Open Legal Webinar シリーズ

米国特許訴訟戦略のために知っておきたい米ITC調査のまとめ​​

数多くのITC調査を弁護してきたFish and Richardson法律事務所の特許訴訟弁護士である2名、Aamir Kazi と Ben Thompsonを講師に招いて、地裁における特許訴訟の代わりにも使われる米ITC337条調査について話しました。

  • ITCと地裁の違いとは何か?
  • 特許侵害によるITC337条調査の全体像
  • 国内産業要件(Domestic industry requirement)とは?
  • 日本企業が気をつけたいこと

ウェビナーのまとめ

講師紹介


Aamir Kazi (アミア・カジ):
Fish & Richardson法律事務所のPrincipal。10年以上に渡り特許訴訟、特許の適性評価(due diligence)、特許コンサルティングなど特許に関わる幅広い分野において実績を持つ。特に米国際貿易委員会(the International Trade Commission)での特許訴訟調査において数多くの有名企業を弁護。

Ben Thompson (ベン・トンプソン):
Fish & Richardson法律事務所のPrincipal。地方裁判所における特許訴訟や米国際貿易委員会(the International Trade Commission)における特許訴訟調査において数多くの有名企業を弁護。

 

はじめに

今回は、米ITC調査の事前知識がなくてもバイリンガルでITC調査について学べるようコンテンツを作成しました。ITCという組織の説明に始まり、地裁での特許訴訟と比較したITC調査の特徴(国内産業要件、救済方法、調査の概要)を説明した後に、最後に日本企業としてITC調査に関わった際の知っておきたいポイントを紹介します。

 

ITCという組織

ITCとは、U.S. International Trade Commissionの略で、日本語では、米ITC、ITC、米国国際貿易委員会とも言います。ITCは米国連邦政府の行政機関で、不正競争に関して取り締まりをする組織です。アメリカ特許庁(USPTO)と同じ憲法第一条(行政)の下に存在する組織で、憲法第三条の下に存在する連邦裁判所とは別の組織です。

ITCは、違法製品の輸入に対して排除命令(exclusion orders)を出すことができます。「違法」の範囲に、特許侵害も含まれるため、地方裁判所における特許訴訟の代わりにITC調査が使われる場合もあります。

以下で説明するITC調査の特徴から、パテント・トロール(Patent troll、NPE、Non-practice entities)ではなく、競合他社が調査の申し立てを行うことが多いです。

ITCは、不正取引から国内産業を守ることを目的にしており、その目的を達成するための特別なルールから地裁での特許訴訟との違いが生まれています。

 

地裁とITCの違い

それでは、地裁における特許訴訟とITC調査を比較して違いを見てみましょう。

1.手続きの速さ:ITC調査で一番知ってほしい点が手続きの速さです。地裁では数年かかる手続きをITCでは12ヶ月以内に行なってしまいます。手続きが進むスピードが早いということは、それだけ対応するコスト(時間、お金、リソース)がかかることになります。ITCは時間との勝負と言っても過言ではないでしょう。

2.国内産業要件(Domestic industry requirements): ITCの目的が不正取引から国内産業を守ることなので、ITC調査を申し立てする特許権者は、以降のスライドで説明する国内産業要件を満たす必要があります。

3.陪審員v.ALJ:地裁では陪審員による公判が行えますが、ITC調査では、ALJ(Administrative law judge)と呼ばれる行政法判事によって公判が行われます。地裁における陪審員による公判では、とにかく素人にもわかりやすい説明と主張が求められます。しかし、ALJは特許に関わる仕事を頻繁に行っているので、担当ALJの理解度や性格にあった説明や主張を行う必要があります。

4.救済:地裁は賠償金と差し押さえの両方ができますが、差し押さえは2006年のebay事件以降、認められにくくなってしまいました。一方、ITCは不正取引から国内産業を守る機関なので、輸入品の排除命令(exclusion order)とすでに輸入された違法製品の流通を止める停止命令(cease and desist order)が可能です。ここでの大きな違いは、地裁では過去の侵害に対する賠償金を請求できますが、ITCではそのようなことが一切できないことです。

5.対象:地裁ではアメリカ国内における特許侵害についても訴訟を起こすことができますが、ITCの場合、輸入品のみが対象になります。これも、ITCの役割と地裁の役割の違いからこのような差が出てきます。

