CAFCが上訴中の訴訟案件に対するSAS判決の影響に言及

最高裁によるSAS判決以降、 PTAB における案件の負担が急増し、 PTAB から CAFC に上訴された訴訟案件が数ある中、 CAFC がどのように上訴中の訴訟案件に対するSAS判決の影響に言及するかが注目されています。今回、 CAFC は、PGS Geophysical AS v. Iancuにおいて、2つの重要な判決が下されました。

1.Instituteされなかった根拠は CAFC への上訴対象になる

最高裁におけるSAS判決ではすべてのクレームに対するInstituteについては明確にされましたが、すべての根拠についてInstituteの判断を行うかという点については明確ではありませんでした。つまり、根拠(Grounds)に対する一部Institution(すべてのクレームに対して PTAB における再審議が行われたが、主張された根拠の一部のみに関してしか再審議が行われなかった)場合、CAFCへの上訴対象になるのかが不明瞭になっていました。PTAB から CAFC に上訴された訴訟案件の多くがこの問題に関するものでした。

今回、PGS Geophysical事件において、 CAFC は最高裁のSAS判決はクレームにも根拠(Grounds)にも同等に適用されるものだとし、根拠(Grounds)に対する一部Institutionは不適切で、CAFCへの上訴対象になるとしました。 PTAB ではSAS判決を受け、暫定的に根拠に対する一部Institutionは行わない姿勢をとっていましたが、この方針が継続して続きそうです。

2. PTAB における判決に対する管轄は CAFC にある

たとえ PTAB が IPR 手続きから一部クレームや根拠を除外して最終判決(Final Written Determination)を行っていたとしても、その最終判決に対する管轄は CAFC にあるとしました。 PTAB から CAFC への上訴(つまりCAFCの管轄権)は、 PTAB における最終判決(Final Written Determination)によるものです。この管轄の問題は、一部Institutionされた場合 PTAB の最終判決に含まれていない事柄(つまり、Institutionの際に除外されてしまったクレームや根拠)に対する上訴でも CAFC が適切管轄なのかが問題になっていました。

しかし、今回、PGS Geophysical事件において、 CAFC は一部Institutionされた場合PTABの最終判決に含まれていない事柄に対する管轄も認めました。 CAFC は、Institutionの判断と最終決断が対象になったすべての IPR ですでに行われていたことを受け、 Administrative Procedure Act, 5 U.S.C. § 704におけるfinal agency actionの基準が満たされていたと判断。 PTAB のInstitution判断等に間違えがあったとしても、すでに PTAB における IPR 手続きはすべてのクレームと根拠について終了しているので、上訴された今回のケースでは CAFC に管轄があるとしました。

今回のケースは、当事者同士はすでに和解していて、特許庁が第三者として参加する珍しいケースでした。そのため、SASに関する救済については問題になっておらず、SAS判決に関する何らかの申立(例えば IPR のやり直しなど)がある場合、どのようになるかは不透明なままです。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Bryan Schwartz. Squire Patton Boggs (元記事を見る

ニュースレター、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

chess-game-plan-strategy
特許出願
野口 剛史

Pre-Appeal Brief Review Requestをする価値はあるのか?

アメリカの特許出願において、最終拒絶通知が来た場合、以下の3つのオプションがあります。1)審査を継続するためRCEを出願する、2)上訴する(Appeal)、3)放棄する。また、あまり知られてはいませんが第4のオプション、Pre-Appeal Brief Review (PABR)があることをご存知でしょうか?今回は、そのPABRについて、その価値を考えていきます。

Read More »
Google
特許出願
野口 剛史

特許審査履歴解説: 文献の解釈の溝があったもののインタビューを多様しRCE1回で権利化に成功した案件 (Google)

今回のケースはクレーム補正の提案やリファレンスの解釈の溝を埋めるためにインタビューが多様されており、効果的なインタビューの利用ができていた案件だと思います。RCEは一回行ったものの、その前にちゃんと審査官からAdvisory ActionでRCEでの反論に有効な情報を得ています。

Read More »