2008年金融危機で起きた営業秘密事件の波から学ぶこと

新型コロナウイルスの影響で2021年、2022年から営業機密訴訟は増えるのでしょうか?増えるとしても、自社が訴訟に巻き込まれないように対策を取ることができます。本格的な対策ができていない企業は情報漏洩対策を今からでも行うべきでしょう。

2000年代後半の世界的な金融危機に端を発した営業秘密訴訟の急増は、企業に営業秘密の盗難や紛争についての厳しい教訓を与えました。世界的なコロナウイルスの大流行による新たな景気後退にすでに浸っていますが、企業は自社の秘密を守るために多くの行動を取ることができます。

簡単な先制措置をとることで、秘密の盗難を抑止し、高額な法廷闘争の可能性を最小限に抑えることができます。ブルームバーグ・ローが収集したデータによると、金融システムがメルトダウンした後、2007年から2009年の間に提出された訴訟と比較して、2010年代半ばには、州および連邦政府の営業秘密訴訟の件数が8倍以上に増加しています。

誰が重要な秘密にアクセスできるかを把握し、その使用方法を監視することは、確実なスタートとなります。企業は、従業員が業務に関係のない秘密情報のファイルを見たりダウンロードしたりするなど、異常な行動がないかどうかを監視する必要があります。技術的な安全策としては、従業員が他のデバイスにデータを転送できるようにUSB接続ポートをオフにしたり、ファイル共有ウェブサイトに情報をアップロードできないようにブロックしたり、場合によっては職場での個人的なEメールアカウントへのアクセスを制限したりすることが挙げられます。

雇用契約に秘密保持契約を含めることも同様に重要です。従業員が自発的またはその他の理由で退職する場合、企業は、退職する従業員が機密情報を保有しておらず、契約の条件を遵守する意思があることを書面で確認する必要があります。

これらの簡単なステップを踏むことで、企業が重要な営業秘密を管理し続けることができるようになります。

解説

新型コロナウイルスの影響で多くの業界で景気が後退してますが、この景気後退が営業秘密事件の急増を引き起こすかもしれません。

2007年から2009年の間に提出された訴訟と比較して、2010年代半ばの営業秘密訴訟の件数が8倍以上に増加しているというのは注目するべきでしょう。

当然、まだコロナ後に不景気が続くかもわかりませんし、原因も2008年とは当然異なります。2008年は金融破綻で新型コロナは自然災害です。また、2016年にはDTSAという連邦レベルでの企業機密保護法が成立し、法律の面でも整備が行われ、2008年に比べると、企業におけるセキュリティに関する認識も高まり、情報漏洩や不正アクセスを取り締まるツールも多く存在します。

しかし、コロナでリモートワークが進み、会社の外から社内の情報にアクセスしやすくなりました。セキュリティと利便性は半比例する性質(セキュリティを高めると不便になり、セキュリティを緩めると利便性が増す傾向)があるため、今回のリモートワークが起因となり、企業機密の訴訟が増加するかもしれません。

企業機密の訴訟がどう変わるかまだわかりませんが、リーマンショック時も2年ほどの遅れがあるので、この「予言」が正しいかを研修するにはもう少し待つ必要があります。

また、自社の企業機密を保護するためにできることはたくさんあります。まだ本格的な対策ができていない企業、または、追加の対策を検討している場合は、元記事で紹介されている対策を参考にするか、Open Legal Communityのブログを参考にしてみてください。

質問:新型コロナウイルス後に企業機密訴訟は増えると思いますか?増えないでしょうか?その理由も含めて、コメント欄で答えてみてください。

TLCにおける議論

この話題は会員制コミュニティのTLCでまず最初に取り上げました。TLC内では現地プロフェッショナルのコメントなども見れてより多面的に内容が理解できます。また、TLCではOLCよりも多くの情報を取り上げています。

TLCはアメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる今までにない新しい会員制コミュニティです。

現在第二期メンバー募集の準備中です。詳細は以下の特設サイトに書かれているので、よかったら一度見てみて下さい。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Adam P. Samansky and Nicholas W. Armington. Mintz(元記事を見る

ニュースレター、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

特許出願
野口 剛史

特許動向レポート2022:特許の目的、価値、保護、技術に関するグローバルな考察

知財に強いアナリティクス企業Clarivateが2022年の特許動向レポートを公開しました。国際的な知的財産を効率よく活用していくには、グローバルな視点で特許の動向を見極めることが必要です。このレポートでは世界中の275人のIPおよび特許の専門家に意見を求め作成されました。

Read More »
ビジネスアイデア
野口 剛史

コロナ禍で学生・新米がコネを作る方法

コロナで就職活動も大きく変わりました。会社や事務所で行われていた説明会はなくなり、同業者の勉強会やイベントもオンラインにシフトしました。オンライン化することで便利になった面もありますが、知財業界に知り合いがいない学生や知財に入ってきた新米が「新しいコネ」を作るには非常に難しい環境になっています。そこで、どうやってコロナ禍で学生・新米がコネを作るべきかを考えてみました。

Read More »