6.証拠法:地裁では連邦証拠法(Federal rule of evidence)が用いられますが、ITCではITC専用に変更が加えられた証拠法が用いられます。また、各ALJごとに独自のルールを設けています。ここでの違いで特に大きな点は、Discoveryの速さと適用範囲の大きさだと思います。日本サイドで、証拠法の違いの詳細を知っている必要はないと思いますが、弁護士を雇う上で、担当弁護士がITC独自のルールに精通しているか?事前に確認しておくことが大切なポイントだと思います。

7.裁判形式:特許訴訟を含む通常の裁判所の訴訟は、申立人(特許の場合、特許権者)v.被告人で争われますが、ITC調査の場合、公益を代表して政府の調査員(staff attorney)が独立した組織として介入し、三つ巴で手続きが進みます。

8.ジェネラリストv.スペシャリスト:上記3の点に関係するポイントで、地裁では、陪審員や特許訴訟に慣れていない地裁判事というジェネラリストが事実認証を行なったり、判決を下します。しかし。ITCではALJという特許問題を頻繁に扱うALJが担当するので、この違いを考慮して説明や主張を行う必要があります。

9.管轄:地裁は、裁判地を選ぶ上で、対人的で当事者の所在地や侵害が起こっている場所が重要になってきます。このような対人管轄権(Personal jurisdiction)や裁判地(Venue)は、地裁で特許訴訟を起こす際、裁判所を選ぶ上で重要な点になります。一方、ITCの管轄は対物的で、侵害が疑われる「モノ」によって管轄が定まります。ITCは1つしかないので、地裁で起こるようなForum shopping等の問題はないのですが、あくまでも、ITCの管轄はその性格上、輸入品のみになります。

Forum shopping (裁判所選び) – 原告が自己に有利な裁判所で訴訟を提起すること

 

行政法判事(Administrative law judge、ALJ)

現在ITCには、5人のALJ(Administrative law judge)と呼ばれる行政法判事がいます。特許侵害によるITC調査が行われる場合、この5人の内の1人が担当ALJになります。各ALJは、専任の助手がいます。また、各ALJごとに、独自のルールを設けていて、性格も違うので、自社の担当弁護士が担当ALJの前で弁護した経験があり、担当ALJの性格をよく知っていることは大切なことです。

例えば、今回の講師によると、一番新しくALJとして加わったMcNamara判事は、手続きには厳しいが、特許に関わる問題についてはそうでもないなどの特徴があるそうです。

 

政府調査員(staff attorney)

ITC調査では、申立人と被告人に加えて、公益を代表して政府調査員が独立した組織として介入し、三つ巴で手続きが進みます。調査員はstaff attorneyと一般的に呼ばれていて、不公正輸入調査室(Office of Unfair Import Investigation、OUII)というITC内の部署で働いている弁護士です。

特許侵害の調査の場合、ほとんどのケースで全ての手続きに関わり、事実や手続きに対し独自の主張をし、独自の証拠に基づく見解を示します。案件に対し、どのくらいStaff attorneyが介入してくるかは、Staff attorneyによってまちまちです。

しかし、Staff attorneyに自分たちの主張を理解してもらい、Staff attorneyを味方につけることはITC調査を有利に進める大事なポイントになってきます。

Staff attorneyとは対立関係になるのではなく、手続きの早い時期から協力関係を築くことが大切です。Staff attorneyによっては、当事者との個別の協議なども積極的に受け入れているので、早期からStaff attorneyとの関係づくりを行うことが重要です。

 

337条調査

ITCは不正取引から国内産業を守ることを目的にした政府組織なので、輸入品による独禁法関連の問題も担当します。そのような別の調査から知財(特に特許)侵害に関わる調査を差別化する場合、知財侵害調査を337条調査と呼ぶ場合があります。

この337条調査という呼び名は、関税法(Tariff Act)の337条に書かれているITCに与えられた知財侵害を取り締まる権利から来ています。この条文に書かれているとおり、特許の他にも、著作権や商標の侵害にもITC調査を行えますが、知財侵害問題では特許侵害に関わる調査が圧倒的に多いです。

 

国内産業要件(Domestic industry requirement)

ITCにおける337条調査を申し出るには、申立人である特許権者が権利行使する特許を実際にアメリカ国内で使用している必要があります。

国内産業要件には1)技術的条件と2)経済的条件という2つの条件、両方を満たす必要があります。

 

国内産業要件の条件1:技術条件(Technical Prong)

