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中国裁判所がAI生成画像に著作権を認定 – 米国法との大きな乖離の影響は?

2023年11月27日、生成AI業界に大きな影響を及ぼしかねない中国の裁判所の判決が発表されました。注目する点は、今回始めてAIによって生成された画像コンテンツが著作権法によって保護されると認定されたところです。この中国における初めての判決は、AI技術と著作権の関係における新たな可能性を示す反面、米国の著作権法における人間の著作者要件との重要な相違点を提示しています。この判決が今後、国際的な著作権法の枠組みとAIの進展にどのような影響を与えるのか、深く掘り下げていきます。

AI生成画像の作成に「知的投資」を認めた初のケース

原告は、米国ベースのStability AIが提供するStable Diffusionを利用して女性の画像を生成し、「Little Red Book」としても知られるXiaohongshuというライフスタイル・プラットフォームに投稿しました。その後、中国を拠点とするブロガーが、中国のブログプラットフォームであるBaijiahaoのブログ記事で、原告の許可なくこのAIが生成した画像を使用しました。このことを受け、原告は2023年5月に著作権侵害で訴えを起こしました。

北京インターネット裁判所が著作権を認めたAI生成画像

原告は、問題の画像を生成するために必要なインプットを選択し、配置するという「知的投資」(“intellectual investment” )は、写真家が写真で望ましい結果を得るために骨董品のカメラを手動で調整するようなものだと主張しました。このようなシナリオでは、写真は著作物と認識され、写真家がその写真の著作者であることは普遍的に理解されています。今回の原告の主張は、そのような写真と同じように、AIシステムがそのような作品を創作するのではなく、生成AIシステムを人間が表現的作品を創作するための単なる道具として使っているというものでした。

北京の裁判所はこれに同意し、被告に公に謝罪し、原告に500元(70米ドル)の損害賠償と50元(7米ドル)の裁判費用を支払うよう命じました。

北京インターネット裁判所は、「AIが生成した画像が人間のオリジナルの知的投資を反映したものである限り、著作権法で保護される作品とみなされるべきである」と判示し、AIが生成した画像は著作権保護の対象となる芸術作品であると認定しました。

その斬新な判示に至るにあたり、裁判所は、原告がインプット(すなわち、生成AIのユーザーが、そのようなインプットに基づくアウトプットを容易にするためにAIシステムに入力する一連の創造的なプロンプトやパラメータ)を選択し、配置する際に「一定の知的投資を行った」ことを強調しました。裁判所によれば、原告が選択した入力は十分に独創的であり、したがって、出力(すなわち、AIが生成した画像)は、著作権保護を享受するために必要な「知的業績」と独創性の閾値を満たしていたとしました。ハイテクに強い裁判所は、この判決が中国の著作権法の立法趣旨に沿ったものであることも強調しました。裁判所は、AIが生成したコンテンツに著作権保護を拡大することで、個人が創造的な目的でAIを活用する動機付けとなり、創造的な作品の生産増加につながると推論しました。

中国国内でも賛否両論が起きる事態に

しかし、この判決は中国の学界で激しい論争を巻き起こしています。被告が北京知的財産権法院に上訴した場合、アイデアと表現の二分法に関する明らかに誤解した裁判の判断は、争われる可能性が高いと予想されています。中国の著作権法によれば、著作権で保護されるのは、アイデアそのものではなく、アイデアの独創的な表現に限られます。本件のような絵画作品の場合、表現の独創性は、線、色、形など画像の様々な主要要素の選択と配置によって具現されるべきです。被告は、原告が入力したプロンプト(例.例えば、「屋外環境」、「日本のアイドル」、「非常に詳細で、左右対称の魅力的な顔」、「完璧な肌」、「夢見るような黒い目」、「赤茶色の髪飾り」、「長い脚」、「ゴールデンタイム」、「鮮やかな色」、「恥ずかしがり屋」、「優雅」、「クールなポーズ」、「ティーン」、「欲望」など)は、AIシステムによって作成された結果のイメージの必要な要素を表現しているのではなく、出力を記述しているに過ぎないため、そのようなものはアイデアの表現ではなく、単なるアイデアに過ぎないと被告は主張することができます。

米国著作権法と比較したときの乖離

米国著作権法は「独創的な著作物」のみを保護するものであり、裁判所は長い間、人間のみが著作者として適格であるとしてきました。(17 U.S.C. § 102(a)Burrow-Giles Lithographic Co. v. Sarony, 111 U.S. 53, 56 (1884)を参照。)

