バーチャル知財カンファレンスに参加してみました

今回、AIPLAのVirtual Spring Meeting #aiplaVSM に参加してきました。いつもこの時期は大きなホテルで数千人規模の知財カンファレンスが開かれるのですが、今回はCOVID-19の影響で現地での開催ができず、バーチャルで行うことになりました。今回はそのバーチャル知財カンファレンスの感想を共有します。

AIPLAは知財プロフェッショナルのための団体

カンファレンスの話をする前に、少しAIPLAという団体について説明します。AIPLAの正式名称はThe American Intellectual Property Law Associationと言って、Crystal City, Arlington, Virginiaに本拠地があります。アメリカ特許庁があるのがAlexandria, VAなので、特許庁から車で15分程度のところにあります。

名前の通り知的財産権に関わる専門家のための団体で、メンバー数は1万3千人以上いるらしく(OLCのニュースレター購読者の23倍…)、メンバーもアメリカだけでなく世界中にいます。

さて、AIPLAは様々な活動を行っていますが、大規模なカンファレンスを定期的に開いているので、個人的にはカンファレンスに参加するだけです。このような大規模なカンファレンスのいいところは1回参加すれば、弁護士資格を維持するために必要な勉強時間(CLE:Continued Legal Education) を1年間分まとめて取得できることです。

私は年に1回行けばいいし、数年行かないときもあるので、AIPLAで作ったコネみたいなのはありませんが、法律事務所勤務の弁護士さんたちはネットワーキングのためにも頻繁に参加していたり、個別の委員会に入ったりしている人も多いようです。

個人的には、とてつもない規模のカンファレンスなのですこし堅苦しいというか、アットホーム感が全然ない場所なので、カンファレンスでは「ぼっち」にならないように頑張ってたまたま隣に座った人と会話をするように努力するようにしています。

プログラムと日程

AIPLAの組織としての個人的な見解はこれぐらいにして、今回行われているVirtual Spring Meetingについて話していきます。

まずプログラムが大きく変わっています。通常は3日間のプログラムで朝から晩まで様々なプレゼンやパネルディスカッションが行われるのですが、今回は、なんと、5月4日(月)に始まり、15日(金)に終わるという12日間(週末は何もないので実質10日間)の開催になりました。

その代わりに、1日のセッションが大幅に少なくなり、ネットワーキング系のイベントも含めわずか3セッションから4セッションほどしかありません。

個人的にはさすがに朝から晩までWebinarを見続けるというのは苦痛なので、今回のように広く薄くしたことはいい対策だと思いました。スケジュールはすべてNew YorkやDCの時間帯であるEastern standard timeで、たまたま私の住んでいるAtlantaと同じなのでよかったですが、例えばアメリカでもカリフォルニアの場合、時差が3時間もあるので西海岸の人が午前中のプログラムに参加するのはほぼ無理です。あと世界中どこからでも参加できますが、やはりリアルタイムで参加したいとなると、時差という壁が大きくのしかかってしまうと感じました。

このような問題からか、全体的に見てセミナーの数が前年よりも少ない印象でした。バーチャルになって、開催を予定していたセミナーの多くがキャンセルになったり物理的に開催できなくなったりしてしまったのだと思います。

しかし、ちゃんと参加費を払った人には、後日オンデマンドでセミナーの録画動画が見れるようになっているとのことです。通常のAIPLAのカンファレンスでは複数のセミナーが同時進行しているので、興味があるトピックが重なってしまった場合、選ぶしかありませんが、今回はバーチャルなので録画ですが後で見れるのは便利ですね。

今回参加したセッション

今回のVirtual Spring Meeting、当然のことながら参加費がかかります。通常のAIPLAカンファレンスは、メンバーだったら$900から$1000ぐらいの参加費がかかります。(非メンバーは$1400から$1500)。しかし、今回のVirtual Spring Meetingに限ってはなんとメンバーは$695、非メンバーは$1195という良心価格?! でも場所代や食事代を引くと、まあそれほどでもないですね。でもスポンサーからのお金が大分減っていると思うので、それを思うとAIPLAの収支が気になるところ。

このように割安なVirtual Spring Meetingですが、おいしい食事と無料ドリンク目当てでカンファレンスに行っている私のような人には参加費を払うような魅力がなく、会社も払ってくれそうな気配がなかったので、今回は無料で参加できる「network event」に参加しました。

実はVirtual Spring Meetingが開催されていることに今週気づいたので、1週目のイベントはすべてスルーしてしまいました。しかし、まだ参加できる無料イベントがあったので、参加してみました。

Meeting感がありすぎるZoom

最初に参加したイベントがこちら。ネットワーキングイベントという枠ですが、実際の雰囲気はProfession Committeeの内々の会議みたいでした。

このMeet-upは、Zoomで行われ、ホストの人が最初話して、その後Profession Committeeのメンバーである人達が順々に今後の弁護士の「メンタル問題」についてどういった企画をするかについて話していました。

話してる課題は弁護士にとって大切なものです。でも、これって、ネットワーキングイベントでもMeet-upイベントでもなくない?と正直のところ思ってしまいました。さすがにネットワーキングイベントなのに全く知らないCommitteeの関係者が発言しているのを聞くだけは苦痛でしかありませんでした。

運営サイドとしては、Virtual Spring Meetingの企画は始めてで、「無料」のネットワーキングイベントまで十分企画する時間がなかったのだと思いますが、それでももうちょっと配慮してくれたらよかったなと言うのが本音です。

次のセッションに期待

12日のMeet-upは謎イベントでしたが、まだ無料で参加できるネットワーキングイベントがあと数回あるので、そのセッションに期待したいと思います。

しかし、イベントごとに事前登録するのですが、Zoomの登録とGoToWebinarの登録があり、なぜかネットワーキングイベントなのに対話がしづらいGoToWebinarのセッションがあるのかが謎ですが、興味はあるので、試しに参加できるものは積極的に参加したいと思います。

まとめ

AIPLAのカンファレンスのような通常は数千人規模の参加者がある大規模なイベントをバーチャルで行うのは結構大変なのだと思いました。特に運営側に大きな負担がかかるので、開催できるだけでも大きな成果だと思っています。

しかし、「無料」ネットワーキングイベントに参加しただけですが、やはりバーチャルでは物足りなさを感じてしまいました。やはりみんなバーチャルなカンファレンスに慣れていないし、どうやったらわからないので、手探り感満載の感じでした。

大規模なカンファレンスは、現地で実際に人と会ってネットワーキングのために参加している人の方が圧倒的に多く、実際のカンファレンスのセミナー内容の為に行く人はほとんどいません。なので、今回のようなバーチャル知財カンファレンスには限界があるように見えました。少なくとも今の形でやり続けるのは難しいと思います。

日本でもイベントを行っている会社はCOVID-19の影響で大きな打撃を受けていますが、今のところバーチャルでイベントをするに「限界」があるので、ポストコロナの時代にはリアルイベントの需要がまた伸びてくるのだと思います。

しかし、ポストコロナの時代がいつ来るかわからないので、その間にイノベーションが起こり、今感じているバーチャルカンファレンスの限界が取り払われ、全く新しい価値観をもった体験ができる場になったらいいなと思っています。

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