337条調査の申立人は、アメリカ国内の製品、または、活動が権利行使をしている各特許の少なくとも1つのクレームを実施していることを示さなければいけません。

実施の証明は通常の侵害を立証する方法とほぼ同じで、クレームの要件と国内の製品・活動を比較してクレーム要件を満たしているかを示すクレームチャートを作成するのが一般的です。

この「活動が権利行使をしている各特許の少なくとも1つのクレームを実施している」という技術条件ですが、侵害が疑われているクレームと同じである必要はありません。例えば、権利行使する特許に1)製品に対するクレームと2)製造方法クレームがあったとします。輸入品がその製品クレームを侵害している疑いがある場合、技術条件を満たすには、1)アメリカ国内で製品クレームを実施している製品がある、または、2)アメリカ国内での製造で、製造方法クレームが実施されていればよいことになります。

また、製品は、自社製品でなく、ライセンス先で生産されているものでも大丈夫です。

 

国内産業要件の条件2:経済条件(Economic Prong)

次に、申立人は、対象特許に関わる製品・活動に対してアメリカ国内における経済的に顕著な投資を示す必要があります。

この経済的に顕著な投資(economically significant)ですが、工場や機械、雇用や資本、研究開発やライセンスなどへの投資の成果を示すことによって証明するのが一般的です。

ここでのポイントは、「対象特許に関わる製品・活動に対して」というところで、アメリカ国内における投資と対象特許に関わる製品・活動に関連性が必要です。関連性が全くない、または、関連性が少ない場合、この経済条件を満たさない可能性があるので、事前に経済学者や経済の専門家と協力してアメリカ国内への投資の規模だけでなく、特許との関連性に対してもALJを説得できるだけの資料と情報を準備しておくことをおすすめします。

 

国内産業要件における例と考慮する点

アメリカ国内で(自社またはライセンス先が)対象特許を実施する製品を作っている場合、国内産業要件を証明するのは比較的簡単です。

しかし、アメリカ国内の生産が対象特許を実施していない、アメリカ国内での投資が「低い」場合、国内産業要件を満たさない可能性があります。

国内産業要件を満たすか・満たさないかは、個別のケースによるので、一概には言えませんが、例えば:

  • アメリカに対象製品を輸入しているが、アメリカにテクニカルサポートがある
  • 世界中で製品開発や研究を行っている
  • 製品を開発中

などの個別の状況によって、国内産業要件を主張できる材料になる可能性もあるので、国内産業要件のハードルが高い場合は、担当弁護士と相談してクリエーティブに国内産業要件を証明する方法を検討するのもいい手段です。

 

救済方法


ITCにおける337条調査では金銭的な救済はありません。
ITCができることは、排除命令(Exclusion orders)によって、関税(Customs)で侵害品のアメリカへの輸入を止めることです。

ITCによる排除命令(Exclusion orders)の内容も重要です。特許権者の場合、関税で侵害品を特定しやすいかなどに気をつけることが大切です。逆に、被告側は、侵害品ではない代用品まで排除命令の範囲に入らないよう、命令を限定的なものにする必要があります。

また、ITCは、すでに輸入されている侵害品の流通や使用を止める停止命令(Cease and desist orders)も発行できます。

最後に、Consent Orders といって、当事者同士が合意の上で輸入を停止する措置などに対してもITCとして正式な命令を出すこともできます。

侵害が認定されれば、以上の救済は、対象知財の権利が満了(または、抹消)するまで続きます。

 

排除命令(Exclusion orders)

排除命令(Exclusion orders)には、3つの種類があります。

限定的排除命令(Limited Exclusion Orders (“LEOs”)):最も一般的な排除命令。ITCで調査の対象になった企業の侵害品のみに適用される。

一般的排除命令(General Exclusion Orders (“GEOs”)): 一定の条件を満たした場合のみに適用される。製造企業、輸入業者に関係なく全ての侵害品が対象になる。

一時的排除命令(Temporary Exclusion Orders (“TEOs”)):地裁における仮差し止め(preliminary injunction)に似ている。ほとんど認められない。

 

ITCにおける337条調査の概要

ITC調査の一番の特徴はその手続の速さです。公判まで9ヶ月、16ヶ月で仮決定が下るのが一般的な流れです。これは、公判・判決まで2から3年平均でかかる地裁における特許訴訟と比べると驚異的なスピードです。ITC調査では、調査開始が決まったらすぐにDiscoveryが始まります。Discoveryの期間は約9ヶ月ほどしかなく、Discoveryの開始時期が遅れたり、期間が延長されることはほぼありません。