米国著作権局は、人間の著作者性を欠く作品(例えば、A Recent Entrance to ParadiseZara of the Dawn、Théâtre D’opéra Spatial)の著作権登録を拒否(または範囲を限定)してきました。また、米国著作権局の立場を支持して、米国連邦地方裁判所は、「(著作権)法の『著作者』要件は、推定的に人間的であるとして、何世紀にもわたる定説の上に成り立っている」と説明しています。

関連記事:米連邦地裁も著作権局に合意:AI画像に著作権なし

AIを活用した漫画が限定的な著作権登録を受ける

米国著作権法における人間の著作者要件により、純粋にAIによって生成された作品における著作権の範囲は、せいぜいインプットのユニークな配列に限定されるという理解が一般的で、アウトプット(例えば、写真、ビデオ、歌)は権利範囲外という認識が大半です。人間が創作した要素とAIが創作した要素の両方を組み合わせた作品の場合、著作権の範囲は、非人間的要素(例えば、AIが生成した画像に付随する人間が創作したテキスト)をフィルタリングした後の、人間が創作した要素に限定されます。(参照:AIを活用した漫画が限定的な著作権登録を受ける

注目すべきは、「Théâtre D’opéra Spatial」事件で、表現の著作権保護に十分な人間の関与のレベルに関して、北京インターネット裁判所と米国著作権局との間で大きな意見の相違が見られることです。

Théâtre D'opéra Spatial

この事件では、個人が同様のテキストから画像を作り出すAIサービスを利用し、画像を作成するためにさらに複雑なプロセスを経ています(複数の入力プロンプトを作成することに加え、画像に磨きをかけるために写真編集ツールも使用しているなど)。中国の裁判所が、プロンプトやパラメータの作成、選択、配置などで足りるとする寛大な姿勢を示したのとは対照的に、米国著作権局は、申請者の登録申請を却下するにあたり、AIサービスへの唯一の貢献はテキストプロンプトの入力であり、その結果得られる出力物には伝統的な著作者性の要素(例えば、文学的、芸術的、音楽的表現、選択、配置の要素)は生じなかったと判断しました。

もう一つの興味深い比較は、創造的プロセスにおけるAIの役割に関する両者の対照的な解釈にです。米国著作権局は、現在のAIサービスは「人間のような文法、文章構造、単語」を理解しないため、「プロンプトを特定の表現結果を生み出すための具体的な指示として解釈する」ことができないと理解しています。それに比べ、中国の裁判所は、生成AIサービスは、学習を通じてスキルや能力を獲得した人間のように機能し、したがって、例えば、テキストプロンプトに基づいて画像を生成する能力を有していると考えています。要するに、AIは、線を引き、色を塗りつぶし、人間のアイデアや創造性を具体的な媒体に表現するという人間の役割を引き受けることで、人間が創造するための道具と見なされなければならないという考え方です。

この中国における判決が及ぼす影響は?

中国の裁判所の推論には賛否両論がありますが、この結果はある程度、知的財産権の行使を促進し、中国国内での著作権侵害を抑止する可能性があると見ることができます。ジェネレーティブAI(生成AI)のパワーを活用する人々に著作者であることを認めることで、彼らは今回のケースのような司法制度を通じて、あるいは様々なオンライン・プラットフォームのテイクダウン通知メカニズムを通じて、侵害行為に介入することができるようになるかもしれません。もし裁判所が異なる判決を下していたら、盗作者が説明責任を果たすことなくAIが生成した作品を利用する道を開き、盗作の蔓延を悪化させる可能性があったでしょう。

しかし、AIが生成した画像の著作物性に関する北京インターネット裁判所の判決は、今後の紛争はケースバイケースで判断されるべきであると注意を促していますが、それにもかかわらず、画一的な判例的価値を持つケースとして用いられる可能性もあります。もしこの判決が高等裁判所などで支持されれば、音楽、映画、テレビなどクリエイティブ産業の他の分野にも波及することは間違いありません。

最後に、今回の中国における判決はテクノロジーを用いるアーティストを優遇する判決であることは間違いありませんが、中国政府の重要な政策とも一致していることに注目したいです。実際、北京は長い間、国内のAI産業を推進する企業に対して財政的・政治的支援を行ってきました。北京インターネット裁判所の判決に先立ち、中国の爆発的なAI市場は2026年までに260億米ドルを超えると予測されています。逆説的な展開ではありますが、他の裁判所が北京インターネット裁判所の判決に倣えば、70米ドルの判決がこの評価を急上昇させる可能性があります。

参考記事:Computer Love: Beijing Court Finds AI-Generated Image is Copyrightable in Split with United States | AI Law and Policy

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