今回は、特許リスクマネージメントを行っているRPX社の記事を幾つかのポイントに分けてまとめてみました。
- 2017年NPE訴訟データ
- 時系列で見たNPE案件の和解金推移
- IPRの司法審査と反則すれすれのプレー
- NPEにも影響を与えるTC Heartland以降の裁判地の問題
- NPE特許事業部の売却
- 自前の特許で負けたNPEが外部から特許を取得し始めた
- 多くの株式公開しているNPEが特許権利行使をやめた
読者のみなさんの中には、RPX社のような防衛的特許集約(Defensive patent aggregation)をコンセプトにした組織を知らない人もいると思ったので、簡単に説明してみます。
RPX Corporationのサービスには、特許リスク管理ソリューション、防衛的買収の引受の申出、引受買収(シンジケーション)、特許情報戦略(インテリジェンス)、アドバイザリー・サービスなどがあります。RPXのような組織の目的は、NPE(パテント・トロールとも呼ばれる)組織から、顧客が訴えられるリスクを軽減することです。
NPEには様々な形が存在しますが、多くは、他社の特許を買い取って、買い取った特許を使って権利行使をします。日本企業にとって、特許の売却等はあまり身近に感じられないと思いますが、長年アメリカ特許取得数第一位のIBMは特許のライセンス・売却も積極的に行っています。また、衰退した企業(Kodak, Nokia, Nortelなど)の特許は、その企業の資産なので、企業が資産売却して特許を現金化したり、借金の担保として受け取った銀行や投資企業が大量に特許を売り出すという例も珍しくはありません。
このような形で市場に出回る特許をNPEが取得する前に、RPXのような特許リスクマネージメントを行っている組織が買い占めます。そうすることで、NPEが問題特許を入手できなくなり、RPXに加入している顧客はその問題特許に関わる訴訟を心配せず事業に集中できるという構図です。これが、防衛的特許集約をコンセプトをモデルにしたビジネスモデルです。
ホームーページを見ると、RPXは、売買の元手となる元金を集めることだけにとどまらず、特許に対する専門知識の共有や、顧客の特許買収の斡旋などのサービスも展開しているようです。また、ホームーページによると、320以上の顧客がいて、$3.5Bの訴訟・和解費用の回避、1400件以上の訴訟の取り下げの実績があるそうです。
また、RPXに似た組織は他にもあり、有名なところではUnified Patentsなどがあります。業界の競合他社が特許をプールするPatent Poolのようなコンセプトもこの防衛的特許集約に似ています。
まとめ作成者:野口剛史
情報元:RPX Corporation homepage