士業関係者のための情報発信プラットホームプロジェクト

今回は、裏法務系 Advent Calendar 2019の記事も兼ねています。#裏legalAC

裏法務系 Advent Calendar 2019は、NH7023さんが作成したアドベントカレンダー(12月1日から25日のクリスマスまでをカウントダウンするカレンダーです。アメリカではよくスーパーとかで見かけます)に合わせ、1日1記事、(知財を含む)法務系の記事をアップするという企画です。今回私が参加したアドベントカレンダーはここから見られます。

せっかく#裏legalACでもこの記事を掲載するので、今回は今私が取り組んでいる士業関係者のための情報発信プラットホームプロジェクトを紹介しようと思います。

誰に頼んでいいかわからない

具体的な取り組みを紹介する前に、私が思っている士業の問題点について説明します。

私はメーカーの知財部で働いていますが、たまに提携事務所以外に仕事を依頼することがあります。これらは単発の案件だったり、提携事務所では対応できない特殊案件だったりしますが、このような時にそもそも誰に案件を頼んでいいのかがさっぱりわかりません。

ググるか知り合いに聞く

当然提携している事務所さんに「誰か競合事務所でいいところ知ってますか?」みたいなことは聞けないので、単発案件を依頼する事務所さんを探す手段はGoogleなどの検索サイトでサーチしたり、知り合いの知財関係者に紹介してもらうぐらいしかしたことがありません。

でも、これっておかしくないですか?

私が求めているような業務をしている事務所や弁護士・弁理士さんはいくらでもいる。でも、結局その事務所や弁護士・弁理士さんを「知らない」ので、地道に探す手間やコスト(めんどくさいですから。。。。)をかけるよりも、検索してとりあえずトップページあたりにヒットした事務所さんや知人に紹介してもらった事務所1~2件が候補になってしまうというのが現状だと思います。

そこから見積もりとったり、事務所のホームーページ見たり、(時間があれば)事務所や担当になりそうな弁護士・弁理士さんをググったりしますが、この時点で得られる情報ってありきたりの情報とざっくりとした見積もり料金だけです。

これだけだと、候補の事務所をどう比較していいかわからないですよね?

これって、今だったら解決できる問題じゃない?

この新規案件の問題点をまとめると、以下のようになります。

  1. 頼みたい人は誰に頼んでいいかわからない
  2. 仕事をほしい人は頼みたい人が見つけられないところにいる

これって、古典的な需要と供給の問題ですよね。需要も供給もあるのに、その2つが効率的にマッチしていない。ということは、効率よく「頼みたい人」と「仕事をほしい人」をつなげられれば、問題は解決するはずです。

このマッチングの効率化で典型的な例は、求人市場ですよね。特に、スマホが普及してオンデマンドの文化が浸透してきたので、バイトルなど便利なツールがたくさんあります。

つまり、求人市場みたいに、需要と供給を効率よくつなげられる仕組みを作れば、法務・知財市場はより活発になるはずです。

士業特有の課題

でも、ただ単に既存の求人市場みたいなモデルを法務や知財などの士業系のビジネスに当てはめることはできません。というのも、士業は弁護士や弁理士などある特定の資格をもった人が行う業務なので、いろいろと規制があるし、クライアントから「先生」とよばれることも多い仕事なので、自分の「見せ方」も重要になってきます。

このような「縛り」から、自分でブログを書いたりしている人もいますが、そもそもそのような人は珍しく、仕事との両立をしないといけないので、定期的に情報配信をしている人はほとんどいません。

つまり、この士業における需要と供給の問題を解決するには、#裏legalAC や自分のブログ、ツイッターなどで積極的に情報配信している人だけでなく、もっと幅広い「普通の」士業プロフェッショナルにも使いやすいツールを提供しないといけません。

士業関係者専用の情報発信プラットホームプロジェクト開始!!!

