米国著作権庁(USCO)は、アーティストであるKris Kashtanovaが、MidjourneyのAI搭載テキスト画像生成ツールを一部使用して作成したコミックブック「暁のザリヤ」の限定著作権登録を許可しました。しかし、Midjourneyで生成された画像については著作権が認められず、AIを利用した作品の著作権問題はまだ課題が多く残されています。
ジェネレーティブAIを含む人工知能(AI)の利用は、とりわけ知的財産法にとって斬新で複雑な問題の数々を生み出しています。MidjourneyやStable Diffusionといったテキストから画像へのジェネレーティブAI技術の台頭に、ChatGPTやAI搭載のBing検索まで、無限の新しい展開がリアルタイムで起こっています。
AI漫画に限定的な著作権が認められる
そんな中、United States Copyright Office (USCO)は、一部ジェネレーティブAIで作成されたコミックブック「暁のザリヤ」の著作権について判断しました。結論は、Kashtanovaのコミックのテキストの著作権、および文章と視覚的要素の全体的な選択、調整、配置に関しては著作権保護を認めましたが、コミックで使用されている画像は人間の著作権の産物ではないという理由から、同じ保護は及ばないという結果になりました。
この結論に至るにあたり、USCOは、「works of authorship」というフレーズを解釈する裁判所が一様に人間の著作者の創作物に限定していることを指摘した上で、Midjourneyのユーザーが画像を生成する一般的なプロセスと、Kashtanovaが自分のコミックブックに使用した特定の画像を得るために取ったステップについての記述を検討しました。この2つのプロセスにおいて、USCOは、ユーザーが受け取る出力を予測したり制御したりすることができないことを指摘しました。USCOは、Midjourneyがプロンプトを特定の表現結果を作成するための特定の指示と解釈していないことを説明し、Midjourneyが画像に含まれる「伝統的な著作権要素」を起源とし、テキストプロンプトをツールに入力することによって、ユーザは生成された画像を「実際に形成」せず、「その背後にある『マスターマインド』ではない」と結論付けました。結局のところ、USCOによれば、Midjourneyを使用して所望の画像を生成するこのプロセスは、人間のアーティストや作家、写真家が使用するプロセスとは異なるため、著作権保護の対象とはならないとのことです。
過去にも著作権局はAI画像に関して同様の判断をしている
今回のUSCOの判断は、2019年以降、Stephen Thalerの著作権申請に対し、ThalerのAIシステム「Creativity Machine」を著作者として記載した「A Recent Entrance to Paradise」という作品の登録を、著作権主張を裏付けるのに必要な人間の著作物性がないとして却下した立場と一致しています。
AI画像の著作権保護は難しい
USCOはKashtanova氏への書簡の中で、その判断は彼女がMidjourneyで画像を作成したプロセスをめぐる特定の事実に基づいていると述べ、異なる方法で動作するAIツールによって作成された作品の場合、分析が異なる可能性を残しています。しかし、現時点では、AIが作成した画像は、米国で著作権保護を受けるために必要な人間の創作性の要件を満たさないという理解が一般的です。
参考記事:AIn’t an Author, yet. AI-assisted comic book receives limited copyright registration.