財業界としても決して軽視できる変化ではありません。

日本の雇用はアメリカよりも手厚く保護されているのでこのように極端な減りはないと思いますが、それでも、いくつかの企業は雇用のジョブ型になったり、フルリモートになったり、大きな変化が起こってきています。

更なる効率を求めて

しかし、コロナショックで多くの働き手が職を失っている今、職場に残っている一人ひとりの業務効率は上げていかなければならず、その仕事量をまかないきれないため、必要に応じて人材を一時的に補給するという動きが、知財の業界でも起きてくると思います。

今までも派遣はありましたが、効率やコストパフォーマンスをよくするために、コアな人材は社内(事務所内)で維持して、それ以外のことや急な案件で人手が必要になった場合にオンデマンドで必要な人材を一時的に雇う、そんな今までよりも需要に連動したプロジェクトベースの一時的な雇用のニーズが増えてくると思います。

また供給面では、職を失った弁護士や弁理士がいるので、その人達が再就職するまでの間、Freelanceとしてギグワークをするというオプションがあってもいいのではないでしょうか?その方が、休職中もスキルを活かせて経験も積めるし、収入も得ることができます。また、プロジェクトベーズなので、フルタイムの仕事が見つかれば、freelanceをやめるのも比較的簡単。

このようなコロナによる雇用形態の今後の予想される変化は、UberやAirbnbに代表されるギグ・エコノミーという流れが、知財にも来て、オンデマンドで仕事をするという傾向に進んでいくと思われます。

コスパと仲介会社の役割

オンデマンドで法律事務所が必要な人材を確保できれば、コアメンバーだけを事務所にとどめ、「外注」できるものは外に出してコンパクトで身動きが素早いチームを作ることができます。

また、典型的な法律事務所を見ると利益1/3、維持費1/3、実務者の賃金1/3の割合が一般的です。しかし、外注をうまく利用すれば、事務所の維持費を軽減できるので、フリーランスに社内の実務者へ支払う賃金より高い金額を支払っても、更なる利益を事務所に還元することもできます。

このようなコンセプトを元にしたビジネスはアメリカで多数あり、Law ClarkAxiom などが弁護士をオンデマンドで提供しています。Law Clarkは弁護士事務所向け、Axiomは大きな企業向けといったイメージがあります。

個人的には、需要に合わせてFreelanceなどを活用する業務形態は、うまく活用すればクライアントへの付加価値を高めることになるので、知財業界でも是非一般化してほしいと思っています。しかし、Freelanceで働いてくれる弁理士の質だったり、毎回違うFreelanceと一からコミュニケーションをして仕事をしていくめんどくささなどがあるので、一緒に働くFreelanceの能力に応じて与える仕事をどう選ぶかがカギになってくると思います。それがうまくできればオンデマンドで素晴らしいチームができ、コスパのいいサービスをクライアントに提供できます。しかし、そこを間違ってしまうと、サービスの質が毎回異なるという問題を抱えてしまいます。

また、弁理士がFreelanceとして働くことも歓迎したいところです。今までの弁理士の需要は、特許事務所か社内知財という2択しかなかったので、Freelanceという新しい働き方のオプションがあることで、選択肢が増え、弁理士であっても現状にあったライフスタイルを形成しやすい環境になってくると思います。

しかし、「派遣切り」やUberなどのギグワーカーに対するサポートの不備など、ギグ・エコノミーの問題は知財界でも起こる可能性は十分あるので、必ずしもすべての人がWin-Winになるというわけでもなさそうです。

そして、キッズラインの不祥事などを見ると、仲介会社を行うのも楽ではないです。今後は様々な規制が出てくるかもしれませんが、このようなギグワークは1強か2強しかビジネスとして成立しないので、早期参入して、シェアーを独占するのが最もいい戦略なのかもしれません。

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