
今回は、2019年7月に公開されたウェビナー動画を視聴してみました。題名は、Navigating License And Joint Development Agreements; Avoiding Litigationということで、共同開発に関わる知財リスクと訴訟リスクを中心に話していました。
IoTや自動運転などのトレンドで、社内で完結するのではなく、様々な社外のパートナーと手を組んで新しい開発や製品を作る試みが増えてきています。しかし、その一方で、知財の保有権が明確でなかったり、パートナーシップがうまくいかなくなり解散するときに訴訟が起こるなどの問題も急増しているのが現状です。
本格的にJDを進める際には専門の弁護士さんと共同で案件を進めていく必要がありますが、今回のウェビナーは初心者向けの内容になっているので、まだJDをやりたいけどどんな問題があるのかを知りたい人にはぴったりな教材だと思いました。
ウェビナーは主催事務所のBrooks Kushman P.C.のサイトからアクセスできます。スライドもPDFでダウンロード可能なので、便利ですね。
それでは、以下が簡単な私のまとめです。
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コーポレートの購買や販売とIP部門の連携が大切。得にソフトウェアとエレクトロニクス系の購買や販売には知財条項が関わることが多い。また、ソフトウェアはOpen source software license の問題もある。SEPの問題もIoTなどの発達で、今までSEPを扱ってきていなかった企業もSEPの対応が必要になってくる。
コラボレーションのスピードが加速している。このスピードに対応できる知財部門が必要。Joint developmentの最中に知財が積極的に関わり、後のパートナーとの訴訟を回避するべき。
Proprietaryにする情報の扱いに気をつける。
Indemnification and warrantyの文言に気をつける。
購買(Purchasing)に関わるライセンス
購買部門に対する知財教育が必要かも。データの使用なども含め様々な知財でロックインされるかもしれないので、ベンダーを変えられるようなポジショニングが大切。
Open sourceに対する正しい理解と会社としての対応を明確に。
SEPの問題、特にRoyalty stackingの問題に注意。
Joint developmentの際のIP保有者
出来れば、どちらかが保有し、もう一方がライセンスを受ける形がいい。共同で保有は避けた方がいい。また、契約解消の際に知財が問題にならないようにする。
モデル
Background IP:お互いにBackground IPは個々で保有。他社にライセンスが必要か慎重に協議するべき。
Foreground IP:共同開発でもたらされる新しい知財。3つのシナリオ。Aが開発、Aが保有し、Bがライセンスを受ける。その反対。AとBが共同で開発。この場合は、どちらかをオーナーにして、もう一方がライセンスを受ける形にするのがベスト。
すべての知財を考慮する
企業機密、商標、データなど。知財の特定だけでなく、保有や取り扱いも明確に。通常知財として扱われないContribution(スペック、見積もりなど)も所有権は自社にあることを明確にすることが以外に大切。
知財を譲渡する仕組みを明確にする
自動で譲渡?どう特許を譲渡するのか?
サンプル文言
Hereby assign とagree to assignは違う。自動で譲渡をするならhereby assignを使うべき。

Joint developmentに知財が参加するべき
なるべく早くプロジェクトに参加すること。IPの所有権はデベロッパーに任せるのではなく、知財が主導で行うべき。また、プロジェクトの最中に会議を定期的に行い知財の保有に対する議論をし、その記録をとる。
IPの問題が起こっても、お互いに共同開発をしている段階であれば、解決もしやすい。
よくある問題
Proprietaryなどのラベルに問題があるものが多い。正しくないときは事前に対応方法を考えておく必要がある。
サンプル

Open source Software (OSS)
ソフトウェア関連の案件はすべてOSSが関わると思っていい。
対応は難しくないが、正しく対応しないと大きなリスクが伴うことがある。OSSには様々なライセンスがあり、それぞれ異なった制限がある。
社内のOSS policy
最初に見つける。ないならば作るべき。
Policyや契約にはどのOSSライセンスが許されるのか、逆に、禁止されているのかを明確に。
契約には両社でOSSの担当者を指定する。
OSSの開示を要求する。
Standard Essential Patents (SEP)
規格に必要な特許。FRAND条件。問題はFRANDとは何か?誰がライセンスを受けられるのか?ロイヤルティーのベースとして適切なものは?交渉がまとまらなかったらどうなるのか?など問題がとても多く、複雑な問題。
Nokiaが多くのSEP訴訟を行っている。
FTC v Qualcommの概略
IP Indemnification
JDから新しいサービスや製品につながることもある。そうなるとIPに関するIndemnificationも重要になってくる。しかし、両社はindemnificationの必要性を理解しているが、どちらがどのような責任を担うかのバランスが問題。
また、契約書の文言が明確であることが必要。
サンプル

とても広いIP indemnification。Relating toという言葉はとても広い意味をもつ。Products and/or servicesも広く、どのようなものが含まれるのかを明確にした方がいい。
Indemnificationの例外
顧客のスペックに合わせた製品。顧客が改造をほどこしたもの。他のサービスや製品と合わさったもの。使用が契約以外のもの。これらは特に売り手の場合考慮する必要がある。
避けるべきもの
将来おこる事実によるindemnificationの文言。
Indemnificationに関する荒涼は積極的にするべき。
Exceptions to the exceptions
顧客側が例外に納得しない場合に提案される可能性がある。

Representations and Warranties
Indemnificationと同様R/Wも重要な部分。この部分もindemnificationと同様、両パーティーにおける十分な議論が必要。
NDA
誰がサインでき、誰が編集出来るのか、社内で明確なルールを作る。
Designationをするべきかしないべきか。Proprietaryなどは有効だが、使い方を間違えると管理が大変。
One way or mutual
Trade secretのステータスを維持するためには?
NDAのTerminationによってTrade secretのステータスを維持する義務はどうなるのか?NDAが終わっても、Trade secretのステータスを維持するための明確な文言をNDAに加えるなどの工夫が必要。
Covenants not to compete
最近のトレンドで増加傾向。
必要であれば適切なスコープを協議するべき。
広いスコープのcovenantsは訴訟リスクを増加させる。