米国特許庁が商標トロールに弁護士登録を使用させたとしてロサンゼルスの弁護士2名を懲戒処分へ

米国特許商標庁(USPTO)は、外国代理人、特に中国からの不正な商標出願が急増していることを問題視しています。その中には不正出願を何百件も行う商標トロールもおり、正規な出願の審査にも影響を与えています。今回は、そのような商標トロールに弁護士登録を使用させたとしてロサンゼルスの弁護士2名が懲戒処分されたニュースを伝えます。

制裁を受けた弁護士への最終命令:In the Matter of Elizabeth YangIn the Matter of Di Li 

US Counsel Ruleを作っても効果は薄かった

外国からの不正出願の対策として、USPTOは、外国からの商標出願に関してはアメリカの現地代理人を必須とするUS Counsel Ruleを施行しました。2019年9月に作成されたこのルールは、すべての商標出願人および登録者が商標出願のために米国に住所を持つこと、さらに重要なことは、商標出願および登録の際に代理人となる米国のライセンス弁護士を持つことを義務付けています。米国弁護士は、米国商標法およびUSPTOの規則を遵守する義務があり、ひいては不適切な商標出願の数を制限する必要があります。

しかし、U.S. Counsel Ruleがあっても、外国の商標トロールはその方法を変えており、U.S. Counsel Ruleを回避するために、アメリカの弁護士の署名、弁護士番号、事務所の住所を使って、粗悪で不適切な商標出願をすることを認めるよう弁護士を勧誘しているという現状があります。このような状況の中で、一部の米国弁護士は、名義貸しで簡単にお金を稼ぐことができることに誘惑されてしまいました。

名義貸しをした米国弁護士とその外国クライアントがUSPTOに処罰されることに

ロサンゼルスでは最近、2人の弁護士が外国人エージェントに自分の情報や署名を商標出願に使用させていたことが発覚しました。これらの弁護士は、商標の不適切な出願に目をつぶり、商標トロールが米国弁護士の必要な支援を受けずに何百もの出願をすることを許していました。

その1人であるLi弁護士は、外国代理人が自分の弁護士番号と署名で何百もの商標出願をすることを許可し、その報酬として毎月1000ドルから3000ドルを受け取っていました。またもうひとりのYang弁護士は、出願書類に自分の名前と弁護士番号を使用するためのレンタル料として、毎月1,500ドルの定額料金を受け取っていました。両弁護士は、クライアントの商標出願を審査しなかったことをUSPTOに認め、その結果、両弁護士とそのクライアントはUSPTOから制裁を受け懲戒処分を受けました。

米国弁護士は、米国商標の完全性を保護するために、クライアントを代理し、USPTO の商標法および規則に準拠した出願を提出するための最低限の要件を満たすために、勤勉であることが求められます。弁護士が最も基本的な要件を満たせない場合、USPTOは調査し、公に非難し、その弁護士を保護観察に付すことができますし、また今後もそうするでしょう。

今回の結果、Li弁護士は12ヶ月の保護観察処分を受け、USPTOと定期的に連絡を取り、規則や規制を遵守していることを確認しなければならなくなりました。Yang弁護士もまた、厳しい処分を受けました。彼女は、USPTOでの業務を30日間停止され、正当なクライアントやビジネスに適切に対応することができなくなり、12ヶ月の保護観察期間となりました。

また、Office of Enrollment and Disciplineは、これらの弁護士が直面した業務停止や執行猶予について、他の連邦機関や州の弁護士会に通知することもあり、これがさらなる厳罰につながることもあります。

不正行為に対する厳しい考え方

USPTOは、不正行為に対してゼロ・トレランス・ポリシーを採用しており、弁護士の意見を聞かずに商標を出願するという不正な行為に従事してUSPTOを欺こうとした疑いがある弁護士またはビジネスに対して調査および制裁を行います。このような行為に関与した企業が摘発された場合、その企業もUSPTOアカウントの無効化、USPTOとの業務提携の禁止、商標登録や出願の停止などの制裁を受けることになります。

USPTOのU.S. Counsel Ruleは今後も継続されるので、商標トロールも不正を手助けする弁護士も、不正な商標出願の取締から逃れられなくなったという現実に直面する必要があります。商標登録はビジネス上大切な手続きであり、商標の価値を維持するためにそのように扱われる必要があります。ブランドは企業の中核的なアイデンティティを表し、その保護がなければ、何千もの一般的な企業が被害を受けることになります。

アメリカにおける商標出願を行う際は、アメリカの現地代理人が制裁を受けていないかUSPTOの懲戒処分決定のページを必ず確認してください。

参考文献:USPTO Disciplines Two Los Angeles Attorneys for Allowing Trademark Trolls to use their Bar Registrations

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