これだけは知っておきたい判例集

主に2017年にあった重要な判例と今後注目すべき案件の紹介。

 

PTABのInstitution判断に対する上訴

CAFC大法廷において、35 U.S.C. § 315(b)におけるIPR提出期限(侵害に対するクレームがあってから1年間)が問題になったWi-Fi One LLC v. Broadcom Corp.。この事件で、CAFCは、§ 315(b)における上訴は可能と判断。今後、§ 315(b)のような、問題特許の実態的な部分に関連しないInstitution判断に対する上訴が増えると思われる。

 

クレームの補正

CAFCは、Aqua Prods., Inc. v. Matalにおいて、PTABによるpost-grant手続きでは、特許権者に代替クレームの特許性に関する説得義務(the burden of persuasion)を負わせないという判決を下した。これに対応して、PTABでは、クレーム補正の申し立てのガイドラインを作成し、PTABが代替クレームが35 U.S.C. § 316(d)を満たしているかについて、証拠の優越(a preponderance of the evidence)という基準で全ての証拠を考慮して判断するとした。

過去に提示さてた先行例:

Unified Patents Inc. v. Berman. PTABは、申立人の無効理由3つ全てが以前、審査官に使われた先行例に依存していて、また、合わせる2つ目の先行例も特許審査期間中に使われた他の先行例と同じように使われているため、このような過去に提示さてた先行例は、PTABでは考慮されない。

Hospira, Inc. v. Genentech, Inc. 申立人は、特許で主張されている優先日を問題視。しかし、PTABは、特許審査期間中に審査官は、優先日に関わるwritten description と enablementの問題をすでに十分考慮していること、また、PTABに申立人が新たな証拠を提出したり、新たな主張を行わなかったとして、優先日に関わる事柄を考慮しなかった。

Cultec, Inc. v. Stormtech, LLC. PTABは、特許審査期間中に申立人の代理人がthird party submissionを使い提出した先行例を、再度Post grant reviewで考慮することを却下。

このような事例から、IPRも含めたPost grant reviewでは、特許審査期間中に考慮されていない新しい文献や先行例が必要になってくることがわかる。

その他、Juniper Networks, Inc. . Mobile Telecomms. Techs., LLCでは、PTABが考慮すべき6つのポイントを紹介。

 

上訴における当事者適格 (Standing to Appeal)

Phigenix, Inc. v. ImmunoGen, Inc. IPR、PGRなどの判決が不服の場合、CAFCに上訴できるが、その場合、連邦裁判所において訴訟を起こせる当事者適格(Article III standing)が必要になる。つまり、上訴する場合、当事者は、法律で守られた明確で、実際に存在し、目の前にある利益に対する侵害を証明する必要がある。つまり、申立人の立場によっては、IPR、PGRは起こせるが、CAFCに上訴できないという状況があり得る。

今後注目ケース:

Oil States Energy Services LLC v. Greene’s Energy Group, LLC, 16-712 (S.Ct.) ― IPRの合憲性。

SAS Institute, Inc. v. Matal:PTABのfinal written decisionにおける問題。

GoPro, Inc. v. Contour IP Holding LLC, 17-1894 (Federal Circuit) – Public disclosureにおける問題。

その他、取り上げなかったケース

Institution of multiple petitions challenging the same patent (General Plastic Industrial Co. Ltd. v. Canon Kabushiki Kaisha)

Eligibility for CBM Review (ecureAxcess, LLC v. PNC Bank National Ass’n, et. al, 848 F.3d 1370, 1378-1381 (Fed. Cir. 2017); see also Unwired Planet, LLC v. Google, Inc., 841 F.3d 1376, 1379-82 (Fed. Cir. 2016))

APA Compliance by the PTAB ( Ultratec, Inc. v. CaptionCall, LLC, 872 F.3d 1267, 1272-1275 (Fed. Cir. Aug. 28, 2017)

Joinder/Expanded Panels (Nidec Motor Corp. v. Zhongshan Broad Ocean Motor Co. Ltd)

Sovereign Immunity(Ericsson v. Regents of the University of Minnesota、Reactive Surfaces Ltd., LLP v. Toyota Motor Corp)

Patent Owner Estoppel (Arthrex, Inc. v. Smith & Nephew, Inc.,)

 

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Julianne M. Hartzell. Marshall Gerstein & Borun LLP

PTAB Cases You Should Know

ニュースレター、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

訴訟
野口 剛史

リモートワークの常時導入が特許侵害訴訟の裁判地に与える影響について

COVID-19の大流行は、リモートワークがアメリカ全土で広まりましたが、一時的な対策としてだけでなく、リモートワークを常時導入する会社も増えてきています。しかし、常時リモートワークになった場合、特許侵害訴訟の管轄や裁判地に影響を与える可能性があるので、注意が必要です。

Read More »
特許出願
野口 剛史

特許動向レポート2022:特許の目的、価値、保護、技術に関するグローバルな考察

知財に強いアナリティクス企業Clarivateが2022年の特許動向レポートを公開しました。国際的な知的財産を効率よく活用していくには、グローバルな視点で特許の動向を見極めることが必要です。このレポートでは世界中の275人のIPおよび特許の専門家に意見を求め作成されました。

Read More »