最終判決(final written decision)後に、IPRの和解を行なった場合、PTABはその最終判決を棄却することを拒否する場合があるので注意が必要です。
Dish Network LLC v. TQ Beta, LLCにおいて、PTABはCAFCへの上訴が予定されていたIPR手続きの最終判決に関して、当事者間で和解が行われたにもかかわらず、最終判決を棄却することを拒否しました。PTABは、IPRに関する法律やルールは和解を推奨するものだが、特許が無効と判断された後に最終判決を放棄することは公民の利益(public interest)に反するものだとしました。
背景:
PTABでは、3つのクレームに対して特許権者に不利な最終判決を発行。特許権者は、その判決を不服に感じ、CAFCへの上訴手続きを行なっていました。しかし、その上訴に関する決定を受け取る前に、当事者が和解。その後、特許権者は裁判所に上訴を取り下げ、PTABに案件の差し戻しを要望。PTABに差し戻し、最終判決を棄却してもらうことが狙いでした。裁判所は取り下げには応じましたが、棄却については判断しかねていました。
特許権者は、IPRに関する法律やルールは和解を推奨するもので、最終判決の後、最終判決の棄却が行われない場合、CAFCへ上訴手続きを行っている間に和解するメリットがないと主張。しかし、PTABはその主張に反論し、議会は、IPR手続きに関し、2つの政策目的、1)和解の推奨と2)特許性がないと判断されたクレームの無効化、を設けたことを指摘。今回のケースにおいて、現時点で最終判決を棄却することは、2番目の特許性がないと判断されたクレームの無効化という目的に反するため、公民の利益(public interest)を考慮した結果、PTABが最終判決を棄却することを拒否することは適切であるという判断を下しました。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Dion M. Bregman and Bradford A. Cangro. Morgan Lewis & Bockius LLP