今まで減少傾向にあったアメリカにおける特許訴訟が2020年に増加しました。前回リーマンショックがあったときは、その数年後に営業秘密事件がものすごく増えましたが、コロナ禍でも特許訴訟の増加が懸念されていました。今回はその懸念が現実化したことが言えると思います。今後もアメリカにおける特許訴訟は増加するのであれば、日本企業も訴訟に備えて準備を整えておいたほうがいいかもしれません。
2020年、特許訴訟は増加した
2020年は波乱と予期せぬ出来事の多い年でした。多くのビジネスが1年を通して苦戦した一方で、特許訴訟は全体的に増加しました。Docket Navigatorによると、2020年は2015年以降、初めて年間の特許訴訟総数が増加した年でした。
2018年および2019年と比較して、2020年は地方裁判所における特許訴訟の新規手続きが約400件増加しました。また、新たな特許訴訟に関わる当事者の数も増加し、約4,000人の当事者が増え、2019年から2020年にかけて、約3,000件の特許告発が増えました。
争う裁判地にも変化が
地方裁判所の新規申立件数については、合計で12%の増加となりました。また、地方裁判所間の分布も変化しています。
最も多くの特許事件を取り扱っている地方裁判所に提出された特許告発は、2018年以降、年間で約30パーセント増加しました。ただし、年間で最も多くの特許事件を取り扱う裁判地(venue)では、デラウェア州の米国地方裁判所(the U.S. District Court for the District of Delaware)からテキサス州西部地区の米国地方裁判所(the U.S. District Court for the Western District of Texas)にシフトしています。
テキサス州西部地区では、2019年から2020年にかけて訴訟件数がなんと199%も増加しました。注目すべきは、事件数が大幅に増加しているにもかかわらず、最も多忙な特許裁判所が、カリフォルニア州中央地区を除いて、過去数年間と同様のタイムラインを維持することができたことです。
2020年、IPRは減少
2020年は、米国特許商標庁への当事者間レビュー(IPR)の申立件数が過去最も少なくなりました。 依頼数が少ない一方で、IPRの和解率も最も低くなっています。さらに、IPR開始率(institution rate)は、過去8年間で最も低くなっています。そのうち、最もIPR開始率が高かったのが化学や電気・コンピュータを主題とする特許についてです。
参考文献:”2020 Patent Litigation: Year in Review” by Derek M. Freitas. Baker & Hostetler LLP