USPTO's patent issuance timeline reduction impact, showing strategic changes in patent prosecution workflow

USPTO特許発行期間が短縮へ:特許実務への影響と対応策

はじめに

2025年5月13日から米国特許商標庁(USPTO)における特許発行プロセスが大幅に加速され、特許発行通知から実際の特許発行までの期間が約3週間から約1週間へと短縮されることになりました。この変更は、特許権者にとって権利保護の早期化というメリットをもたらす一方で、特許実務の現場では作業の見直しを迫るものです。特に継続出願やIDSの提出タイミングなど、これまでの実務フローを根本から見直す必要が生じています。本記事では、この重要な変更がもたらす影響と、日本企業および特許実務家が今から準備すべき対応策について詳しく解説します。USPTOのこの近代化施策は、デジタル時代における特許システムの効率化を象徴する動きとして注目されています。

USPTOの近代化取り組みの概要

USPTOは近年、特許審査・発行プロセスの効率化と近代化に積極的に取り組んでいます。今回の特許発行期間短縮もその一環です。これらの取り組みについては、USPTOのPatent Center特設ページで詳しく紹介されています。

特許発行プロセス加速化の背景

  • USPTO近代化イニシアチブの一環として実施
  • 電子特許付与(eGrants)システムとPatent Centerの活用によるペーパーレス化の推進
  • 冗長なプロセスの排除による効率化

USPTOは従来の紙ベースのプロセスからデジタル化への移行を進めています。Patent Centerを通じた電子特許付与(eGrants)の導入や、DOCX形式での出願推奨など、一連の近代化施策によって、特許発行プロセスの大幅な効率化が実現しました。

主要な変更点

  • 2025年5月13日より実施
  • 特許発行通知から特許発行までの期間を約3週間から約1週間に短縮
  • 従来の物理的な特許証の郵送から電子的な特許付与への移行

従来のタイムラインでは、特許発行通知を受け取ってから実際に特許が発行されるまで、約3週間の「バッファ期間」がありました。この期間中、特許実務家は継続出願の提出や情報開示書(IDS)の提出などの対応を行うことができました。しかし、新しいタイムラインではこの期間が約1週間に短縮されるため、特許実務家は迅速な対応を求められることになります。

特許実務への影響

USPTOの特許発行期間短縮は、特許権者と特許実務家の双方に大きな影響をもたらします。

権利者へのメリット

  • 早期の法的保護の確保
  • 市場投入の加速化
  • 特許権による競争優位性の早期獲得

特許発行の加速により、特許権者はより早く法的保護を受けることができます。これにより、製品の市場投入を早めたり、競合他社に対する競争優位性を早期に確立したりすることが可能になります。特に、技術革新のスピードが速い分野では、この数週間の短縮が大きな意味を持つ場合があります。

実務上の課題

一方で、特許実務家にとっては、これまでの実務フローの見直しが必要になります。

継続出願戦略への影響

  • 共同係属性(co-pendency)要件への対応
  • 継続出願、分割出願、一部継続出願のタイミングの見直し
  • MPEP §211.01(b)(I)の要件遵守のための戦略

継続出願は、親出願が特許発行または放棄される前に提出する必要があります。従来は特許発行通知後に約3週間の猶予があったため、この期間内に継続出願を提出することも可能でした。しかし、発行期間が約1週間に短縮されることで、この「安全マージン」が大幅に減少します。

特に重要なのは、MPEP §211.01(b)(I)で規定される共同係属性要件です。特許発行通知を受け取ってから継続出願の準備を始めると、発行日前に間に合わない可能性が高まるため、より慎重な出願戦略が求められます。

情報開示書(IDS)提出への影響

  • 特許発行後に発見された先行技術への対応
  • Quick Path IDS(QPIDS)プログラムの活用機会の減少
  • Office Action再開のリスク管理

特許発行前の最終段階で新たな先行技術を発見した場合、特許発行通知後であっても、発行日前であれば情報開示書(IDS)を提出することが可能です。しかし、発行期間の短縮により、この選択肢を活用する時間的余裕が減少します。

また、特許発行手数料支払後に先行技術を提出する手段であるQuick Path IDS(QPIDS)プログラムの利用機会も限られる可能性があります。発行までの期間が短縮されることで、新たな先行技術の発見から特許発行までの時間が短くなり、QUPIDSの利用可能性が減少するためです。

e-Office Actionプログラムとの関連性

  • プログラム非参加者への特別な注意事項
  • 特許発行通知受領前に特許が発行される可能性

USPTOのe-Office Actionプログラムに参加していない出願人の場合、物理的な郵送による特許発行通知が届く前に特許が発行される可能性があります。このようなケースでは、特許発行に気づかないまま継続出願の機会を逃してしまう危険性があるため、Patent Centerでの出願ステータスの定期的な確認がより重要になります。

実務家のための対応策

特許発行期間短縮に対応するため、以下のような実務上の対策が考えられます。

継続出願戦略の最適化

  • 特許発行手数料支払前または支払時の継続出願提出の重要性
  • 係属性維持のための代替戦略
  • クライアントとの早期コミュニケーションの必要性

特許発行期間短縮の最も重要な対応策は、特許発行手数料支払前または支払時に継続出願を提出することです。この実務は従来から推奨されていましたが、今回の変更によりさらに重要度が増しています。

継続出願を検討中のクライアントとは、許可通知(Notice of Allowance)受領後すぐにコミュニケーションを取り、継続出願の必要性を早期に判断することが重要です。また、係属性を維持するための代替戦略として、複数の出願を同時に進行させるポートフォリオ戦略も検討に値します。

情報開示管理の改善

  • 国内外の関連出願の定期的な監視
  • 特許発行手数料支払前のIDS提出の徹底
  • 新たな先行技術発見時の迅速な対応プロトコル

関連する米国出願や海外出願で新たな先行技術が引用された場合に備え、ポートフォリオ全体を定期的に監視する体制を整えることが重要です。特に、特許発行手数料支払前に可能な限り関連する先行技術をすべて開示するよう努めるべきです。

また、特許発行手数料支払後に新たな先行技術を発見した場合に迅速に対応できるよう、社内(所内)プロトコルを見直し、上記で紹介したQPIDSプログラムの利用手順を整備しておくことも有効です。

クライアントへのアドバイス

  • 特許ポートフォリオ戦略の見直し
  • タイムラインの明確な説明
  • 権利化とビジネス戦略の調整

クライアントには、USPTOの特許発行期間短縮がもたらす影響と対応策について明確に説明する必要があります。特に、継続出願を検討している場合は、新しいタイムラインに基づく意思決定フローを提案することが重要です。

また、権利化戦略とビジネス目標の調整も不可欠です。製品発売のタイミングや競合他社の動向を考慮し、早期の特許発行がもたらすメリットとリスクをバランスよく評価する必要があります。

まとめ

USPTOの特許発行期間短縮は、クライアントに早期の特許保護をもたらす一方で、特許実務家には戦略的な対応を求めています。特に継続出願の適時提出と情報開示管理の最適化が重要となります。この変更を機に、より効率的かつ戦略的な特許実務の構築が求められています。

特許発行通知から特許発行までの期間が約3週間から約1週間に短縮されることで、従来の「安全マージン」が大幅に減少します。特許実務家は、この新しい現実に適応し、クライアントの知的財産権を最大限に保護するための新たな実務フローを確立する必要があります。

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