知財訴訟の準備は、「武器」として使える知財の構築と競合他社の監視と分析。Freedom to Operateは状況によっては難しく、あまり意味のないもの。しかし、Freedom to Action、つまり知財侵害リスクも負えるほどの知財武器を持っていることが大切になっている。
ウェビナー概要

今回参加したウェビナーは、2019年8月29日にライブ配信されたものです。ウェビナーは録画されていて、IP Watchdogのウェビナーサイトでいつでも見れるようになっています。
ウェビナーに参加した感想
今回のウェビナーのタイトルは「訴訟準備」(Litigation Readiness)ということで、訴訟の上で重要なDiscoveryやprior art、claim constructionなどについて準備ができることを話すのかと思ったら、もっと根本的な普段やるべき基本的なことがいかに大切なのかを強調するいい意味で裏切られたウェビナーになりました。
Freedom to Action という考え方
面白かったのが、特許侵害を気にしていくらFreedom to Operateをやっても無駄で、それよりも、知財訴訟があってもそれに対抗できるぐらいの自社特許ポートフォリオを作っておくという考え方です。 Freedom to Action という考え方が大切で、 攻撃された時にどう反撃できるかを考えることが大切。 そもそも反撃できる武器はあるのかを常に考えて出願活動をするということが大切なのだなと改めて思わされました。
また、最近のトレンドとしては、NPEによる訴訟ではなく、競合他社や顧客、ベンダーによるスケールの大きい訴訟が多い傾向なので、業界内のプレイヤーのビジネスや知財活動を監視し分析する技術が重要視されてきています。
さらに、訴訟費用を出す会社も存在していて、そのような会社が重視するのは特許の数であり、1つの特許で権利行使をするよりもポートフォリオで権利行使を行う重要性を目の当たりにした。この考えだといくら「いい」特許があっても1つだけで行使するのではなく、なるべく関連する多くの特許を取って、ある特定の製品や技術に対して多角的な角度から権利化を行い、多くの特許を持っている必要性を感じました。
訴訟抑制のための特許ポートフォリオ化
今後、競合他社が自社を監視・分析してくるのであれば、自社特許のポートフォリオ化は知財部の最重要課題になってくると思います。自社主力商品に対する特許ポートフォリオが確立されていれば、Freedom to Actionができていることになるので、競合他社としても特許訴訟で牽制しづらくなるはず。逆に、自社主力製品に関する特許が数件しかなければ、競合他社による特許の権利行使を促す可能性があります。
日本企業の場合、アメリカに出願するには翻訳等費用がかさみますが、アメリカが重要な市場であるのなら、先行投資を行って、特許ポートフォリオをアメリカで築くことで、費用が膨大にかかるアメリカ特許訴訟の抑制とその準備につなげていくべきだと思います。
ウェビナー時のメモ
訴訟の準備。知財、特に「武器」として使える特許などを準備しておくこと。
Freedom to Operate:いつも必要ではない。技術エリアによってはOpinionを出すのも難しい。例えば4G技術のFTOなどはほぼ不可能。
Freedom to Action:商品を発表するだけの十分特許を所得している、または、クロスライセンスを得ていて、知財侵害リスクも負えるほどの知財武器を持っている
ランドスケープ調査:どのような技術が特許で守られているのか、地雷がどのエリアに集中しているのかを知ることで、潜在的なリスクを知ることができる、業界の流れをしることができる。
自社で開発した技術を特許で守ることは自社がコントロールできること
競合他社が自社を特許で攻撃してくるかは自社のコントロール下にはない
Freedom to Operateは、自社が特許訴訟に巻き込まれるか否かを見極めることではない。市場における自社の立場によっては、訴えられるし、侵害していても無視されることもある。
自社の技術を特許化して、いざというときに備える
訴訟を起こす前の準備
特許訴訟には莫大な資金が必要なので、資金源を確保することが大切。
特許訴訟保険に加入すべきか?特許訴訟資金を確保する1つの方法として保険を活用するべきか検討。Burford CapitalやGLS Capital、Soryn IP Groupなど特許訴訟の資金を提供する会社も数多く存在する。
Contingency で案件を受ける弁護士事務所も増えてきているので、弁護士事務所も資金の提供先になるかも。
第三者から訴訟資金を得るには、(1つの特許ではなく)ポートフォリオで訴えることが必要
クレームの多い少数の特許を得るべきか?それとも、クレームは少なくても多くの特許を得ることがいいのか?
出願費用的には、前者の方がよさそうだが、訴訟をする場合ポートフォリオで攻めるのが有効なので、後者の方が優れている。
クレームは方法、システムなど様々な方向性で取得すること。
差止を得るのは難しい。
Lost Profitsのポジションを明確にしておくことが大切。
議会で審議されているSTRONGER patentは、大きな改正ではなく、部分的に個別に法制化されるかもしれない。PTABへの規制が早期に来るかも。
特許訴訟の市場規模は全盛期に比べて減少、そのため特許訴訟事務所もリスクシェアーしてビジネスを成り立たせる動きがある。
全盛期はNPEによる小規模の訴訟が多かったが、現在は大規模な競合同士の訴訟が多い。
訴訟資金提供会社が見たいのはパッケージディール。自社でビジネスプランを提案しないといけない。
特許訴訟で訴えられる方ができる準備
特許訴訟保険に入るか?
競合他社の場合、カウンターはできるか?
Defensive patent groupsに加入しているか? RPX, ASTなど。NPTの対抗に有効。自社に必要なカバレッジを見極めることが大切。プランは個別に違う。
競合他社同士の訴訟が返り咲いているのが現在のトレンド。
サプライヤーや顧客を訴えるケースもある。ビジネスの条件を有利にすることが狙いか?
取得した特許の価値をマネージメントに示すための訴訟。
訴訟を起こしそうな競合他社を事前に特定(データなどで客観的に分析、特定)
Due diligence:事前に他者特許の分析を行うことが大切
予防は直すよりも格段に簡単
競合他社(特に脅威として見ている会社)の特許取得などはモニタリングするべき
しかし、実践している会社はすくない。
市場のポジションと知財バランスなどから、行わなければいけない特許訴訟リスクを見極め、事前に対策をとる必要がある。市場が動くスピードが早くなっているので、予防は大切。手遅れは死活問題になりかねない。先行投資をするべき。
Damages model assessment:申立人によって大きく変わる。NPT、競合他社、SEP, 部品、製品全体など多くのファクターに影響される。Worst、Likely、Bestなどのシナリオを想定する。常に行うべき。
最後の一言
自社の技術を特許で守ることがベストな訴訟対策。
競合他社の分析を怠らない。
事前対策は訴訟コストを落とすためにも必須。