ハッシュタグがもたらす商標の落とし穴

2017年7月、USPTOは商標に関する新しいガイドラインを発行し、商標案件を「単なる情報提供」( ‘merely informational matter’)として拒絶できるようにしました。このガイドラインが発行されたタイミングは、アメリカ大統領のトランプ氏が “covfefe” をツイートした時期に偶然に一致し、事実、このツイート後数時間の内にあらゆるものに関して“covfefe”の商標が申請されていました。このガイドライン発行後、ツイッターの文字制限が大幅に増え、#MeToo(セクハラに関するムーブメント) や#TakeAKnee(差別に関するムーブメント)というハッシュタグがソーシャルメディアで大体的にシェアーされました。

ソーシャルメディアを使ったバーチャルマーケティングは増えてきていて、一般的なマーケティングでも社会的な事柄や政治的なメッセージを含むものも多くなってきました。その中で、「単なる情報提供」( ‘merely informational matter’)と思われるような商標出願も増えているのが事実です。

単なる情報提供とは?

では、どのようなものが「単なる情報提供」( ‘merely informational matter’)なのでしょうか?特許庁は以下のような説明をしています。

“when, based on its nature and the context of its use by the applicant and/or others in the marketplace, consumers would perceive it as merely conveying general information about the goods or services or an informational message, and not as a means to identify and distinguish the applicant’s goods/services from those of others.”

具体的な例を見てみると、以下の言葉は特許庁で「単なる情報提供」( ‘merely informational matter’)として拒絶されました。BOSTON STRONG, I ♥ DC また ONCE A MARINE, ALWAYS A MARINE。 このようなマークは共通する理念へのサポートや帰属などを示すものです。しかし、使用されている言葉が一般的すぎるとそもそも商標の機能であるブランドの特定ができなくなってしまいます

このように、一度サポートするメッセージがソーシャルメディアで取り上げられ、広く拡散された場合、注意が必要です。Massachusettsを拠点とするBOSTON STRONG FITNESS GROUPというフィットネスを行う会社がありますが、2013年のボストンマラソン爆弾テロ事件に使われたBOSTON STRONGというハッシュタグの影響で、特許庁はBOSTON STRONG FITNESS GROUPの商標出願を拒否しました。

ハッシュタグを使いソーシャルメディア等で顧客とのつながりを高めるのはいいのですが、そのような活動で幅広く使われるハッシュタグが出てきた場合、そのようなハッシュタグは商標にできない可能性があります。また、そのような広く使われているハッシュタグに対して商標を申請することは批判を浴びることもあります。例えば、#MeTooを商標として取得しようとした会社には大きなバッシングがありました。

まとめ

ソーシャルメディアやハッシュタグを使ってマーケティングを行ったり、社会的、または、政治的なムーブメントに同調して顧客との親密性を確立するのも現代における有効なマーティンテクニックです。しかし、そこからは有益な商標は得られにくいので、会社としてはそのようなマーケティングとは別に、しっかりとした商標を持ち、ブランドを高めていく活動も必要になってきます。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Emily Rohm Billig. Baker Donelson Bearman Caldwell & Berkowitz PC (元記事を見る

OLCの米国知財ニュースレター

最新まとめ記事を
毎週メールボックスにお届け

登録すると、週1回、最新まとめ記事の概要とお知らせを受け取ることができます。

コメントする

追加記事

arrows-go-up
再審査
野口 剛史

Federal Circuit PTAB Appeal統計(2018年9月15日現在)

CAFCにおいてPTABから上訴された案件が是正されるのは4件中3件。PTABよる判決が一部棄却、無効になる案件は4件中1件。これが現在の統計データです。当然、個別案件がどう扱われるかは案件の事実や判決内容、手続き等によって変わりますが、統計的には上訴しても全体の75%の判決は変わらないことを覚えておくといいでしょう。

Read More »