Northern District of Californiaの訴訟で、裁判所は被告が行なったPTABへの申し立てを取り下げるよう命令しました。Dodocase VR, Inc. v. Merchsource, LLC, et al., No. 17-cv-07088-EDL (N.D. Cal.)
経緯:
被告はPTABで無効審判を行なった特許のライセンスを受けていました。そのライセンス契約には、no-challenge provisionとforum selection clauseが明記されていました。ライセンスを締結してから約1年後、ライセンシーである被告はライセンスの再交渉を試み、最終的にロイアルティの支払いをやめてしまいました。このライセンシーの行動を受け、ライセンサーが契約違反で訴訟を起こしました。それを受け、ライセンサーである被告はPTABに無効審判の申し立てを行いました。
ライセンスに明記されている “no-challenge” clauseは、ライセンシーに対し、ライセンスされた特許の有効性を疑う手続き(PTABによるIPRなど)を禁じています。また、forum selectionは、“the laws of the State of California shall govern any dispute arising out of or under this Agreement” which “disputes” “shall be litigated before the courts in San Francisco County or Orange County, California.”と書かれており、ライセンスに関わる全ての問題は San Francisco County or Orange County, Californiaの裁判所で訴訟を行うべきと書かれていました。
裁判所は、衡平法(principles of equity)の考え方から、ライセンシーが特許の有効性に対して異議を唱えることを禁じるのは不適切とし、“no-challenge” clauseは有効ではないと判断しましたが、forum selectionに対しては、強制力があると判断。裁判所は、上記のライセンス契約で使われたforum selectionに関わる文言をpermissive forum selection clauseである用語(例えば “The courts of California, County of Orange, shall have jurisdiction over the parties in any action at law relating to the subject matter or the interpretation of this contract.”)と比較しました。その結果、上記のライセンス契約で使われたforum selectionには強制力(mandatory)があり、選ばれた場(forum)が問題を解決するただ1つの場所だとしました。
このような解釈のもと、裁判所はPTABにおける特許無効手続きはライセンス契約を発端にしているため、forum selectionに違反するとし、被告に対してPTABへの申し立てを取り下げるよう命じました。
教訓:
ライセンス契約等を結ぶ場合、forum selectionに関する文言に注意が必要です。通常、forum selectionはあまり注目されるものではないので、見過ごしがちですが、forum selectionの文言が強制力のあるものだと判断されてしまうと、契約の内容によっては、PTAB等での特許無効審判を活用できない可能性があります。また、契約法は州法なので、契約に適用される州法や裁判所によって、契約の内容の解釈が異なる可能性があります。契約を結ぶ際、適用される州法の弁護士(該当する契約形態に精通している弁護士)に一度契約を見てもらい問題がないか確認してもらうことをおすすめします。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:John C. Alemanni and Michael T. Morlock. Kilpatrick Townsend & Stockton LLP
http://kilpatrickpostgrant.com/alerts/a-cautionary-tale-regarding-forum-selection/#page=1