地裁と比較して知る米ITC調査の9つのポイント

地裁における特許訴訟とITC調査を比較して違いを見てみましょう。

 

1.手続きの速さ:ITC調査で一番知ってほしい点が手続きの速さです。地裁では数年かかる手続きをITCでは12ヶ月以内に行なってしまいます。手続きが進むスピードが早いということは、それだけ対応するコスト(時間、お金、リソース)がかかることになります。ITCは時間との勝負と言っても過言ではないでしょう。

 

2.国内産業要件(Domestic industry requirements: ITCの目的が不正取引から国内産業を守ることなので、ITC調査を申し立てする特許権者は、国内産業要件を満たす必要があります。

 

3.陪審員v.ALJ地裁では陪審員による公判が行えますが、ITC調査では、ALJ(Administrative law judge)と呼ばれる行政法判事によって公判が行われます。地裁における陪審員による公判では、とにかく素人にもわかりやすい説明と主張が求められます。しかし、ALJは特許に関わる仕事を頻繁に行っているので、担当ALJの理解度や性格にあった説明や主張を行う必要があります。

 

4.救済:地裁は賠償金と差し押さえの両方ができますが、差し押さえは2006年のebay事件以降、認められにくくなってしまいました。一方、ITCは不正取引から国内産業を守る機関なので、輸入品の排除命令(exclusion order)とすでに輸入された違法製品の流通を止める停止命令(cease and desist order)が可能です。ここでの大きな違いは、地裁では過去の侵害に対する賠償金を請求できますが、ITCではそのようなことが一切できないことです。

 

5.対象:地裁ではアメリカ国内における特許侵害についても訴訟を起こすことができますが、ITCの場合、輸入品のみが対象になります。これも、ITCの役割と地裁の役割の違いからこのような差が出てきます。

 

6.証拠法:地裁では連邦証拠法(Federal rule of evidence)が用いられますが、ITCではITC専用に変更が加えられた証拠法が用いられます。また、各ALJごとに独自のルールを設けています。ここでの違いで特に大きな点は、Discoveryの速さと適用範囲の大きさだと思います。日本サイドで、証拠法の違いの詳細を知っている必要はないと思いますが、弁護士を雇う上で、担当弁護士がITC独自のルールに精通しているか?事前に確認しておくことが大切なポイントだと思います。

 

7.裁判形式:特許訴訟を含む通常の裁判所の訴訟は、申立人(特許の場合、特許権者)v.被告人で争われますが、ITC調査の場合、公益を代表して政府の調査員(staff attorney)が独立した組織として介入し、三つ巴で手続きが進みます。

 

8.ジェネラリストv.スペシャリスト:上記3の点に関係するポイントで、地裁では、陪審員や特許訴訟に慣れていない地裁判事というジェネラリストが事実認証を行なったり、判決を下します。しかし。ITCではALJという特許問題を頻繁に扱うALJが担当するので、この違いを考慮して説明や主張を行う必要があります。

 

9.管轄:地裁は、裁判地を選ぶ上で、対人的で当事者の所在地や侵害が起こっている場所が重要になってきます。このような対人管轄権(Personal jurisdiction)や裁判地(Venue)は、地裁で特許訴訟を起こす際、裁判所を選ぶ上で重要な点になります。一方、ITCの管轄は対物的で、侵害が疑われる「モノ」によって管轄が定まります。ITCは1つしかないので、地裁で起こるようなForum shopping等の問題はないのですが、あくまでも、ITCの管轄はその性格上、輸入品のみになります。

 

Forum shopping (裁判所選び) – 原告が自己に有利な裁判所で訴訟を提起すること

 

これは、2月に行なったウェビナー「 米国特許訴訟戦略のために知っておきたい米ITC調査 」の一部です。本編では、ITCという組織の説明に始まり、地裁での特許訴訟と比較したITC調査の特徴(国内産業要件、救済方法、調査の概要)を説明した後に、最後に日本企業としてITC調査に関わった際の知っておきたいポイントを紹介しています。以下のリンクからウェビナー動画と日本語のまとめが見れるので参考にしてみてください。

 

まとめ作成者:野口剛史

 

講師:Aamir Kazi, Ben Thompson. Fish & Richardson法律事務所

http://openlegalcommunity.com/itc_patent_investigation

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