デザイン特許侵害とトレードドレス侵害の違い

デザイン特許もトレードドレスも「外見」を知財で守るという点では同じですが、似て非なるものです。デザイン特許は特許法で守られていて、トレードドレスは商標法で守られています。保護のベースになっている法律が違うので、「侵害」に対しても違いがあります。今回は、この違いについて簡単に解説します。

まず、デザイン特許はシンプルにクレームされているデザインに視覚的に似ているものであれば侵害の可能性があります。デザイン特許侵害の場合、デザイン特許で開示されている図と侵害が疑われているものの外見がどれだけ似ているかが焦点になります。

一方、トレードドレス侵害は、トレードドレスで守られている特定の商品やサービスが「どこから来ているのか」消費者が混乱してしまうような状態です。つまり、トレードドレスの侵害は、単に見た目がどれだけ似ているかにとどまらず、侵害を疑われている被告人がどの宣伝やマーケティングをおこなっていたかという情報も重要な証拠になります。

デザイン特許侵害とトレードドレス侵害に共通する点は、両方とも混乱を招く恐れ(likelihood-of-confusion )を考慮するところですが、元になっている法律が違うので侵害分析も異なり、侵害を証明するために必要な証拠も異なります。

知財訴訟の専門家である CAFC の判事でも、デザイン特許侵害とトレードドレス侵害を一部同じようなものとして扱ってしまう場合もありますが、デザイン特許とトレードドレスは全く別物だという認識を忘れないでください。

実務的には、製品やサービスによってはデザイン特許を取得した方がいいものもあるし、トレードドレスを取得した方がいいものもあります。また場合によっては、両方の保護を受けられることもあります。しかし、法律が異なるので、侵害の条件も異なります。侵害分析をおこなう際は、まず対象となる権利を特定し、それから侵害分析をすることをおすすめします。

今回の元記事は、OLCのウェビナーで商標について解説してくれたTammy Tanner 弁護士から教えていただきました。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:   Sarah Burstein. Professor of Law at the University of Oklahoma College of Law. Patently-O  (元記事を見る

ニュースレター、公式Lineアカウント、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

公式Lineアカウントでも知財の情報配信を行っています。

Open Legal Community(OLC)公式アカウントはこちらから

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

analysis-data-statistics
企業機密
野口 剛史

データと知的財産の交差点: 共有したいデータをどのように保護するか?

多くの場合、ビジネスデータは知的財産として特徴づけられます。しかし、クライアントと共有したりそのようなデータを公開することは知的財産の保護の観点で問題があるかもしれません。ある知的財産の不適切な早すぎる開示はビジネスに損害を与え、不利益をもたらす可能性があります。そこで、知財価値のあるデータの分類と知財保護対象のデータを共有する際の契約ポイントについて話します。

Read More »
契約
野口 剛史

Teslaに学ぶオープン&クローズ戦略

2014年、TeslaのElon MuskがTesla特許をOpen sourceにすると宣言しましたが、この宣言には様々な制約があります。業界に問わず知財の Open/Closed 戦略は重要課題であると思うので、今回はTeslaの特許 Open Source 宣言について詳しく見ていきたいと思います。

Read More »