USPTOのデータを用いて審査官の統計的情報を得られるサイトやサービスはたくさんあります。今回は、そのようなデータから一番権利化が難しい審査官ランキングをしている記事を見つけたので紹介します。アメリカの審査は、審査官による幅が大きいので、担当審査官の統計的データや個別案件の権利化にも役に立つ情報だと思われます。
統計データで審査戦略を行う時代に?
審査官の許可率(Allowance rate)を知ることは、特許審査の難易度を知る上で参考になる指標の一つです。なぜなら、審査官の過去の実績を把握することで、クライアントの期待に応えつつ、過去の傾向に基づいた審査戦略を立てることができるからです。
今回のランキングに用いたデータについて
リストを決定するために、2015年1月1日から2019年12月31日の間に100件以上の出願を審査した審査官の許可率を分析しました。この分析は、utilityとplant特許出願に限定し、デザイン特許、再発行、再審査、仮出願は除外しました。さらに、Supervisory Patent Examinersはこの分析から除外されています。この分析は、2021年3月に入手可能な公開データに基づいて行われました。
テクノロジーセンター3600は鬼門
10人の審査官のうち9人は、Alice判決による拒絶の影響を最も受けているテクノロジーセンター3600に所属している。 Scott D. Gartland審査官は、過去のランキングに4回登場しています。 Michael Sittner審査官は、前回のランキングで3回登場しています。 また、Jeffrey Piziali審査官は、2年連続でトップ10には入っていませんが、テクノロジーセンター2600で最も難易度の高い審査官であり、26.5%となっています。 これらの審査官は全員、USPTOに7年以上在籍している。 今回分析した約7,400人の審査官のうち、152人は許可率が25%未満、955人は許可率が50%未満でした。参考までに、USPTOの現在の平均許可率は75%です。
ランキンググラフは元記事で見てください。ワースト10の許可率は1.59%から8.54%の間です。
特許適格性の拒絶は今後少なくなってくる?
前USPTO長官のAndrei Iancu氏は、§101の改革をおこなっていて、特許適格性に関する新たなガイドライン(2019 Revised Patent Subject Matter Eligibility Guidance)を発表したり、精力的に活動していました。
この動きの成果か、Aliceを含めた特許適格性による拒絶が減少傾向にあります。この変化が今後のランキングに影響を与えるかは注目したいところです。
インタビューを効果的に使うと許可率が上がる?
審査官の許可率はあくまでも1つの指標でしかなく、この数字だけにとらわれるのはよくありません。
また、難しい審査官でもインタビューを効果的に使うことで、許可率が上がることもあります。今回のような審査官の統計的情報を得られるサイトやサービスでは、様々な指標や条件で審査官やアートユニットを分析できます。
個別案件レベルでの対応をより効率よく行うためにインタビューをするかしないかは重要な点になる場合も多いので、このようなツールで統計的にインタビューが効果的かを知っておくのもいいかもしれません。
参考文献:”The Most Difficult Examiners at the USPTO (2021)” by Danielle Hohmeier