AIA手続き中のクレーム補正確立アップ

2017年10月のAqua Products Inc. v. Matalにおいて、AIA手続き中のクレーム補正の際の特許性を示す責任が特許権利者から挑戦者に変わっておよそ2年。統計データからpost-Aqua productsではAIA手続き中にクレーム補正が認められる確立がpre-Aqua Productsよりも高くなったことがわかりました。

Aqua Products Inc. v. Matalとは?

2017年10月にCAFCのEn Bancで行われた判決で、IPRやCBMなどのAIA手続きにおいてクレーム補正があった場合の補正後のクレームに対する特許性を示す責任(Burden)を特許権者から挑戦者へ変更になりました。関連記事はこちら。それまで(pre-Aqua Products)は補正をした特許権利者が補正を行ったクレームに対する特許性も示さなければいけなかったのですが、この判例以降(post-Aqua Products)は補正は特許権者が行い、その補正されたクレームに特許性がないことを示す責任が挑戦者に課されるようになりました。

Pre-Aqua Productsのクレーム補正成功率

AIA手続きが始まった2012年9月から判例が下される直前の2017年9月末までを見てみると、PTABは170件のクレーム補正の申し入れに対して判決を下し、たった5件しか完全に認められず、追加で9件が一部認められるだけでした。これを確立で示すとわずか8.24%のクレーム補正成功率しかないということになります。(元記事の図を参照)

Post-Aqua Productsのクレーム補正成功率

Aqua Productsの判決が下ってから2年が経過しましたが、特許権者にとってはうれしい判例となりました。Aqua Productsの判決が下ってから最初の1年の間に、PTABは35件のクレーム補正の申し入れに対して判決を下し、3件が完全に認めら、追加で4件が一部認められました。これを確立で示すと20%のクレーム補正成功率となりpre-Aqua Productsと比較すると約150%の改善があったことになります。

このトレンドは2年目にも続いているようです。USPTOは2018年9月以降のAIA手続きにおけるクレーム補正の申し入れに対するデータは提供していないので、独自の調査を試みました。その結果、2018年9月30日から2019年10月24日までのデータを見ると、PTABは103件のクレーム補正の申し入れに対して判決を下し、19件が完全に認めら、追加で5件が一部認められました。これを確立で示すと23.3%のクレーム補正成功率となります。

この2つのデータを合わせると、過去2年お間のpost-Aqua Productsのクレーム補正成功率は22.46%になります。これは、pre-Aqua Products時代の8.24%に比べると大きく改善されたことがわかります。(元記事の図を参照)

パイロットプログラムも特許権利者に有利か?

2019年3月からPTABからクレーム補正に関する初期的なガイダンスを得られるオプションが加わりました。関連記事はこちら。このようなオプションが実際の手続きに関してどのような影響を与えているか統計データを取るにはまだ時期的に早いですが、今後も継続してモニタリングしていきます。

Reissue Applications

Post-Aqua Productsでクレーム補正の成功率は上がったものの23%の成功率は理想的とは言えません。そこで、Reissue applicationは検討する価値のあるものです。最近、USPTOはAIA手続きの後どのようにReissue手続きを行うべきかというガイドラインを発表しました。手続きのタイミングが重要なので、Reissueを検討する場合、とても便利な資料になります。

まとめ

Post-Aqua Productsになって早2年、AIA手続きにおけるクレーム補正成功率が大きく改善されました。そのため、pre-Aqua Productsまではほぼ使われなかったクレーム補正の申し入れを活用し、AIA手続きで挑戦されたクレームを補正することで権利を維持するという戦略も有効な手段となっています。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Daniel B. Weinger, Vincent M. Ferraro and Christopher G. Duerden. Mintz (元記事を見る

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