CAFCも同意:先住民への特許譲渡でIPRを回避することはできない

CAFC は2018年7月20日、先住民は特許庁でおこなわれる IPR に対して連邦法における独立国家としてのステータス(sovereign status)を使うことはできないとしました。注目されていた Saint Regis Mohawk Tribe v. Mylan Pharmaceuticals Inc., において、 CAFC は IPR は行政機関による取締行為であり(agency enforcement action)、民事訴訟とは違うため、先住民に与えられている特権(tribal immunity)によって IPR を回避できないとしました。

先住民に対する特権

アメリカ先住民の部族は、連邦法において独立国家としてのステータス(sovereign status)を与えられているので、部族の同意がない限りアメリカ先住民の部族が法廷に引きずり出されることはありません。このような免責特権は、アメリカ連邦政府とアメリカ先住民の部族の間の歴史的な背景から生まれました。アメリカ先住民の部族は連邦政府への税金も免除されているので、部族の土地と認められている場所をカジノの経営者に貸したり、部族が自ら賭博などのエンターテインメント施設を経営している場合もあります。

経緯

アメリカの先住民に対する特別な配慮を応用して自社特許が IPR にかけられることを回避しようと製薬会社Allerganがアメリカ先住民の部族であるSaint Regis Mohawk Tribeに特許を譲渡したことがきっかけで、sovereign statusによりIPRが回避できるかが争われていました。

PTAB では、先住民への特許譲渡でIPRを回避することはできないと判断され、CAFC に上訴されていました。

今回、 CAFC での焦点は、 IPR という手続きが、行政機関による取締行為のようなものであるのか(この場合、sovereign statusは適用されない)、それとも、民事訴訟のようなものであるのか(この場合、この場合、sovereign statusは適用される)が焦点になりました。

CAFC による分析

CAFC は以下の理由から IPR は民事訴訟のようなものではなく、行政機関による取締行為のようなものであると結論付けました:

(1)  IPR を開始させない幅広い裁量権: IPR 手続きの申立が全うなものであっても、特許庁長官にはIPRを開始させないという幅広い裁量権があるので、 IPR は行政機関による取締行為に近いとしました。特許庁長官は政治的な責任からIPRを開始する、または、開始させないという判断が行え、仮に、先住民が所有する特許に対して IPR を開始すると判断しても、それは政治的な責任で行え、それは連邦政府の役人が手続きの開始を承認したことになる。

(2) PTABは一方的に(ex parte)手続きを進めることができる: 次に大きな点として、たとえ特許権者と IPR 申立人が和解したとしても、 PTAB の独自の判断で一方的に IPR の手続きを進めることができるという点です。つまり、当事者が参加しなくても、 PTAB が独自に単独で IPR の手続きを進めることができ、また、 CAFC への上訴も PTAB ができるということから、 IPR は行政機関による取締行為に近いとしました。

(3) IPRと地裁民事の手続き上の違い: この点では、PTABにおける権利化後の再審査と地裁における民事手続きを比較しました。これには、例えば、IPR開始後、訂正が限られている点、IPR手続きの際にクレーム補正ができる点、IPRでは限定的なディスカバリーがあることなどが指摘されました。

CAFCの結論

上記のような点を考慮した結果、CAFCは、IPRは行政機関による取締行為だと判断し、民事訴訟とは違うため、先住民に与えられている特権(tribal immunity)はIPRには適用できず、tribal immunityによってIPR手続きは回避することはできないとしました。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Adam R. Steinert and Katherine J. Rahlin. Fredrikson & Byron PA(元記事を見る

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