ITCコミッショナーは細かなところまで見ている

ITCによる337条調査が特許侵害に対して行われる場合、行政判事(Administrative law judge, ALJ)が仮決定(Initial determination)を行い、その結果と理由をITCコミッションが再審議します。同じITCという組織の中のレビュープロセスですが、ITCコミッショナーは必ずしも行政判事の判断や分析を鵜呑みにするのではなく、時にとても技術的な点に関しても独自の判断で再審議を行う場合があります。

今回紹介するIn re Certain Single-Molecule Nucleic Acid Sequencing Systems and Reagents, Consumables, and Software for use with Same, Inv. 337-TA-1032では、ALJの仮決定は最終的にITCコミッショナーにより承認されましたが、クレームの解釈の部分でITCコミッションからの指摘がありました。

経緯:

このITC調査は、Pacific Biosciences of California (“PacBio”) がOxford Nanopore Technologies Ltd.; Oxford Nanopore Technologies, Inc. and Metrichor, Ltd. (collectively “Oxford Nanopore”) が自社の”single-molecule sequencing”に関わる特許を侵害しているという申し立ての元、始まりました。ここでは詳しくは話しませんが、“single-molecule sequencing”にはいくつかの方法があるらしく、PacBioの”single-molecule sequencing”の方法が、Oxford Nanoporeの”single-molecule sequencing”の方法と一致するものなのかが焦点になりました。

ALJのPender判事は、クレームに使われていた用語“single-molecule sequencing”をOxford Nanoporeが採用している方法とは異なるtemplate-dependent synthesisの方法に限定されると解釈しました。判事は、明細書の開示(“The present invention is generally directed to improve[ments] . . . for carrying out nucleic acid sequence analysis, and particularly sequence analysis that employs template dependent synthesis in identifying the nucleotide sequence of target nucleic acids.”)に注目、また、特許がtemplate dependent synthesis以外の方法について開示していないことを指摘し、特許で使用されている“single-molecule sequencing”という用語は、template dependent synthesisの方法に限定されるとしました。

Oxford Nanoporeは同じ”single-molecule sequencing”でも、別のnanopore sequencingという方法を使っていたので、Pender判事は非侵害の仮決定を行いました。これを不服に思い、PacBioはITCコミッショナーに再審議を申し立てました。

ITCコミッショナーは最終的にPender判事の非侵害という仮決定を支持しましたが、Pender判事のクレーム解釈に異議を唱えました。ITCコミッショナーは、審査履歴(prosecution history)において“Single-molecule sequencing includes, for example, . . . nanopore sequencing,”という記述があったことに注目。通常、クレーム解釈の時に本質的証拠(intrinsic evidence)として扱われるべき審査履歴(prosecution history)をPender判事が重要視していなかったことを指摘し、そのことは間違えだったとしました。しかし、明細書を考慮した時に、発明が“template dependent synthesis”に関係していることは明白であるので、クレーム解釈の結果には変更はありませんでした。

教訓:

この事件では、ITCコミッショナーによって侵害・非侵害の認定やクレームの解釈自体は変わりませんでしたが、ALJの分析に厳しい指摘がありました。ITCコミッションはALJの仮決定をde novoという高裁が地裁の法律的な問題を再審議する時と同じ基準(つまり、ALJの判決や分析が正しいとは考えない)で公平な立場で再審議を行います。つまり、ALJが自社に有利な仮決定を下したからと言って、ITCコミッショナーがそれを自動的に承認するわけではないので、ITCによる337条調査はITCコミッショナーによる最終決定(Final determination)まで目は離せません。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Daniel Kazhdan Ph.D. and David M. Maiorana. Jones Day

The Commission Doesn’t Rubber Stamp Even Highly Technical Claim Constructions

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