一般的に12ヶ月ほどで仮決定が出されるため、ITC調査が始まってから特許を無効にするために特許庁にIPRを申請するということは現実的ではありません。IPRの審査は平均で18ヶ月。IPRで特許が無効になったとしても、ITCから排除命令が出ていたら、その解除手続きが必要で、時間がかかってしまいます。また、特許庁での主張(無効にするためにクレームを広く解釈することを求める)と、ITCでの主張(侵害を逃れるためにクレームを狭く解釈することを求める)が食い違うとその部分を相手側に指摘されて、ALJの心象が悪くなる可能性があります。

 

Discovery

回答期限が短い:通常10日以内に回答が求められます。地裁におけるDiscoveryも会社への負担は大きいですが、ITCにおけるDiscoveryそれ以上に負担が大きく、多くのお金、人材、リソースを短期間で消費してしまいます。

Discoveryの期間自体が短い:Discoveryと公判前手続きの両方を行う期間が9ヶ月以下しかありません。戦略的にポイントを絞ってDiscoveryを行っていかないと時間が足りなくなってしまいます。特に、日本などアメリカ国外で宣誓証言(Deposition)を取る場合、用意をするのに時間がかかるので、アメリカ以外の国で宣誓証言を行う場合は、事前準備が必要になってきます。

クレーム解釈なし:Discoveryの大半の期間は、クレーム解釈が決まらないまま行われます。そのため、Discoveryの範囲がとても広くなってしまう可能性があります。

このような特徴から、特許権者である申立人は、ITC調査の前に十分Discoveryのプランを練っておくことが大切です。

 

公判前の手続き

Discoveryが進む中、公判に向けて様々な書類を提出したり、手続きを行う必要があります。ここで特に注意したいのが、公判前の弁論書(Prehearing brief)です。ALJによっては公判前の弁論書を公判前には読まないという判事もいたり、逆に、綿密に読むという判事もいるので、そこはITCの経験が豊富な担当弁護士と協議することがいいと思います。

しかし、この公判前の弁論書(Prehearing brief)で大切なポイントは、公判で争われるべき全ての問題を公判前の弁論書に書き記すことです。もし争われるべきポイントが公判前の弁論書に明記されていない場合、その問題を公判で争うことを放棄(waive)したことになってしまうので、公判前の弁論書はITC手続きにおいて重要な書類の1つです。

また、ITCは申立人、被告人とStaff attorneyを含めた3つの「当事者」が存在するので、Staff attorneyも独自の公判前の弁論書を提出します。この弁論書で、はじめて公式なStaff attorneyの見解が分かります。ITCではStaff attorneyを味方につけるのが勝利のポイントの1つなので、Staff attoneyがどのように考えているのかをこの時点で見極めることは大切です。

最後に、地裁と異なり、証人の発言は紙に書かれたものが提出されます。

 

公判の流れ

公判では、一般的に、技術の説明等に始まり、申立人の主張、証人尋問、被告側の主張、証人尋問、Staff attorneyの主張と証人尋問と続きます。

公判の期間はケースにもよりますが、3日から5日という期間が多いと思います。

地裁と異なる点は、証人尋問の際、証人の直接尋問(Direct examination)は書面で行われて、その書面に対して、口頭で反対尋問(cross examination)が行われること。そのあとに、Staff attorneyも反対尋問ができたり、Staff attorney自身も主張と証人尋問ができる点です。また、最終弁論(Closing argument)も許可されることはほとんどありません。

 

公判後の弁論趣意書(post-hearing brief)

この書類はとても大切です。公判では判決は行われないので、この弁論趣意書(post-hearing brief)で、ALJを説得する必要があります。弁論趣意書は、公判で挙げられた全ての問題に対して、証拠や適用される法律を引用し、自身の主張を行なっていかなければなりません。

 

仮決定(Initial determination、ID)

その後、違反問題についての仮決定が行われます。

この仮決定をすることにおいて、AJLJには、詳しい事実認定と問題に対する法的な結論が求められます。詳しい法的な分析等が求められるため、仮決定に関する書類が100ページ以上に昇ることも珍しくありません。

推奨決定(Recommended Determination)
この仮決定と同時期、または、14日以内に、救済に関わる推奨決定(Recommended Determination、RD)が出されます。このRDでは、ALJからの救済に関わる提案が示されます。このRDは、違反を見つける・見つけないにかかわらず出されます。

 

