特許庁長官が出願やOA対応などの期限を調整可能に

アメリカでは国家緊急事態法などの新型コロナウイルス(COVID-19)に対応する様々な法案がとてつもないスピードで可決されています。その中に特許庁長官に期限を調整する権限を与えたセクションがあったので、その概要と共に実際に提出期限の延長が行われそうかを考えてみます。

概要

可決された新型コロナウイルス(COVID-19)に関する緊急法案のセクション(Section 12004 of the Division B-Emergency Appropriations for Corana virus Health Response and Agency Operations)において、米国特許商標庁 (USPTO) の長官に、米国法典第 35 章、商標法、またはそれに基づいて公布された規則によって設定された「期限の短縮、放棄、調整、または修正」を行う権限が与えられました。与えられた権限は、長官が以下の場合において緊急事態だと判断している期間有効です:

  • USPTOの機能に重大な影響を与える場合
  • 出願人、登録者、特許権者、その他USPTOに出頭する者の権利を害する場合
  • 出願人、登録者、特許権者、その他の者がUSPTOに書類や手数料を提出することを妨げてしまう場合

長官は、期限の変更が適切であると判断した場合、その旨の通知を公表しなければならず、緊急事態期間には、COVID-19による2020年3月13日の国家緊急事態法に基づき大統領が宣言した緊急事態の一部の期間が含まれます。

上げられた3つの緊急事態は起こるのか?

1つ目のUSPTOの機能に重大な影響を与える状況については、長期化または拡大された自宅待機命令(stay-at-home orders)にUSPTOがどのように対処するのかがまだ不明です。しかし、USPTOは以前から積極的にテレワークプログラムを実施していた部署なので、リモートで仕事をすることに対しての対応はできています。例えば、2018年度のテレワーク年次報告書(年次報告書)には、テレワークプログラムを利用しているUSPTO職員11,093人が記載されています。同じレポートにも、作業効率がオフィス勤務の際とリモートワークではあまり大差ないという報告もあるので、今後自宅待機命令(stay-at-home orders)が長期化または拡大されたとしても、USPTOの機能に重大な影響を与える状況とはならないと思います。

次に、COVID-19緊急事態が、出願人、登録者、特許権者などの権利をどのように害しているかについてですが、特許庁長官がこの被害をどのように評価するかは明確ではありません。出願人の立場を考えた場合、今回の自宅待機命令などで、オフィスに行くことができず、発明者との連絡や、出願に必要な情報を得ることが難しくなっているのは事実です。また、特許庁に提出する書類の中には発明者の署名が必要なものもあり、必要な書類を準備するのが困難な場合もあります。

USPTOはリモートワークの準備は整っていてちゃんと機能しているとしても、今回の新型コロナウイルスの発生は、様々な出願人、登録者、特許所有者、その他の人たちに不利益を与える可能性があります。したがって、特許庁長官は、これらの現状を考慮し、特定の時期の期限を変更したり、放棄したり、調整したり、修正したりする可能性があります。そのような措置がなされた場合、USPTOからの発表があるので、期限の変更があるかモニタリングをすることが大切です。

解説

ニュースなどで聞く範囲では全く話題になっていなかったので知りませんでした。これまでにUSPTOから期限の延長などの通知がなかったのは、長官に権限がなかったからなのかもしれません。

しかし、権限があるからすぐに特許庁長官が出願やOA対応の期日を延長するとは考えられません。上でも話されているように、USPTOはリモートワークに積極的な政府機関でかなり前からリモートワークを活用してきました。その結果もあってか、特にリモートワークによって仕事が滞っているという話は聞きません。なので、今回の自宅勤務によりオーバーキャパシティで対応できないということはなさそうです。しかし、これから感染者の増加や企業の資金繰りの悪化などで、出願人、登録者、特許権者などの権利が害する場合、または、出願人、登録者、特許権者などがUSPTOに書類や手数料を提出することを妨げてしまうような場合になってしまった場合、長官による何からの期限を猶予する措置が取られる可能性があります。

OLCでもUSPTOからそのような措置があった場合、記事として取り上げるので、まだの人はニュースレターの登録をお願いします。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者: Derek B. Lavender. Taft Stettinius & Hollister LLP  (元記事を見る

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