AIは複数のIP資産で守る:AI関連の知財戦略

AI(Artificial Intelligence)に関連する技術革新は早く、知財を含め法律環境が追いついていないので、AIに対する法律的な保護は未だに明確ではない。このような状態で、AIに関する知財を守るためには、特許だけではなく、著作権(Copyright)や企業秘密(Trade secret)を用いた保護を考える必要がある。

特許:特許は、例え被告人が独自の開発をしていても特許侵害は問えるので、非常に協力な資産となる。しかし、特許で保護できない範囲も多いのが事実。例えば、AIをトレーニングするデータセットなどを含むデータ編集、プログラマーのソースコード内における独特の表現方法、競争で有利に立てる企業秘密に相当する他の機密情報などは特許では保護できない。

また、最高裁のAlice事件以降、特許法35 U.S.C. § 101に基づくビジネス方法及びコンピュータ・ソフトウエア関連発明の特許適格性 (patent elibility)が問題になっている。AIのソフトウェアという面を特許として保護するには、このAlice事件がネックとなる場合が多い。一度出願してしまうと、例え特許が取れなくても情報は公開されてしまうので、権利化に失敗してしまうと、同じ情報を企業秘密で守れなくなってしまう。

Alice事件 – アメリカにおけるビジネス方法及びコンピュータ・ソフトウエア関連発明の特許適格性 (patent elibility)に関わる重要な判例。特許適格性を判断するのに、判例のMayo事件で示された2段階テストを採用。Mayo Collaborative Services v. Prometheus Laboratories, Inc., 132 S. Ct. 1289 (2012)。第1段階では、対象のクレームが特許不適格な主題(patent-ineligible concepts)を対象とするものか判断する。特許不適格な主題とは、自然法則(laws of nature),自然現象(natural phenomena)又は抽象的概念(abstract ideas)など。もしクレームが特許不適格な主題を対象とするものと判断された場合、第2ステップにおいて,そのクレームがクレームの性質を特許適格性がある妥当な状態に変換する追加的要素を十分に含んでいるかを判断する。判断基準が不透明で、2014年の判例以来、post-Alice(Alice事件後)の特許適格性に関する議論は絶えない。特許庁でも専用のページを設けてガイドライン等を提供している。https://www.uspto.gov/patent/laws-and-regulations/examination-policy/subject-matter-eligibility

最後に特許の有効期限は20年に限られていて、他の著作権(著者の生涯とその後70年)と期限がない企業秘密と比べるとだいぶ短い。

企業秘密(Trade Secret Protection

連邦法・州法における企業秘密は経済的に価値のある秘密を保護できる法律だ。保護できる情報は、化学式・公式、編集、プログラム、方法、技術、プロセス、デザイン、コードなど幅広い。特許と違い、出願や登録はいらない。企業秘密の所有者が特定の情報を秘密にしておくことで競争で有利に立て、その情報の機密を守るのに合理的な手段が取られている場合、企業秘密は自動的に生じる。多くのAIシステムの要素は企業秘密に向いている。例えば、モジュラーネットワーク構造や独立モジュールなどを含むニューラルネットワーク、トレーニングセット、データアウトプット、その他データ、AIのコードとAIが生み出したコードを含むソフト、学習モデル、バック・プロパゲーション、その他のアルゴリズムなどは企業秘密に向いている。

秘密を守る合理的な方法(”Reasonable measures” )は会社の規模、リソースなどで異なるが、物理的な、また、技術的な方法で企業秘密に関わる情報のアクセスを制限したり、アクセスを監視することが最低限必要になってくるだろう。書面で明確化された企業秘密に関わるポリシー、アクセスできる従業員の限定と契約による縛りなども考える必要がある。社外のビジネスパートナーと企業秘密を共有する場合は、NDA(nondisclosure agreements、守秘義務契約)を結び、内容も、秘密義務、監査権、関係が終了してからのコントロールに関する事柄などの項目を充実する必要がある。また、コードが顧客に行く場合、デジタル権利マネージメントやリバースエンジニアリング禁止を含んだライセンス項目なども必要になる。

戦略:

