USPTOがAIを使った特許検索をさらに進める

2021年米国特許商標庁(USPTO)は、特許出願の審査時に審査官が使用する人工知能(AI)ベースのプロトタイプ検索システムを開発しました。このAI検索システムは、関連文書の特定を支援し、審査官に追加の検索領域を提案することを目的としています。USPTOは、このプロトタイプで成功を収めたようで、特許審査官向けのPatents End-to-End (PE2E) 先行技術検索スイートにおいて、AIベースの「類似性検索」を開始しました。

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AIにより数秒で先行例文献の調査が可能に

USPTOの説明によると、特許審査官は、特許明細書を含むインプットを「類似性検索」機能に入力します。この機能は、AIモデルを使用して、審査中の特許出願に類似する米国および外国の特許文献を特定し、数秒以内に出力します。審査官は、分類情報を使って得られた結果を絞り込み、入力された特許明細書の特定の部分に焦点を当てて類似性検索を行うことができます。「類似性検索」機能は特許審査官が使用するものですが、その実装は出願人にも注目されるでしょう。USPTOの発表で、「類似性検索を使用して検索が行われた場合、包帯に記録された検索履歴に反映される」と述べています。

迅速に通常では見つけにくい文献も検索可能

最近実装されたAI「類似性検索」技術は、特にPE2Eで先に開始された「More Like This Document」機能との組み合わせにより、特許審査官が関連する先行技術を迅速に探し出し、できるだけ早い段階で審査に入れる確率を高めることができるはずと期待されています。そのため、出願人は、審査初期に最も関連性の高い先行技術に対応することで、実質的な審査開始から許可までの期間を短縮できる可能性があります。さらに、AIサーチシステムにより、審査官や出願人は、通常では見つけられないような先行技術を審査で考慮することができるため、新しく導入されたサーチシステムは、特許の質の向上につながると期待されています。

USPTOは、特許出願審査においてAIが果たす可能性のある重要性を認識しています。今回の「類似性検索」の開始は、その認識をさらに示すものであり、今後、AIがUSPTOの様々な活動にさらに組み込まれていく兆しとなる可能性があるでしょう。

参考文献:Artificial Intelligence (AI) Takes a Role in USPTO Patent Searches

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