知財でもウェビナーで情報発信をするところが増えてきました。しかし、そのほとんどが英語ベースで時間も1時間程度と参加するにもハードルが高いと思う知財関係者も多いのではないでしょうか?そこで、私が実際にウェビナーを受け、そこからなんだことを皆さんとシェアーすることを考えました。
試験的な試みなのでまだどうなるかわかりませんが、みなさんの理解とご協力をお願いします。フィードバックがありましたら、ウェブサイトの問い合わせかコメント欄から連絡をいただけると助かります。たとえば、気になるウェビナーがあれば教えてください。
さて、第一回目となる今回は、7月の初めにライブで配信された IPWatchdog.com主催 のBUSINESS DEVELOPMENT FOR IP FIRMS: TIPS ON GROWING YOUR BUSINESSという知財のビジネスサイドのウェビナーから学んだことです。
ちなみに、このウェビナーは録画されていて、このページで必要事項を記入するとオンデマンドで見れるようになっています。
ウェビナーから学んだこと
- ビジネスデベロップメントをしない時代は終わって、弁護士・弁理士でも積極的なマーケティング活動をしないといけない時代になった。
- エキスパートであることはすでに当たり前で、自分がエキスパートであることをターゲット層に知ってもらえることが大切。
- 情報発信は必要不可欠。いい記事・コンテンツを作り配信していくことが大切。SNSで拡散してコンテンツの存在を知ってもらうことも重要。
- すべて自分でやるのではなく、ツールやリソースをうまく使って効率的にビジネスデベロップメントをする。
- 海外提携事務所へ送る仕事と受け取る仕事のバランス(Reciprocityの問題)を知っておくべき。
- CPA Globalが提供するInnographyを使うと、海外提携事務所とデーターを見ながらReciprocityの問題を解決する提案ができる。
- CPA Globalが提供するInnographyは使い方次第で、さまざまなビジネスオポチュニティーを模索できるツール。
ウェビナーの概要
IPWatchdog.com主催で、CPA Globalという知財系のソフトやサービスを提供している会社がスポンサーになって1時間程度、知財のマーケティングに関するウェビナーが行われました。
ゲストにヨーロッパ特許弁護士で情報発信に積極的に取り組んでいるRolf Claessen弁護士と CPA GlobaのJayne Durden氏をゲストに招いてIPWatchdogのGene Quinn弁護士と共に対話形式で進められました。
ウェビナーの流れ
ここからは実際のウェビナーを時系列で追って、気になったところにコメントを付け加えて話していきます。
弁護士はビジネスデベロップメントのスキルがない
仕事の腕はよくても、それだけではキャリアアップできない時期が来ます。それまでにビジネスデベロップメントスキルがないと、次のステップに行けない可能性が出てくるという仕組み上の問題を認識していない弁護士が多いのかも。
弁護士は自分でやる傾向がある。でも、ツールやリソースを上手に使うことが大切。助けを求めるのもあり。
弁護士までなれた人なので、頭はいいはず。でも、自分の能力に頼りすぎても効率がよくない場合も。時にはプライドを捨てて、助けを求められる環境にあるかが大切だと感じました。
エキスパートであって、エキスパートであることをみんなに知ってもらうことが大切。誰にエキスパートとして認めてもらいたいか(見込み客)を特定しておくことが大切。
仕事ができるのは素晴らしいですが、自分が「できる人」であることを知ってもらわないと、仕事が来ない。そんな簡単ですが意外にできていないことを指摘された気がします。
SNSで発信しない、ポッドキャストなどで発言しない、オンラインの記事を書かないは時代遅れ。
今は個人で簡単に情報発信ができる時代。そこで「何もしない」のはもうダメですとストレートに言われた感じがしました。
いい記事、コンテンツを作ることが大切。
Rolf Claessen弁護士はウェビナーで何度も自分が作成したドイツの訴訟制度に関する詳しい記事やYoutubeビデオを例に挙げてこの点を強調してくれました。知財業界、特にアメリカ以外の地域における知財情報はまだまだ公開されていない部分が多いので、わかりやすいコンテンツを心がければ注目されやすいのではと思いました。
新米でもビジネスデベロップメントの体験を早くからさせる
早くからビジネスデベロップメントの重要性を教えて、実際に体験させるのは事務所の大切な教育プログラムの1つ。
ビジネスデベロップメント専門の弁護士でない人も雇うのもあり。アメリカではその求人がいっぱい。
アメリカの知財市場は日本より遙かに大きく、進んでいるので、このトレンドがいまアメリカであるということは、日本でもあと数年で同じような流れになるのでは?そうだったら日本の特許事務所王手は今からビジネスデベロップメントに特化した人材を確保するべきでは?と思いました。
ほとんどの事務所におけるビジネスデベロップメントの活動がクライアントとの対話(オーガニックグロース)、RFPへの回答など「古い」し、「受動的」。
ビジネスオポチュニティーを模索する積極的な姿勢が欠けている事務所がほとんど。ということは、逆に能動的に動ければ、今の環境においてビジネスチャンスはいくらでもあるのでは?
外国事務所と仕事量の差。仕事を送っていても、仕事を送ってくれない。そうなると長期的なパートナーシップが築けない。
バランスが大事なんですね。なんでもそうですが、お互いに同等の貢献度がないと長期的な関係は築けない。
分析ツールを使うと、たとえば、どの事務所がどのくらいどの外国事務所に送っているのかがわかる。
CPA Globalが提供するInnographyを使った例がいくつか紹介されていました。
例えば、外国提携事務所が1つの事務所に大量に送っていて、個別案件をいろんなところに。そのようなところには、個別案件をまとめて送ってもらえないか打診。もう1つは、事務所トップリストを都市別に検索して、出張の時にピンポイントで面会する事務所を特定したり、Reciprocityバランスをチェックしたり、という使い方。
データを見て交渉できるのは心強いと思いました。ただただ「仕事をもっとくれ」といっても相手も困るので、データによる積極的な提案ができると話がスムーズに進むのではと思いました。
Watch機能:既存のクライアントが別の事務所を使い始めたら、知らせてくれる。その情報をつかって、電話でクライアントと対話。そこからビジネストークへ。
これがSaaSのいいところ。最近のウェブベースやアプリベースのツールは頻繁に便利な機能が追加されるので、利便性が高いです。この機能だけで既存のクライアントの動向がチェックでき、不満の早期解決に使えそうですね。