企業秘密に関わる訴訟の場合、秘密を守る合理的な方法(”Reasonable measures” )が問題になることが圧倒的に多いので、実際の方法は秘密を守る合理的な方法(”Reasonable measures” )を超えるより強固な方法で秘密を守ることをおすすめする。また、強固な秘密保持の方法は、企業秘密の漏洩自体を未然に防いだり、もし漏洩があった場合、すぐにその事実を知れるなどの利点がある。

企業秘密を生み出すために、まず、企業は企業秘密を特定し、分類することをすすめる。一番価値のある企業秘密を認識し、重要な企業秘密に対する保護を手厚くする管理体制を社内で確立することが重要。

 

ソフトウェア著作権(Software Copyright Protection

ソフトウェアはアメリカの著作権法で守られている。著作権における保護は、ソフトウェアに組み込まれた独自の表現にまで及ぶ。しかし、著作権における保護は、アルゴリズム、フォーマット、ロジック、システムデザインなど機能に関わる部分には及ばない。

 

AIを著作権で守る上での問題:

著作者(Authorship)ー 著作物(著者が作った作品 (a work of ‘authorship’ ))となるには、人がその作品を作り出さないといけないとアメリカ著作権局が判断。このことにより、AIにより作り出された作品の著作物性( copyrightability)が問われている。

 

また、人が作成するソフトウェアの権利についても注意が必要だ。著作権法の職務著作原理(work for hire doctrine)は、コンピューターソフトウェアの外注には自動的に適用されない。 つまり、第三者にソフトウェア開発を依頼する場合、契約書に譲渡に関わる文言と、職務著作(work for hire)であるので、外注により作られたソフトの著作権は、開発者ではなく、依頼主の会社が保有するということを明記する必要がある。また、開発時に第三者のコードを使うのか?、または、オープンソースのコードを使うのか?十分検討した上で、ソフトウェア開発をする必要がある。

 

著作権の登録(Copyright Registration)ー 登録は必ずしも必要ではないが、著作権の登録にはいくつか利点がある。まず、侵害訴訟を起こすには、事前に著作権登録をしておく必要がある。法定損害賠償 (statutory damages)や弁護士費用の請求(attorneys’ fees)などはある一定の期間内に登録を済ませておかないとできない。 また、一定の期間内に登録を済ませておけば、 著作権が有効だという推定的証拠(prima facie evidence)を得ることができる。 ここで注意したいのが、ソフトウェアを更新した際に、新たに登録が必要なものが発生するかもしれないので、確認が必要なことだ。

 

AIデータの著作権(Copyrighting AI Data)ー 純粋なデータは著作権では守れない。しかし、データ編集は著作権で守れる可能性がある。特に、生データを操作し、構造化されたデータ群に整理した場合などは著作権で守れる可能性が高い。しかし、このようなデータは、企業秘密で守った方がいい場合もあるので、どのように保護するか、十分検討した上で作業に移る必要がある。

 

著作権で保護可能なコードに含まれる企業秘密の編集 ー もし著作権保護をしたいソフトウェアに企業秘密が含まれている場合、登録後は公開されるため、その部分を編集する必要がある。更に、登録時にソフトウェアには企業秘密が踏むまれている旨を書面で伝えておく必要がある。

 

戦略:

予防は治療よりも大切というコンセプトは著作権にも当てはまる。ソフトウェアが盗まれた場合、ソフトウェアが登録されていない、または、どのバージョンのソフトが侵害されたかわからないという理由で、多くの企業は訴訟をすぐに起こすことができない。なので、全ての変更を登録するとはいかないまでも、大きなアップデートをした時に一定期間内に著作権登録をおこなうなどの戦略を確立する必要がある。その他、バージョンコントロールや、エンドユーザー用の使用許諾契約(end user license agreements)も著作権を考慮して運用していく必要がある。

 

まとめ作成者:野口剛史

 

元記事著者:Andrea Weiss Jeffries, Emily J. Tait and Jason M. Garr. Jones Day

http://www.jonesday.com/Protecting-Artificial-Intelligence-IP-Patents-Trade-Secrets-or-Copyrights-01-09-2018/?RSS=true

 

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