IPR EstoppelがITCによる特許侵害調査に与える影響

米ITC委員会は、2017年、  Certain Hybrid Electric Vehicles And Components Thereof, Inv. No. 337-TA-1042, Notice (Dec. 8, 2017) において、inter partes review (IPR)手続きですでに提示した(また提示すべきであった)特許無効に関する主張は、ITCでは再度主張できないとした。

 

ITCによる特許侵害調査 − 通常の連邦裁判所における特許訴訟の他に、アメリカに輸入されているものについては、関税法 337 条に基づいて、特許権者は、米国国際貿易委員会(ITC)に特許侵害の提訴(調査の申し立て)ができる。ITCは、地裁との類似点はあるが、調査期間がとても短く、救済措置は排除命令(Exclusion Order)のみと大きく異なる点もあるので、注意が必要。

 

Inter partes review(略してIPR)— アメリカ特許庁(USPTO)の審判部(Patent Trial and Appeal Board: PTAB)における第三者が申し立てできる特許無効手続の1つ。

 

IPR Estoppelとは、特許法35 U.S.C. § 315(e)(2)に明記されていて、IPRの最終判決が下った場合、IPRの申立人はIPR手続きにおいてすでに提示した(また提示すべきであった)特許無効に関する主張を再度(ITCも含む)民事訴訟で主張できないというルール。

 

今回のITC調査は、Paice LLC と Abell Foundation, Inc.がFord Motorに対して行なった。しかし、このITC調査以前に、Fordは対象特許に対してIPRを行なっており、PTABは複数のクレームには特許性がないと判断した。その後、PTABでの判決は上訴され、Court of Appeals for the Federal Circuit(略してCAFC、アメリカ連邦巡回区控訴裁判所)は一部のクレームに関してPTABの判決を無効にし、PTABに差し戻した。また、IPRで対象とされた残りのクレームはITC調査と並行して、CAFCに上訴され、手続きが進んでいる。

 

米ITC委員会は、特許法35 U.S.C. § 315(e)(2)は今回のようなCAFCに上訴されている状況下においても適用されると判断し、IPR手続きですでに提示した(また提示すべきであった)特許無効に関する主張は、ITCでは再度主張できないとした。

 

今回のITC委員会の判断は、PTABにおいてクレームの無効に成功した主張であってもITC調査の際には考慮しないまま、関税法 337 条に関する違反を判断するという、ITC調査を申し込む特許権者に有利なものになった。

 

関税法 337 条違反となった場合、ITCによる排除命令が保留されることはほぼない。つまり今回のように、IPR上訴がITC調査と平行している場合、IPR上訴が行われている間、排除命令が施行されてしまうということがありえる。

 

ITCの調査対象になりそうな企業が対象特許のIPR手続きを行うタイミングを考える上で、この判決は重要な判例となるだろう。

 

まとめ作成者:野口剛史

 

元記事著者:Jones Day’s ITC Team. Jones Day

http://jonesdayitcblog.com/ipr-estoppel/

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