社内弁護士に対する雇用制限契約は有効か?

雇用主は、自社の企業機密や機密情報を守るため、そのような情報にアクセスできる従業員との間で雇用制限契約を行っている場合がある。社内弁護士がよりビジネスに関する問題に取り組み、ビジネスマンとして関わることも多々ある中、社内弁護士が企業機密や機密情報に触れる機会も多くなってきた。そのような情報が他社に渡ってしまうと競合他社が有利になったり、自社の事業にダメージを与えかねないので、社内弁護士に対しても雇用制限契約を行っている企業が幾つかある。しかし、そのような契約は有効なのだろうか?

雇用制限契約 − 対応する州法にもよるが、雇用契約において、企業機密などの知識を理由に、一定期間、競合企業等で働くことを禁止する雇用制限条項が含まれている場合がある。

アメリカ弁護士会の弁護士としての行為に関するモデルルール(ABA Model Rule of Professional Conduct)5.6 に、退職後、弁護士が法律を取り扱っていくことに関する制限について書かれている。そこには、弁護士は、退社後(パートナーシップなどの場合は、その関係の解消後)、弁護士としての役割を制限する契約を結ぶべきではないと書かれている。このモデルルールは、50州中49州で採用(または、多少の変更を加えて採用)されている。また、判例においても、法律事務所が弁護士と雇用制限契約を結んだ場合、そのような雇用制限は行使できないという、モデルルールに沿った解釈がなされている。

しかし、企業で働く社内弁護士に対する雇用制限契約の効果という点については、判例があまりない。複数の州では、社内弁護士に対する雇用制限契約は無効と判断された。その中でもニュージャージー州の判例は、細かく分析されていて、引用される機会が多い。その判決の中で、Rule 5.6は社内弁護士にも適用され、退職後の社内弁護士の雇用を制限するような条文は有効ではないと判断された。

しかし、公開されてはいないが、コロラド州の地裁(Dish Network Corp. v. Shebar)において、社内弁護士が退職し、競合他社に移ることを借り差し止めする命令が下った。これは、以前のトレンドとは真逆で、注目すべきケースだ。この事件で、地裁は、Rule 5.6は今回の事実には当てはまらないと判断。Rule 5.6は弁護士同士の契約であり、今回の事件では、契約は、弁護士と弁護士ではない雇用主との間に行われたので、Rule 5.6の適用範囲外だと判断。地裁は、このRule 5.6の目的は、(弁護士同士の雇用制限契約を無効にすることによって)非倫理的な弁護士から国民を守ることであって、弁護士を弁護士ではないクライアントから守るためのものではないとした。また、Rule 5.6が適用されるとしたら、社内弁護士の倫理違反しか証明しないとした。

このような状況の中、社内弁護士に雇用制限契約が適用されるか否かは定かではなく、裁判所の判例や州の議会からのガイダンスが必要だ。また、今回のコロラド州の事件での判決も非公開で、コロラド州最高裁の判例を基準にしたものではない。このような状況で、社内弁護士の立場は難しくなった。もし雇用主から雇用制限が含まれている契約を提示された場合、1)契約を結び倫理違反のリスクを負うのか、2)契約を拒み、雇用主との関係を悪化させるのか、どちらを選んでもよくない状態になっている。

このような状況での対策方法としては、まず倫理問題を雇用主に提示することをおすすめする。その上で、雇用主が契約を催促する場合、契約するか否かは弁護士次第となる。もし契約を結んだ弁護士が競合他社へ移った場合、弁護士は契約に書かれていることに従う方がいいでしょう。もし契約書に従うことができない場合、訴訟のリスクを抱えることになる。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Kevin J. Burns. Fisher Phillips

https://www.fisherphillips.com/Non-Compete-and-Trade-Secrets/restrictive-covenants-place-in-house-attorneys-in#page=1

OLCの米国知財ニュースレター

最新まとめ記事を
毎週メールボックスにお届け

登録すると、週1回、最新まとめ記事の概要とお知らせを受け取ることができます。

コメントする