アメリカ特許庁が期限延期を発表

CARES法の多くの規定の中で、米国特許商標庁(USPTO)に、法定期限を一時的に修正する権限が与えられたことは前回OLCで取り上げました。今回はその権利を活用し、USPTOは遅延がCOVID-19に起因するものであることを条件に、一時的に30日の期限延長を行いました。

商標に関する正式な発表はこちら

特許に関する正式な発表はこちら

COVID-19に起因する遅延を特定するために必要なもの

商標と特許の場合、遅延の原因がCOVID-19であるということは、出願人、登録者、弁護士、または出願に関係するその他の人が、発生の影響を個人的に受けたことを意味します。具体的には、オフィスの閉鎖、資金繰りの問題、ファイルやその他の資料へのアクセス不能、出張の遅延、個人的または家族の病気、またはCOVID-19のアウトブレイクが適時出願に「重大な支障をきたした」場合を意味します。

商標30日延長の詳細

3月31日、USPTOのAndrei Iancu長官は、3月27日から2020年4月30日までの間にある以下の商標の期限を、COVID-19パンデミックによる遅延である旨の理由を出願に含めることを条件に30日延長する通知を発行しました。

商標の期限は、以下のすべてに関連しています。

  • 不服申立通知を含む事務処理への対応
  • 利用明細書または利用明細書の提出期間の延長
  • 異議申立の通知または申立期間の延長請求
  • 第44条(d)項または第67条に基づく出願の優先提出基準
  • 米国への保護の延長の70条(c)に基づく米国出願への変換
  • セクション8の宣言
  • 第9節 更新
  • 第71条(a)に基づく使用または弁解可能な不使用の宣誓供述書

COVID-19が他のTTAB出願を妨害した場合、当事者は、適切な場合には、延長または再開のための要求または申立を行うことができます。最後に、放棄された出願を復活させたり、取り消されたり期限切れになった登録を復活させたりするための既存の手続きは、USPTOによって以前に放棄されていた手数料とともに引き続き行われます。

特許30日延長の詳細

さらに同日、Iancu長官は特許の期限についても同様の通知を出した。2020年3月27日から4月30日までの間にある以下の特許の期限を、出願にCOVID-19パンデミックによる遅延である旨の説明が含まれていれば、30日延長されることになります。

  • 小規模または零細企業が審査前処理中に発行した官庁通知への回答(Reply to office notice issued during pre-examination processing by a small or micro entity)
  • 審査・特許公開処理中に出された官庁通知やOAへの回答 (Reply to office notice or action issued during examination or patent publication processing)
  • 発行手数料
  • 控訴の通知(Notice of appeal)
  • 控訴または答弁書(Appeal or reply brief)
  • 控訴転送料(Appeal forwarding fee)
  • 特許審判不服審査会に対する口頭審理の請求(Request for oral hearing before the Patent Trial and Appeal Board)
  • 試験官代理の回答への対応(Response to substitute examiner’s answer)
  • 新たな拒絶理由を含むと指定されたPTABの決定に対応して公訴を再開する場合、または再審請求する場合の修正(Amendment when reopening prosecution in response to, or request for rehearing of, a PTAB decision designated as including a new ground of rejection)
  • 小規模または零細事業体が提出した維持費(Maintenance fee, filed by a small or micro entity)
  • 37 CFR§41.52に基づくPTABの決定の再審請求(Request for rehearing of a PTAB decision under 37 CFR §41.52)

COVID-19のために2020年3月27日から4月30日までの間に予定されていた、または予定されていた出願が遅延していることを確認する請求があった場合、PTABは以下の事柄について30日間の延長も認めます:

  • 37 CFR§41.125(c)、41.127(d)又は42.71(d)に基づくPTABの決定の再審理の請求(Request for rehearing of a PTAB decision under 37 CFR §§ 41.125(c), 41.127(d) or 42.71(d))
  • 裁判長への陳情 (Petition to the chief judge)
  • 37 CFR第42.107条若しくは第42.207条に基づく特許所有者による審判手続における予備的応答又は関連する応答出願(Preliminary response in a trial proceeding by patent owner under 37 CFR §§ 42.107 or 42.207 or any related responsive filings)

解説

先週の記事の時点ではまだ期限延期の処置が取られるかわからない状態でしたが、法律が成立して早速、延期の処置を行いましたね。でも、特許に関しては、以外にsmall or micro entityだけに限定されているものもあるので、実際に活用する場合は事前に公式の案内を読み、ちゃんと適用されることを確認してからの方がいいですね。

あと、すべての条件に「COVID-19パンデミックによる遅延である旨の説明が含まれていれば」と書いてあるので、理由についても事実に基づいた説明をする必要があります。特許庁での審査に関しては事実の確認を求めることはないと思いますが、訴訟の時に問題になる可能性があります。

今回の期限延期の処置を活用する場合においては、遅延の理由を裏付けるデータやメモなども社内で案件とひもづけされた形で保管しておくことをおすすめします。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者: Philip A. Jones. Barnes & Thornburg LLP  (元記事を見る

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