ついにAI著作権問題の判決が出る?著作物の教師データ利用とフェアユースに関する略式判決がもうすぐ出るかも

著名なAI関連訴訟はどれもまだ訴訟の初期段階ですが、その中でも手続きが進んでいるThomson Reuters v. ROSS Intelligenceのケースは注目に値します。この案件では、著作権がある素材を生成AIモデルの教師データとして使用することがフェアユースとして保護されるかどうかについて裁判所が近日中に判決を下す可能性があります。この判決は、AIに関連する将来の著作権法の判例を形成する可能性があり、AIの訓練とデータ調達の実践に重要な影響を与える可能性があります。

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現代の著作権法で最もインパクトのある問題のひとつは、生成型人工知能(生成AI)モデルの学習データとして著作権で保護された素材を無許可で使用することが、著作権法の下で保護されるフェアユース(公正利用)に該当するかどうかです。この問題に対する具体的な判決が近いうちに出るかもしれません。

最も話題になっている生成AIの訴訟はまだ弁論段階ですが、生成AIのトレーニングデータのフェアユースに直接関わる一件の訴訟はすでに略式判決(summary judgment)の裁定を待っています。

Thomson Reuters Enterprise Centre GmbH et al v. ROSS Intelligence Inc., 20-cv-00613 (D. Del.)では、当事者は被告のフェアユースの肯定的抗弁(affirmative defense)に関する略式判決を求めるクロスモーションを提出しました。これらの申し立ては、4ヶ月近く前の2023年2月以来、審議されているものです。

著作物を教師データとして使うことに関するフェアユースの主張と反論

提出された書類は部分的に非公開にされていますが、主張の本質は以下のようなものです。この事件は、ROSSが競合する生成AI法律調査ツールの教師データとしてThomsonのWestlaw法律調査データベースから独自コンテンツを無許可で使用したとされる事例に関与しています。この事実は他の保留中の生成AI訴訟と比べて特殊で、ROSSが自身のライセンスを拒否された後に、ROSSは第三者のWestlawのライセンシーにアプローチし、ROSSのためにデータを取得するように誘導したとされています。そのため、この事実はウェブから公開データをスクレイピングする他の生成AI訴訟とは異なります。いずれにせよ、ROSSはその生成AIモデルの教師データとして(どのように獲得されたかに関係なく)Westlawのコンテンツを使用したことがフェアユースの範囲内であると主張しています。

その他のフェアユースに関する主張の中で、ROSSはフェアユースの第一要素に基づき、生成モデルを作成するために「本文に関する保護されていないアイデアと事実」のみを取り出し、これは著作権法第107条により保護される「研究」(“research”)にあたると主張しました。さらにROSSは、その「目的」(“purpose”)は生成AI検索ツールのための「全く独創的で新しいコードを書く」ことであったと主張しました。ROSSはまた、第4の要因として、侵害されたとされる見出しとキーナンバーからなるWestlawのコンテンツには市場が存在しないと主張しました。

一方、Thomsonは、ROSSの「目的」が競争相手であるWestlawが提供する商用法律調査ツールと強豪するサービスを展開することであったと主張しました。第4の要素については、Thomsonは特に、ROSSがWestlawのサブスクリプション(ライセンシーが対価を支払ってコンテンツにアクセスする)市場、および他の生成AIツールのトレーニングデータとしてコンテンツを第三者にライセンスする潜在的市場に損害を与えたと主張しました。

ちなみに、フェアユースに関する判断を下す際、考慮される点というのは決まっており、以下の4つの要素で構成されています:

  1. 使用の目的と性質。商業目的か非営利教育目的かも含めたもの (the purpose and character of the use, including whether such use is of a commercial nature or is for nonprofit educational purposes;)
  2. 著作物の性質 (the nature of the copyrighted work;)
  3. 著作権で保護された作品全体との関係で使用される部分の量と重要性 (the amount and substantiality of the portion used in relation to the copyrighted work as a whole; and)
  4. 著作権保護された著作物の潜在的市場または価値に及ぼす使用の影響 (the effect of the use upon the potential market for or value of the copyrighted work)

最新のフェアユースに関する最高裁判決の考察

また、両当事者は最近、フェアユースの第一要素における変形的使用に関するAndy Warhol Found. for the Visual Arts, Inc. v. Goldsmith, 598 U.S. ___, 143 S. Ct. 1258 (2023) の連邦最高裁判所の判決に関する「補足的権限」に関する準備書面(“supplemental authority” briefs)も提出しました。

関連記事:最高裁判決:著作物の二次的な使用はより難しくなる?フェアユースはどう判断されるべきか

著作権者のThomsonによれば、Goldsmith最高裁判決の決定は以下を確認するものであると主張しています:

  1. 「当事者が…コンテンツの類似した利用をすると、それはフェアユースに反する」;
  2. 「利用が変形的(transformative)でないという事実と組み合わさると、その利用が他に正当化されない限り、商業性はフェアユースの認定に不利に働く」;そして
  3. 「正当化される理由がない場合、利用が商業的であり、かつオリジナルの目的と非常に類似しているという事実はフェアユースに反する」

その一方、被告側のROSSは、Goldsmith最高裁判決は「今回の事実背景における適用は限定的」であると反論しました。その理由は、(1)本案件とは異なり、「Goldsmithにおけるオリジナルの画像と侵害されたとされる画像の使用は同一であり、どちらも雑誌記事の挿絵として使用されていたこと」、(2)Goldsmithは、フェアユースの第一要素における商業主義に対する最高裁のアプローチを変更したのではなく、「使用が高度に変形的である場合、商業主義はそれほど重要ではない」とする以前の判決を再確認したものであるだけ、(3)検索機能は著作権によって保護されるものではなく、むしろ「フェアユースが保護する技術革新そのものである」と主張しています。

Goldsmith最高裁判決が生成AIにとって何を意味するのか、専門家たちも明確な答えは出せていませんが、少なくともこの特定のケースでは、この事実関係において、Thomson(変形的フェアユースに反対を主張)は、ROSS(フェアユースに賛成を主張)よりもGoldsmithを重視しているように見えます。

本案件の他の争点については、ディスカバリーとブリーフィングが続いており、フェアユースに関する両当事者の係属中の略式判決申し立てについて、裁判所がいつ判決を下すかは不明です。

もちろん、本案件が著作物の教師データ利用に関する問題を判断する最初の裁判にならない可能性も十分あり、略式判決では事実関係が厳格に限定されることもよくあり、実質的な争点があまりなく単に裁判のための真正な事実問題が認定されるだけという可能性もあります。しかし、今のところ、このThomson事件は、生成AIの著作権問題の1つに関して、先頭を走っているように見えます。

参考記事:Copyright Fair Use for GenAI Training Data – Summary Judgment Decision Arriving Soon?

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