[バイオテク限定]抗原の説明だけではクレームされた抗体の記述要件を満たせなくなった

Court of Appeals for the Federal Circuit(略してCAFC、アメリカ連邦巡回区控訴裁判所)は、2017年、Amgen Inc. v. Sanofi (Fed. Cir. 2017) において、新しい抗原(antigen)の特徴の説明だけでは、その抗原と結合する抗体(antibody)を十分に開示したことにはならないと判決した。

 

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記述要件(Written Description requirement)— 米国特許法 35 U.S.C. § 112(a)に明記されている特許として成立するために必要な条件の1つ。クレームされた発明に対して十分な開示がなされているかを問う。

 

この事件の前までは、新しく特徴つけられた抗原テスト(newly characterized antigen test)というルールの下、抗原の構造、化学分子式、化学名、物理的性質などを開示して抗原を十分に特徴つければ、その抗原に結合する抗体の特許が取れていた。この新しく特徴つけられた抗原テストでは、抗原(antigen)と抗体(antibody)の関係を鍵穴と鍵のような1対1の関係として扱っていた。

 

しかし、このルールに悲観的な意見も多く、実際は鍵穴と鍵のような1対1の関係ではなく、抗原(antigen)と抗体(antibody)の関係は、鍵穴とその鍵穴に合うそれぞれ形の違う100万個の鍵のような1対複数の関係ではないかという指摘もあった。

 

そのような背景からか、今回CAFCは、このAmgen 事件において、新しく特徴つけられた抗原テスト(newly characterized antigen test)は、抗原という発明していないものを説明することで抗体をクレームできることを問題視。事実上、このルールを非難する意見を支持し、新しく特徴つけられた抗原テストを否定した。

 

まとめ作成者:野口剛史

 

元記事著者:Kevin E. Noonan, Ph.D. McDonnell Boehnen Hulbert & Berghoff LLP

http://www.patentdocs.org/2017/11/amgen-inc-v-sanofi-fed-cir-2017.html

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