時系列で見たNPE案件の和解金推移

2011年のAIA以降、特許の権利行使は難しくなった。この環境の変化は、RPX社の和解金に関する調査に顕著にあらわれている。(元記事のグラフを参照)。Alice事件後、NPE関連特許訴訟の和解金の平均は$1.5Mとなり、AIA以前の$2.1Mを大きく下回った。また、中間部分 ($500K から$10M)に大きな変化があった。 通常、NPEと和解する場合、多くの企業は低額($500K以下)で和解(早期に和解すると低額になる可能性が高い)し、少数の企業は中間部分 ($500K から$10M)の間で和解するという、少額和解に極端に傾いた構図を示すことが多い。ほとんどのケースは少額で和解するが、例外としてトップ5%の場合、和解金が$10M以上になってしまう場合もある。

 

このような傾きは、防衛費用の減少によるものだと思われる。AIAとAlice事件以前は、特許の有効性などの判決はSummary judgement(日本語では略式判決)まで待たなくてはならず、高額なDiscoveryを行なった後でしか、有効性に関わる判決はなされなかった。。しかし、今日においては、被告側が、Alice事件を判例として用いて、特許の有効性のなさを理由に、早期に案件を取り下げる試みを行なったり、Post-grant review手続きを行い、PTABが特許の有効性を判断する間、裁判を止めるなどの対策を取ることが多い。

 

このような取り組みをおこない、特許の有効性を裁判を進める上での境界線にすること(つまり、特許の有効性を判断してから他の点について手続きを進めること)によって、被告側は訴訟対応費用を減らすことができる。このような状況下、訴訟の早い段階で、被告側がNPEと和解することができれば、少額で和解できるチャンスが増えてくる。

 

このように環境がNEPに厳しい状況になりつつあるが、さまざまなNPE組織が特許の収益化を目指して機会を伺っている。2017年、IP Edge LLCという組織は、関係のある複数のNPE組織を通じで350以上の被告人を既存、または、新しい特許訴訟に加えた。2017年、IP Edge LLCがもっとも活発なNPE組織だった。2番目は、個人発明家Leigh M. Rothschild氏。Rothschild氏は、他のNPE組織から買い上げた特許でも訴訟を起こし、訴訟を多角化した。NPEのトップ5は、Monument Patent Holdings, LLC や IP Valuation Partners LLC、SportBrain Holdings LLC、Hybrid Audio LLCなどに関連している組織が含まれている。Shipping & Transit LLC、Brian Yates (–70%)、 Empire IP LLC (–66%)などは、2016年の活動に比べて、大きくランキングを下げた。(元記事のグラフを参照)。

 

まとめ作成者:野口剛史

元記事:RPX Blog

http://www.rpxcorp.com/2018/01/02/2017-in-review-a-year-of-transition/

ニュースレター、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

特許出願
野口 剛史

予測不可能なことを予測する -組み合わせはいつ明らかになるのか?

化学や医薬の特許において、「予想外の結果」は自明性への反論としてとても強力なツールになります。しかし、どのような結果が「予想外」なのか?それをどう明細書で示すべきか?予想外の結果が得られたとして、そこまで特許出願に手間をかけるべきか?これらの質問について答えていこうと思います。

Read More »
laptop-typing
未分類
野口 剛史

忘れられないためのEmailニュースレター

前回のブログアイデアでも簡単に紹介したEmailニュースレターの知財プロフェッショナルとしての活用方法に注目します。ニュースレターもブログと同様、文字ベースの専門的な情報を発信するのに適しているので、弁理士のような専門性が必要な業種と相性がいいメディア媒体です。しかし、なぜか知財系のブログではEmailニュースレターを発行しているところをあまり見かけません。

Read More »