トレードドレスの基礎知識

商標(trademarks)に加え、トレードドレスというものがあります。商標はは会社のブランドに関するものですが、トレードドレスは商品の外見やパッケージを保護するものです。多くの会社がパッケージングで差別化を図っていて、消費者もパッケージングで企業を特定する場合も多くあります。また、トレードドレスはレストランやお店などの特定のブランドに関連する建物のデザインにも適用することができます。

商品を売る際に一番シンプルな方法は市販のボックスにロゴや社名などを付けて売ることです。知財の観点から見ると、ロゴや会社名は商標で守られていますが、ボックスはどこにでもあるものなので、そのパッケージングに対する保護はありません。しかし、パッケージングをよりユニークなものにして、特定の形や素材を用いることで、トレードドレスの保護が得られる場合があります。このユニークなパッケージングが消費者に認識されれば、ロゴや会社名などを確認しなくても、そのユニークなパッケージングによりブランドが理解され、他社との差別化が図れます。

法律・判例

アメリカでは、トレードドレスの保護は商標に由来していて、Lanham Actという商標に関する法律の上で成り立っています。15 U.S.C. § 1125(a) (2016) and the Trademark Manual of Examining Procedure (TMEP), § 1202.02 (2017). また、TMEPにおいて、トレードドレスの保護対象は現在では、商品のデザインにも広がりました。また、トレードドレスを定義した判例もあります。(trade dress as a product’s “total image” or “overall appearance” and “may include features such as size, shape, color or color combinations, texture, graphics or even certain sales techniques.” John H. Harland Co. v. Clarke Checks, Inc., 771 F.2d 966, 980 (11th Cir. 1983))。

トレードドレスの例

一番有名なトレードドレスで守られたパッケージングはコカコーラのボトルです。コカコーラのボトルは独特な形状をしています。コカコーラのボトルはたとえコカコーラのロゴや社名、製品名が明記されていなくても、その独特な形状からコカコーラだと認識できます。また、コカコーラはその形状に関してトレードドレスを取得しているため、競合他社は同じ(似た)形状のボトルを使うことはできません

建物の例では、Taco Cabanaがあります。実は、この建物に関する争いをきっかけにアメリカではトレードドレスが認められるようになりました。Two Pesos, Inc. v. Taco Cabana, Inc., 505 U.S. 763 (1992)

また、バスなどの乗り物にも適用できます。例えば、The Rideというニューヨークでエンタテインメントを行っている会社は、自社のバスの外見に関するトレードドレスをアメリカだけでなく、その他の国でも取得しています。(The United States Trademark number 5,367,214).

トレードドレスの取得

トレードドレスの出願方法は商標の取得方法に似ています。条件は同じで、トレードドレスの場合、保護対象が独特で機能的ではない(non-functional)ことが必要です。それ以外は審査方法も条件も同じです。また、商標と同じで、登録していなくても、顧客の観点から二次的な意味(secondary meaning)が備わっていれば、その地域におけるトレードドレスの保護が得られます。しかし、トレードドレスを登録しておけば、二次的な意味の証明をせずに、アメリカ全国における保護が得られます。

デザイン特許との違い

デザイン特許もトレードドレスもデザインを守るためのものです。なので、ものによっては、トレードドレスも、デザイン特許も両方取得できることができます。しかし、トレードドレスの場合、商標から派生したものなので、機能的なものは保護の対象にはなりません。( “if a feature of the trade dress is ‘essential to the use or purpose of the article or if it affects the cost or quality of the article,’” the feature may not be part of a protected trade dress. (TMEP § 1202.02(a), citing Qualitex Co. v. Jacobson Prods. Co., 514 U.S. 159, 165 (1995)). 似たように、デザイン特許は、新しく、オリジナルで、装飾上のデザインを守るものです。デザイン特許も装飾上のもの、機能的ではないものを保護するので、デザイン特許の存在をトレードドレスを登録する際の証拠として使うこともできます。 TMEP § 1202.02(a)(v)(A) (2017).

まとめ

独特なパッケージングを開発するために投資をすることで、売り上げやブランド力の向上につなげることができます。また、パッケージングの見た目で競合他社の製品と差別化することもできます。また、そのパッケージングをトレードドレスで守れれば、他社はまねができません。このようにパッケージングをトレードドレスで守れれば、ブランド力の向上が図れ、売り上げや、値段の維持などにも貢献することが期待されます。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者: Tammy Tanner. Trusted Counsel(元記事を見る

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2件のフィードバック

  1. もう7年ほど前になりますが、前職の時に模倣品対策の一環で米国のトレードドレスを取得しました。当時、日本の企業で初めてではないかと言われました。
    事前に手続などを調べたときに想像していたよりも、簡単に取得できました。

    1. トレードドレスはあまりメジャーではありませんが、使い方によっては十分模倣対策の一環として使えるツールになりますね。比較的簡単に取得できたということで何よりです。

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