IPRでの発言には要注意

IPR手続きにおける主張は、地裁における特許侵害訴訟において、クレーム解釈を解釈する上で本質的証拠(intrinsic evidence)として扱われてしまう。

 

地裁におけるクレーム解釈に対して、本質的証拠(intrinsic evidence)はとても重要。クレームを解釈するために証拠が使われるが、外的証拠(extrinsic evidence)が参考程度であるのに比べて、本質的証拠(intrinsic evidence)であるクレームで使われている言葉、特許明細書、審査履歴などの本質的証拠(intrinsic evidence)はクレームを解釈する上で重要な情報源となる。また、本質的証拠の分析のみで問題になっているクレーム文言の意味が理解できるのであれば、外的証拠に頼るべきではないという判例もある。

 

今日の特許訴訟では、地裁での訴訟に並行して特許庁でIPR手続きが行われる場合が多い。地裁での被告側は、IPRで特許を無効にするのが狙いだが、IPRでの発言には注意が必要だ。IPR手続きが進むに連れ、特許権者、被告人、PTABが問題特許のクレーム範囲と意味について見解を述べる。このようなIPR手続きに関する情報が、地裁で参考程度の外的証拠(extrinsic evidence)として扱われるのか、クレーム解釈の鍵を握る本質的証拠(intrinsic evidence)として扱われるのかの違いは大きい。

 

地裁でのIPRに関する情報の扱いは均一ではないが、多数派はIPRに関する情報を本質的証拠(intrinsic evidence)として扱う。代表的な地裁では、the District of Delaware, Northern District of Texas, Western District of Tennessee, and Eastern District of Michiganなどがこのような見解を示している。また、CAFCもこの多数派の見解と同じ方針のようだ。

 

また、権利化後の再審査(post-issuance reexamination)は常に本質的証拠(intrinsic evidence)として扱われてきて、IPR手続きも仕組みは特許の再審査なので、IPRに関する情報を本質的証拠(intrinsic evidence)として扱うことは、再審査に関する情報の扱いとも整合が取れている。

 

このように地裁ではIPRに関する情報を本質的証拠(intrinsic evidence)として扱うことが多いため、IPR手続きにおいて、当事者のクレームに関する発言には細心の注意が必要だ。IPRでの発言は、地裁でのクレーム解釈に大きな影響を与えかねないので、地裁とIPRで異なるクレーム解釈に関する主張が起こらないよう配慮することをおすすめする。

 

まとめ作成者:野口剛史

 

元記事著者:John C. Evans, Ph.D. Jones Day

http://www.ptablitigationblog.com/ipr-proceedings-intrinsic-extrinsic-evidence-claim-construction/#page=1

ニュースレター、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

Contract-signing
特許出願
野口 剛史

署名による特許権譲渡を伴わない米国特許の取得

特許権の譲渡はアメリカの特許法において大切なコンセプトの1つです。アメリカでは誰が特許の権利者なのかで揉めるケースも以外に多いです。特許権者の特定に関しては日本のシステムとは異なるので、人材の流動が激しいアメリカにおいて、発明や特許出願に対する会社(や組織)への譲渡が適切に行われているか、アメリカに拠点を持っている会社は一度確認してみてはいかがでしょうか?

Read More »
特許出願
野口 剛史

許可通知後の補正には注意:PTAが短くなる危険性あり

米国連邦巡回控訴裁判所(CAFC)は、特許期間調整(patent term adjustment, PTA)に関する米国特許商標庁(PTO)の決定を支持し、出願人が許可通知後(notice of allowance)に補正書を提出し、補正書を取り下げるか提出を棄権すればより早く審査を完了できた場合、特許期間から日数を差し引くことが適切であると判断しました。

Read More »
report-graph
再審査
野口 剛史

2018年6月のIPRとCBM の統計データ

6月PTABは44件のIPRとCBMのFinal Written Decisions(最終判決)を下しました。この数字には、CAFCからの差し戻しも含みます。争われたクレームの内425 クレーム(66.51%)を取り消し、213 クレーム(33.33%)の取り消しを却下。特許権者が補正やdisclaimerを行い1クレーム(0.16%)が生き残りました。いままでの争われたクレームの累計取り消し確立は、約75%です。

Read More »