日本の事務所もリモートワークが進む中、アメリカの事務所も強制イベントとしてリモートワークが始まっています。アメリカの法律事務所は数百名の弁護士がいる大手もありますが、弁護士1人や数人でやっているものも少なくありません。今回は、そんな小規模の事務所を対象にしたリモートワークのWebinar講座があったので、レビューしてみました。
タイトル:Webinar Recap: How to Run Your Law Firm Remotely During COVID-19
講師:Martin Cogburn
ウェビナーリンクはここから。
全体的な解説
Webinarの全体的な流れがとてもよかったと思います。「今」やらないといけないことが解説された後、リモートワークに必要なツールの説明、事務所の運営(スタッフの管理やポリシーなど)、最後に精神衛生を維持するためのサポートシステムの紹介で終わります。
リモートワークを突然やらなければいけないとなるとハードルが高いですが、今回のおWebinarを見ればとりあえず対応できるレベルには到達できるのかなと思いました。とは言う物の、1時間ほどのWebinarですべてを説明することは難しいので、このWebinarでやることを洗い出して、まず最初にやるべきこと(最初の15分ほどの説明)ができたら、他のリソースなどを見て、自分の事務所にあったリモートワークの環境作りを整えていくのがベストな解なのかなと思いました。
環境作りというと、リモートワークのツールに目が行ってしまいますが、結構スタッフの管理やポリシーなどそっちの方が経営者にとってはやっかいなのかなと思っています。リモートワークで、同じ空間にいないので、「何を・いつ・誰がやるのか」をはっきりさせないといけません。それができていなかったら、ポリシーやタスク管理などを一から自分で作らないといけないので、作業量が半端じゃないと思いました。
このWebinarを聞いてみてわかったことは、日々の何気ない時に行っていた取り組みによって大きな差が出てくることです。リモートワークを取り入れていなくても、業務の効率化や見える化をしていたところは結構ポリシー周りができあがっているので、リモートワークへの移行も簡単だけど、逆に、昔から紙ベースでの複数の担当者に依存していたアナログ対応を変えてこなかったところは、リモートワークへの課題が山積みになってしまうという現実。
この今までの企業(事務所)努力の差が今後の事務所のポストコロナの時代での生き残りを決めるのかもしれません。
ウェビナーのまとめ
短期的にみて、まずすること

優先順位をしっかり決める。
クライアントの情報を整理して、アクセスできる状態にする。
リモートワークに関してなるべく早くクライアントに連絡を入れる。コミュニケーション等に変更があるならそこで伝える。
セキュリティー設定の都合からオフィス以外でアクセスできない情報があるなら、セキュリティーに問題ない形で安全にオフィス外からアクセスできるように設定する。
クライアントの個人情報に関わる情報については取り扱いを特に気をつける。
事務所の電話や留守番電話のメッセージを自動的に自分やスタッフの携帯に転送できたり、オンラインで管理できるシステムを検討するべき。
訴訟や係争などがある場合、相手方の弁護士にも今後のコミュニケーションに必要な情報を提供し、必要だったら、リモートワークの環境が整うまで交渉や訴訟手続きの延長ができるか問いかけてみる。
金銭的には、支払いや給与がリモートでも支払われるようになっているか、支払いは電子的に決算できるようになっているのか、それとも小切手を送っているのか、今後の運営にローンが必要であれば金融機関にすでに問い合わせしているか?
リモートワークに必要なツール

パソコン
ホームページを更新して情報配信
案件管理ツール
Googleカレンダーなどのオンラインカレンダー
クラウドストーレッジ(自前のサーバーはセキュリティーリスクがあるので使わない方がいい)
紙の資料は、スキャンして電子化する
Faxが必要な場合、電子版のFaxサービスに移行するべき
郵便は郵便局のサイトから転送手続きをする
郵便電子化サービスを使う
契約書などは電子署名で対応(使っているソフトのやり方を覚える。署名する書類や契約書で電子署名が使えることを確認する。)
コミュニケーションはZoomなどさまざまなツールがあるが、セキュリティーに注意して決めるべき。
バックアップデーターを頻繁にとる。ローカルのバックアップ(ポータブルHDなどで)とオンラインのバックアップサービスなどを併用して複数のバックアップが定期的にあるような状態を作る。
セキュリティーは気をつけるべき。弱いパスワードは使わない。Multifactor authentication を使う。WiFiのセキュリティーも気をつけ、VPNを導入することも考えるべき。
事務所の運営に関して

リモートチェックインをスタッフに求める。スタッフとのコミュニケーションを十分取る。ビデオ会議がいい。
ポリシーを確認する。有給、勤務時間、リモートワーク、セキュリティーなどに関するガイドラインが明確かを確認する。
この機会をきっかけに、運営に関して改善する
新規開拓を忘れない。新しいやり方を検討する。
精神衛生

孤立しない
メンタルと体のケアーを忘れない
1日のリズムを崩さない
サポートグループを活用する