最高裁が .com 商標の審議へ

一般的な用語と.comなどのトップレベルドメインの組み合わせは、商標の保護の対象になるのか? 最高裁で議論されることになりました。この判決次第では、自社の .com ブランドを大々的に用いている企業に大きな影響をおよぼすことが考えられます。

2019年11月8日、アメリカ連邦最高裁が Booking.com の商標保護に関して、最高裁で審議することに合意しました。

経緯

Booking.comはオンライン旅行会社です。Booking.comは2012年にスタイル化したBooking.comの商標出願を行いました。しかし、USPTOはそのようなマークは一般的だという理由で出願を却下、その後、the Trademark Trial and Appeal Board (“TTAB”) でも却下されました。TTABにおける拒絶理由は、bookingという言葉は旅行に関するチケットやホテルの手配や予約という意味を持っていて、.comが追加されても、ソース元の特定や意味に変化をもたらさないというものでした。

しかし、Booking.comは諦めずに、the United States District Court for the Eastern District of Virginiaに上訴します。そして、2017年、地裁はTTABでの判決をひっくり返します。

提出された証拠を総合的に評価したところ、顧客へのアンケートなどから、顧客はドメイン名をブランドと認識する傾向があるので、ドメイン名を商標でも保護するべきである、また、.com が加わることでソース元を特定でき、secondary meaningを示す証拠があれば、本来商標にならないgeneric mark を商標にもなりえる descriptive markへと変えうるという見解を地裁は示しました。

この地裁の判決を、The Fourth Circuitも支持しました。しかし、HOTELS.COM, LAWYERS.COM, やADVERTISING.COMに対して商標保護なしという見解を示したthe Federal や Ninth Circuitsなどの他の連邦高裁の判決と正反対の見解を示したので、いわゆるcircuit splitという現象を起こし、今回の最高裁における審議への決定に至りました。

最高裁の判決に注目

アメリカの商標法では、一般的な用語(generic terms)は商標では保護できません。これは、1つの企業が不当に業界で使われている一般的な用語を独占しないようにするためです。つまり、Bookingという旅行業界では一般的な用語はどんなに頑張っても商標として所有することはできません。

しかし、商標の審査では、出願されたマークの部分部分を分けて見るのではなく、出願されたマーク全体を考慮して審査する必要があります。つまり、トレードマークというのは、成り立つ部分の集まり以上のもので、マーク全体がもたらす商業的な印象が重要になってきます。ということは、Bookingでは商標にならなくても、Booking.comの場合、その是マーク全体を考慮することで商標保護の対象になってもいいと考えることができます。

このBooking.comの案件がどう最高裁で審議され、最終的な判決が下されるのかは注目です。判決内容次第では、既存のビジネスだけでなく、今後のオンラインブランドへの投資やマーケティング方法にも大きな変化をもたらす可能性があります。

最高裁は来年の春ごろに法廷での審理を行い、2020年の半ばに判決を下すと思われます。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Crystal Caldera, Bobby Ghajar and Rose Kautz. Cooley LLP (元記事を見る

ニュースレター、公式Lineアカウント、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

公式Lineアカウントでも知財の情報配信を行っています。

Open Legal Community(OLC)公式アカウントはこちらから

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

money
訴訟
野口 剛史

ケーススタディ:マルチカメラ装置の特許価値評価(損害賠償)事例

2022年度から2021年11月末まで(2021年10月1日から2021年11月30日まで)の付与後願書(post-grant petitions)の institution率は66%(Institution許可138件、却下71件)であり、前年度の59%から大きく低下しています。特許庁によると、申立ごとではなく特許異議申立ごとで見ると、これまでの2022年度の institution率は69%(Institution許可135件、却下60件)でした。直近8月の申立単位でのは institution率は80%(Institution許可70件、却下17件)。

Read More »
訴訟
野口 剛史

和解には注意?同じ特許でも立場が異なるとCAFCへの上訴ができなくなるかも

同じQualcommの特許に関して別々にIPRをおこなっていたAppleとIntelのCAFCに対する上訴手続きが全く異なる結果になってしまいました。訴訟になっていたものの、すでにライセンス契約に至っていたAppleに対してはCAFCへの上訴を認めず、訴訟の当事者ではなかったIntelには上訴を認めるという結果に至りました。今回は判断の違いに着目して立件資格(Standing)について考察します。

Read More »