防衛的特許集約の力

今回は、特許リスクマネージメントを行っているRPX社の記事を幾つかのポイントに分けてまとめてみました。

 

 

読者のみなさんの中には、RPX社のような防衛的特許集約(Defensive patent aggregation)をコンセプトにした組織を知らない人もいると思ったので、簡単に説明してみます。

 

RPX Corporationのサービスには、特許リスク管理ソリューション、防衛的買収の引受の申出、引受買収(シンジケーション)、特許情報戦略(インテリジェンス)、アドバイザリー・サービスなどがあります。RPXのような組織の目的は、NPE(パテント・トロールとも呼ばれる)組織から、顧客が訴えられるリスクを軽減することです。

 

NPEには様々な形が存在しますが、多くは、他社の特許を買い取って、買い取った特許を使って権利行使をします。日本企業にとって、特許の売却等はあまり身近に感じられないと思いますが、長年アメリカ特許取得数第一位のIBMは特許のライセンス・売却も積極的に行っています。また、衰退した企業(Kodak, Nokia, Nortelなど)の特許は、その企業の資産なので、企業が資産売却して特許を現金化したり、借金の担保として受け取った銀行や投資企業が大量に特許を売り出すという例も珍しくはありません。

 

このような形で市場に出回る特許をNPEが取得する前に、RPXのような特許リスクマネージメントを行っている組織が買い占めます。そうすることで、NPEが問題特許を入手できなくなり、RPXに加入している顧客はその問題特許に関わる訴訟を心配せず事業に集中できるという構図です。これが、防衛的特許集約をコンセプトをモデルにしたビジネスモデルです。

 

ホームーページを見ると、RPXは、売買の元手となる元金を集めることだけにとどまらず、特許に対する専門知識の共有や、顧客の特許買収の斡旋などのサービスも展開しているようです。また、ホームーページによると、320以上の顧客がいて、$3.5Bの訴訟・和解費用の回避、1400件以上の訴訟の取り下げの実績があるそうです。

 

また、RPXに似た組織は他にもあり、有名なところではUnified Patentsなどがあります。業界の競合他社が特許をプールするPatent Poolのようなコンセプトもこの防衛的特許集約に似ています。

 

まとめ作成者:野口剛史

情報元:RPX Corporation homepage

http://www.rpxcorp.com/

ニュースレター、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

rejected-trash
特許出願
野口 剛史

翻訳ミス?「Half-Liquid」という用語の定義が不明で不定となる

クレームで使われている用語が定義されていなかったため、不定(indefinite)となってしまいました。面白いのがこれはイタリア出願が元になっていて、訴訟ではイタリア出願の翻訳も分析されました。翻訳ミスかはわかりませんが、翻訳が絡む案件なので、内外担当者や翻訳を行っている人は一度判例を読んだ方がいいかもしれません。

Read More »
契約
野口 剛史

ロシアによる非友好国を対象にした知財制裁

ジェトロも日本語で情報発信していますが、ロシアが友好的でないと考える国の特許権者は、その特許の強制実施権に対していかなる補償も受けられなくなるという法令を発表しました。今回はこの概要とロシアで特許権を持つ日本企業ができそうな対応策をまとめました。

Read More »