と、前置きが長くなりましたが、ここからが今回紹介したいプロジェクトの概要です。

コンセプトとしては、士業プロフェッショナルのためのプラットフォームで、疑問・知識・文化を共有できるスペースと「助けが必要な人」と「助けるスキルをもった人」がつながれるコミュニティーです。

まだ試験段階ですが、以下の3つの機能を備えたサイトを運営していきます。

  1. Q&Aサービス
  2. ソーシャル機能
  3. 士業コンプライアンス

それぞれの特徴を簡単に説明します。

1. Q&Aサービス

士業で仕事を取るには自分の業務に関連する情報を配信していくという方法があります。業務関連のブログなどを掲載することで自分の経験や知識を紹介してその道の「エキスパート」として知ってもらうことが目的ですね。なので、事務所のホームページなどにブログ記事をあげているとこがあるのです。

でも、ブログやツイッター、YouTubeなどでコンテンツを配信するのは時間と労力がかかります。それを本業のお金がもらえる常務と並行してコンスタントにやっていくのは大変です。例えば、公認会計士の小山さんはYouTubeチャンネルを持っていますが、ここまで大々的に情報配信できる士業プロフェッショナルは一握りです。

そこで今回私が携わっているプロジェクトでは、情報配信のハードルをできるだけ低くして、「誰でも」実際に必要とされる自分オリジナルのコンテンツをコンスタントに作れるようにしました。それがQ&Aサービスです。

ヤフー知恵袋はみなさん知ってますよね。Q&Aサービス自体は新しい物でもなんでもないので、説明はいらないと思いますが、士業との相性は抜群です。

士業の仕事は、依頼人が問題を相談するところから始まります。つまり、士業の仕事業務自体、Q&Aみたいな構造になっています。そこで、実際に「助けが必要な人」が質問して、「助けるスキルをもった人」(つまり士業プロフェッショナル)がその質問に答えれば、それ自体が士業プロフェッショナルのオリジナルコンテンツになるのです。ちかも、お題は実際に質問されているので、自分で「ネタ」を考えなくていいし、回答は少なくともその質問をした人には必要とされている情報です。

このQ&Aサービスは、通常の業務の延長線上のようなことをするだけで、自分オリジナルのコンテンツを配信できるし、答えられる質問の量だけ、配信できる「ネタ」があり、士業プロフェッショナルが定期的に無理なく情報配信できる仕組みになっています。

2.ソーシャル機能 

Q&Aだけだと「つながり」要素が低く、需要と供給の効率化が起こりにくいので、もう一工夫して、ソーシャル機能を追加します。これはツイッター、YouTube、Instagramなどに代表されるSNSアプリをイメージしてもらえたらいいです。

このソーシャル機能ですが、今回私が携わっているプロジェクトでは、簡単に「助けが必要な人」が好きな「助けるスキルをもった人」をフォロアーできる機能をつけます。

フォロアーすることで「助けが必要な人」は好きな「助けるスキルをもった人」の別のQ&A回答やその他のコンテンツが公開されたときにすぐ通知を受け取ることができます。また、より簡単に「助けるスキルをもった人」とのコミュニケーションが取れるようになります。

一方のフォローしてもらった「助けるスキルをもった人」は「助けが必要な人」がどのくらいいるのかが一目でわかり、自分の出した回答や他のコンテンツにどれだけフォロアーから反響があったのかなども一目でわかります。あと、フォロアーとのコミュニケーションもより深くすることもできます。

3.士業コンプライアンス

上の2つの特徴は新しいものではないのですが、既存のプラットホームだと士業特有の課題に対応していないのが現状です。

私も弁護士(アメリカですが、、、)なので、このようなプラットホームを運営するにあたって、弁護士会などが決めているルールや倫理上の問題に対するコンプライアンスは大切だと思っています。

そこで、プロジェクトのスタートからコンプライアンスを重視して、「助けが必要な人」も「助けるスキルをもった人」も安心して使ってもらえるサービスを提供していきます。

このようなコンセプトと機能を持った士業関係者専用の情報発信プラットホームが広く使われるようになれば、「誰に仕事を依頼していいのかわからない」ようなことにはなりません。「助けが必要な人」は、質問したり、「助けるスキルをもった人」の過去の回答やその他のコンテンツを見て、実際にどんな人物でどのような知識・経験を持った人かを前もって知ってから、仕事を依頼することができます。

プロジェクトはもう始まっています

実はこの士業関係者のための情報発信プラットホームプロジェクト、すでに試験段階に進んでいます。まだこれからどうなるかはわかりませんが、なるべく早く多くの士業プロフェッショナルさんに使ってもらえる必要不可欠なツールになれたらと思っています。

メンバーさん募集中

現在、コアメンバー3人と協力者20名弱の規模でテスト運営委しています。しかし、正式なサービスを開始するまでにはこれからやることがまだたくさんあります。

もしこのプロジェクトに興味があって、何らかの形で関わりたいというそこのあなた👉!!!

ぜひ私、野口剛史( koji.noguchi@gmail.com )まで連絡をください。

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