特許翻訳はAIやITツールの進化が著しく今まで翻訳家に依頼していた案件を社内で内製する動きがあります。内製化には課題も多いですが、うまくいけばコストカットや納期短縮、ノウハウの蓄積などの利点も多いです。そのため、今後は知財関連でも外に依頼してきた多くの仕事が内製されていくのではないでしょうか?
明細書作成は内製化されるのか?
企業が外注する知財業務の代表と言ったら特許明細書の作成ですね。これが内製化に進むか考えてみます。日本の場合、多く出願する企業(特に機械や電気系の出願をする会社)は、そのボリュームを使って、依頼する1件あたりの費用をディスカウントしてもらっていると聞きます。そのため、コストパフォマンスはいいはずなので、なかなか内製化にシフトすることはないように思われます。
しかし、逆に言ったら、大量に案件を依頼される事務所の方は、弁理士などの高い人経費がかかる人材を雇ながらも、大量の案件を低価格でさばいて、ビジネスとして成り立たせるために多くの企業努力をしているのではないでしょうか?
既存の明細書作成だけに依存していると、それなりの数の従業員を抱えることになり、今後予想されるクライアントからのさらなるディスカウントの要求などを視野に入れるただ単に明細書作成の費用からの収入に依存するのは経営面に不安が残ります。
そこで、事務所内で培った明細書作成ノウハウをパッケージ化して明細書内製化サポートビジネスとして売り出すのはどうでしょうか?
魚のとり方を教えると、魚は売れなくなる?
明細書内製化サポートビジネスを始める一番のリスクは、主軸である明細書作成の依頼を減らす直接の原因になりえることです。実際に、翻訳業界では、AI翻訳の進化で一部の翻訳内製化が進み、その影響で外部に依頼される案件が減った(または、単価が安くなった)と聞きます。出願の分野でも、明細書の内製化が進めば同じようなことが予想されます。
しかし、特許明細書作成支援ツールやRPA (Robotic Process Automation)がより便利になってくれば、明細書を内製した方がいいのではと考える企業も多くなるのではないでしょうか?今後ITツールの進化で、費用対効果を考えたときに内製と外注の差はどんどん縮まってくると思います。全案件ではないにしても、比較的「簡単な」案件から内製化が始まるかもしれません。
そのようなシフトが起こったときに、生き残れる事務所は、柔軟に内製化のサポートができる事務所ではないでしょうか?
内製化で生き残れる事務所はわずか?
外注が行われる場合、受け入れ先の事務所で仕事をする人材が必要なので、ある程度の雇用が担保されます。そのため外注の量に応じて、受け入れる事務所の数も一定数存在するようになります。
しかし、内製化をする場合、極端な話、1人の人に教われば済む話です。やり方を教わるのに複数のコンサルタントを雇うよりも、一番良く知っている有能な人を1人雇えばいいというわけです。
つまり、内製化の需要自体がマンパワーを求めているのではなく、優れた少数の人材を求めるため、内製化サポートビジネスで成功できる事務所は今存在する外注ベースの事務所数よりもかなり限定されることになります。
そのため業界全体が内製化の動きをとったときに行動しても、手遅れになる危険性があります。企業の特許明細書内製の動きがいつ起こるのはわかりませんが、そのような流れが起きれは、その変化に対応できなかった事務所は淘汰されるのではないでしょう。
そうならないためにも、既存の外注に依存したビジネスモデルだけでなく、既存の収入源を脅かすようなビジネスも考慮して、柔軟に変化に適用できる体制を整えておくべきだと思います。
TLCの紹介
ちなみに、このアイデアのベースになっている話題は、OLCを更に進化させた全く新しいコミュニティ型のプラットフォームTakumi Legal Communityで最初に取り上げました。
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