ITC調査でConverseの70年も続いた商標が取り消しになってしまう

約2年も前ですが、商標侵害に関わるITC調査という珍しいケースなので紹介します。

スニカーなどを作っているコンバースは、彼らのスニーカのデザインの一部midsoleの部分に関して商標 U.S. Registration No. 4398753を持っていました。これは、70年も続いた商標だそうです。ここで、「商標を持っていた」と書きましたが、このmidsole商標、ITCで無効になってしまいました。

経緯

商標で保護されている特徴等は、元記事に図入りで丁寧に解説されているので、それを参照してください。

コンバースは、輸入される靴の中でmidsole商標を侵害しているものを排除するために、ITCに対して商標侵害の調査を申し立てました。

ITCにおける知財の侵害調査は、アメリカ地裁で差し止めが難しくなった現環境の中、注目を集めている権利行使の方法です。(ITCに関する概要は、前回Open Legalでウェビナーを行なったので、そのウェビナーのまとめページを参照してください。)ITCによる知財侵害調査のほとんどは特許ですが、今回は商標です。

コンバースは、ITC調査の対象に30社近くを指名し、ITCに一般的排除命令を希望しました。その内、多くの会社はコンバースと和解しましたが、WalmartやNew Balanceなど数社が公判まで争いました。

一般的排除命令(General Exclusion Orders (“GEOs”)): ITC調査において、侵害が認められ、さらに一定の条件を満たした場合のみに適用される。製造企業、輸入業者に関係なく全ての侵害品が対象になる。一般的には、限定的排除命令しか認められない。

限定的排除命令(Limited Exclusion Orders (“LEOs”)): 最も一般的な排除命令。ITCで調査の対象になった企業の侵害品のみに適用される。

このITC調査の結果、ALJ(Administrative law judge)と呼ばれる行政法判事は、コンバースの商標のsecondary meaning(派生的意味)を認め、連邦商標のU.S. Registration No. 4398753は有効だという仮決定(Initial determination(“ID”))を下しました(矛盾している決定ですが、コモン・ロー(common law)における保護は無効と判断)。

その後、手続き上、ALJの仮決定はITCのコミッション(Commission)でレビューされますが、そのレビューにおいて、コミッションがALJの仮決定を覆します。コミッションは、80年以上の間同じようなデザインの靴が複数の他社から販売されていたことと、商標の有効性に対して重要な証拠として扱われるアンケート調査(Survey)での結果が派生的意味を証明するほどの高い数値を示していなかったことに注目し、連邦商標のU.S. Registration No. 4398753は無効だという最終判断を下しました。

この判決の結果、コンバースのmidsoleデザインについては、連邦商標もコモン・ローにおける保護もなしということになり、調査の対象になっていた会社の侵害もなしという結果になりました。

最後に

知り合いの商標を扱っている日本の弁理士さんにこの事件のことを教えて頂きました。感謝です。

 

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者: Naresh Kilaru. Finnegan, Henderson, Farabow, Garrett & Dunner, LLP (元記事を見る

OLCの米国知財ニュースレター

最新まとめ記事を
毎週メールボックスにお届け

登録すると、週1回、最新まとめ記事の概要とお知らせを受け取ることができます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

fake-gun
商標
野口 剛史

特許庁による偽物標本の取り締まり

特許庁は、2018年3月、商標出願に関わる不正標本の取り締まりのためにパイロットプログラムを発表しました。このプログラムでは、一般の人がグラフィックソフトウェア等で編集された標本や偽造された標本を専用メールアドレスに報告することができます。アメリカでは、中国から大量の商標出願があり、その多くが基準を満たしていなかったり、違法性のあるもので、特許庁は対策に迫られていました。ルールの変更等も視野に入れていますが、今回の取り組みは、いつ終わるかわからないパイロットプログラムですが、すでに運用されていて、誰でも簡単に偽物標本を報告することができます。

Read More »
display-with-code
契約
野口 剛史

米国国防省の知財問題は中国でなくデータ

HUAWEI問題などを発端に、アメリカ政府は中国を知財問題で取り上げていますが、会見によると国防省の知財に関する認識の甘さ、特にデータの所有権問題が大きな課題のようです。これは国防省だけの問題でなく、大企業でも十分起こりうる問題です。

Read More »
stop-estoppel
訴訟
野口 剛史

裁判所選びができなくなる?TC Heartland 事件で特許訴訟の被告側が有利に?

人的管轄を理由に裁判地を決めることができなくなったので、特許権者が選べる裁判所は大きく制限された。今後は、人的管轄を理由に多くの特許訴訟が起こされている Eastern District of Texas に おける特許訴訟数が減少することと、逆に、多くの会社が設立されている Delaware 州 や California 州での特許訴訟数が増加することが予想される。

Read More »