仮決定後

仮決定が下ってもそこで終わりではありません。上訴(Appeal)の可能性がまだあります。

上訴1.仮決定の再審理の嘆願。ITC委員全員が、ALJが下した仮決定を再審理するか決めます。再審理が却下された場合、ALJの仮決定がITCの最終的な決定になります。

上訴2.大統領の評価期間。もしITC委員が違法と決定した場合、大統領は60日間の間、ポリシーを理由に救済を承認、または、不承認することができます。しかし大統領がITC関連の問題に深く関わることはほとんどありません。

上訴3.ITCにおける判決に不服がある場合、CAFC(United States Court of Appeals for the Federal Circuit)に上訴できます。

 

日本企業としてITC調査に関わった際の知っておきたいポイント

1.協力する:ITC手続きのスピードは早いので、申立人側はしっかり自薦準備をしないと勝てないです。また、被告人側は、Discoveryの遅れがないよう、迅速な対応が求められます。Discoveryの対応が遅れてしまうとALJの心象もよくありませんし、例外的な罰則処置が行われる可能性もあります。

2.機密情報の取り扱い:ITCでは多くの機密情報が扱われ、雇っている弁護士しか見れない情報(Attorney’s eyes only)が多いため、当事者でも細かい相手の情報が知れず、現状を把握しずらくなることがあります。そのような場合は、担当弁護士に相手の機密ビジネス情報(CBI:Confidential Business Information) を編集して、当事者でも見られる内容の書類を作成してもらい、情報共有をしてもらいましょう。

 


3.ITCのスケジュール:ITC調査の場合、最初に出されるスケジュールから予定が変わることはほとんどありません。被告人側は、最悪の事態を想定して、ITCの序盤から複数の対策を考えることが大切です。ITCの場合、過去侵害による損害賠償がないので、ITC序盤から特許回避設計を考えることは大切な取り組みの1つです。

4.IPR:特許無効(IPR)は、ITCに対してあまり有効ではありません。ITC調査はたとえIPRの申し出があっても止まりません。また、最近、IPRで仮に特許が無効になっても、CAFCでIPRでの判決が支持されるまで、ITCでは停止命令を取り下げないという判断がなされたそうです。

また、特許庁での主張(無効にするためにクレームを広く解釈することを求める)と、ITCでの主張(侵害を逃れるためにクレームを狭く解釈することを求める)が食い違うとその部分を相手側に指摘されて、ALJの心象が悪くなる可能性があります。また、IPR手続き開始が却下された場合も、ALJの特許に対する考え方に影響する可能性があります。

 


5.ITCにかかる費用:地裁における特許訴訟でも同じですが、訴訟の序盤から始まるDiscoveryは、アメリカでの訴訟費用を高くする一番の要因です。特に、ITCにおけるDiscoveryは、地裁におけるDiscoveryと比べるとリクエスト数の上限が高く、対象範囲が広いため、Discoveryにかかる費用は地裁における費用よりも高くなる傾向があります。また、地裁に比べてDiscoveryの期間が短いため、短期間で高額の費用が発生します。

お金の他にも、Discoveryリクエストに対応するための情報や資料を検索・作成・提出するには、多くの社内における人材の協力が必要です。ITCではお金の問題が注目を集めますが、社内のリソースや従業員の時間など、間接コストがかかることを認識することも重要です。

ITC調査で弁護を必要とするときは、ITCにおける経験が豊富な弁護士事務所を選ぶことをおすすめします。このページで説明したように、ITC調査は、独特で、特殊で、問題点、手続き、救済、など様々な点で地裁での特許訴訟と違いがあります。弁護士事務所が知財を扱っていてもITCは別格なので、ITC調査に慣れている事務所を雇うことをおすすめします。

6.国内産業要件を甘く見ない:最近はALJが国内産業要件に関する多くの資料や情報を求めてくる傾向にあります。ALJによっても、各案件によっても国内産業要件を満たす状況は変わってくるので、十分な事前準備が必要です。

 

まとめ

ITCは早いです:多くのことをカバーしましたが、ITCにおける特許侵害調査はとてつもないスピードで進みます。この点がITCの一番の特徴なので、ぜひ覚えておいてください。

しっかり対応する:ITC調査では、迅速な対応が求められます。ITC調査では「すばやく」そして「正確」という両立することが難しい2つのことを同時にやらないといけません。

経験がものを言う:ITC調査は正しく使うととても大きな効果があります。仕組みを理解し、信頼できる弁護士事務所と協力することで、競合他社のビジネスに大きな影響を与えることができるビジネスツールとして使うことができます。

 

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