実例から見る特許訴訟で弁護士費用を肩代わりさせるためのポイント

Sophos v. RPostの特許侵害訴訟において、Casper判事がRPostに対してSophosの一部弁護士費用を負担するように命じた。Casper判事は、RPostの訴訟における主張と行動を総合的に見て、RPostの立ち振舞は「例外的な事件」 (exceptional cases)に至るとした。

Attorney fee shifting awards (または単にAttorney feesとも呼ばれることがある) – 米国特許法に明記されている弁護士費用賠償制度 (35 U.S.C. §285.)。米国最高裁は、2014年、Highmark Inc. v. Allcare Health Management Systems, Inc., 134 S. Ct. 1744 (2014) と Octane Fitness, LLC v. ICON Health & Fitness, Inc., 134 S. Ct. 1749 (2014) において、「例外的な事件」 (exceptional cases) に対して、裁判所が敗訴した側に勝訴した側の弁護士費用を負担することを命じることができると判決。

この訴訟は、2013年、SophosがRPostの特許に対し無効と非侵害を求める宣言的判決 (declaratory judgment)を申し立てることで始まった。2017年の末、Casper判事は、略式判決(summary judgment)において、RPostの特許を無効と判断。

略式判決で勝利を収めた後、SophosはRPostに略式判決に至るまでの5ヶ月間の弁護士費用の負担を求める手続きを行う。弁護士費用賠償が認められるには、案件が「例外的な事件」 (exceptional cases) であることを証明する必要がある。

そこで、Sophosは、案件が「例外的な事件」 (exceptional cases) であることを以下のようなRPostの主張とDiscoveryにおける不正行動などを元に主張:

RPostの主張に関しては、1) RPostのエキスパートは侵害に対する見解をたびたび変えていたこと、2)Sophosの非侵害に関する主張に対する建設的な主張がなされていなかったことと、3)損害に対する事実的な証拠を提供していなかったことを示した。

RPostのDiscoveryにおける不正行動に関しては、1)discovery requestsに対応していなかったこと、2)Rule 30(b)(6) witnessesに対して適切な準備がなされいなかったこと、3)エキスパートを迅速に雇わなかったことを示した。

Rule 30(b)(6) witnesses – Federal Rules of Civil Procedure Rule 30(b)(6)に示されている証人。Discoveryの際に、Rule 30(b)(6)証人に対する証人尋問(Deposition)が行われる。

このような主張を元に、総合的に判断した結果、裁判所はRPostの立ち振舞が「例外的な事件」に当たるとして、RPostにSophosの弁護士費用を負担することを命じた。この判決の中で、判事は、Discoveryの主要な点においてRPostに落ち度があったことを認め、略式判決においてRPostが主張するいくつもの点に対して証拠を提出しなかったとした。これらの点1つ1つは、案件を「例外的な事件」にするものではないが、総合的にそれらのRPostの行動を見た場合、「例外的な事件」に値するとした。しかし、実際の弁護士費用の金額に関してはSophosの主張が認められず、両当事者が追加のブリーフィングを提出するように命じた。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Gourdin Sirles. Proskauer Rose LLP

https://www.newenglandipblog.com/2018/02/electronic-return-receipt-patent-dispute-dubbed-exceptional-case-after-summary-judgment-award/#page=1

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