最高裁判決:公式の法令注釈には著作権がない

米国最高裁は、5-4の判決で、ジョージア州の公式な注釈付きのジョージア州法集に含まれる注釈は著作権法では保護されないと判決を下しました。この判決により、今後はより多くの法律関連情報に無料アクセスできるようになると思われます。

Georgia v. Public.Resource.Org, Inc., Case No. 18-1150 (Supr. Ct. Apr. 27, 2020) (Roberts, Justice) (Thomas, Justice, dissenting) (Ginsburg, Justice, dissenting).

背景

ジョージア州には Official Code of Georgia Annotated (OCGA)という公式の注釈付きジョージア州法集があります。OCGAは、ジョージア州議会の一部門であるジョージア州改正委員会との契約に基づき、Lexisによって編集・注釈されており、特定の法令を適用する司法意見の要約、編集者注、法レビュー記事からの抜粋、およびその他の研究参考文献が含まれています。この契約では、委員会がOCGAの著作権を所有し、LexisにOCGAのコピーの出版、配布、販売する独占的な権利を付与することが明記されています。

非営利団体Public.Resource.Org, Inc. (PRO)は、公文書への無料アクセスを提供することに専念しており、OCGAのコピーを購入し、無料のウェブサイトを通じて配布していました。しかし、委員会は、注釈に関連した著作権侵害を理由にPROを訴えます。この訴訟に対応してPROは、注釈を含むOCGA全体がパブリックドメインに属するとの宣言的判決を求めて反訴を提起しました。

連邦地裁は、注釈は「法律に制定されたものではなく」、「法律の効力」を欠いているため、著作権保護の対象となると判断し、委員会の主張を支持しました。そして、連邦地裁は、PROに頒布活動の停止を求める終局的差止命令を下しました。しかし、上訴した第11巡回区控訴裁判所はこれを覆し、OCGAはジョージア州総会によって承認されたものであるため、OCGAは著作権で保護されていないと判断しました。第11巡回区は、OCGAの真の「著作者」は「国民」であり、したがってOCGAは「パブリックドメイン」にあると判断しました。この判決を不服とし、ジョージア州は最高裁に控訴しました。

最高裁の判決

最高裁は、OCGA の注釈は著作権保護の対象にはならないと判決しました。最高裁はまず、19世紀にさかのぼる関連判例の分析を行い、これらの判例の背後にある原動力となる原則は、誰も法律を所有することはできないということであるとの見解を示しました。この考え方は、著作権の文脈において、「著作者」という法律用語の解釈を通じてこの原則を適用し、裁判官は、公的な立場で行う「どのような仕事であっても」「著作者」になることはできないとしています。裁判所は、裁判官などの立法者は法律を作る権限を持っており、著作権法上の「著作者」になることはできないと説明しています。裁判所は、立法者が立法者としての職務を遂行する際に作成された説明資料や手続き資料など、立法者が立法者としての立場で行うあらゆる著作物にこの原則が適用されると説明しました。この枠組みを適用して、裁判所は、著作権法に基づく注釈の作成者は委員会であり、この委員会はジョージア州立法府が立法職務を遂行する中で注釈を作成する際に、ジョージア州立法府の一部門として機能しているため、OCGA への注釈は著作権の対象外であるという判決を下しました。

解説

アメリカでは、LexisNexis(今回の公式の法令注釈を請け負った会社)とWestlaw (親会社はThomson Reuters Corporation)の2つの会社が法律系のデーターベースを持っていて、そこにお金を払って情報にアクセスできないと、弁護士として仕事ができない環境になっています。

このような環境になってしまった原因の1つが今回のような公式の法令注釈の問題です。今回のようなスキームで、州や他の立法機関は、LexisやWestlawに法律の注釈を外注しており、その注釈に対する著作権を保持し、LexisNexisやWestlawに独占的な権利を与えることで、許可されていない他のプラットフォームによる情報のアクセスを制限してきました。

実際の法律の文言はパブリックドメインですが、公式の注釈は法律を解釈する上で重要で、主張の重要なサポートになる場合も多いです。また、LexisNexisやWestlawの検索システムでは、興味がある法律に関する判例なども簡単にわかるように原文だけでなく、効率よく作業できるよう様々な付加価値を追加しています。

LexisNexisやWestlawは弁護士にとって必須のツールになっていますが、高額で、事務所の規模やリソースによって、アクセスできる情報に格差が出てくる問題があります。また、実質、LexisNexisとWestlawに独占されているので、第三のプレイヤーが同じようなサービスを提供しようとすると、今回のように著作権侵害で訴えられるという問題がありました。

このように法律系の情報ではLexisNexisとWestlawに今までは独占されていましたが、今回の最高裁の判決で、元データの著作権問題が軽減され、法律情報の分野において、LexisNexisとWestlaw以外から新しいサービスが展開されていくのでは?と思っています。

実はジョージア州のような形で注釈を委託している機関は多いので、今回の判決から今後このスキームで作られた注釈には著作権がないというように解釈されると思います。そうすれば、今回のように著作権侵害で訴えられることを悩まずに、第三者はLexisNexisやWestlawと似たようなサービスを展開できるようになります。

弁護士にとって、LexisNexisとWestlawの2強だけでは競争原理が働かず、サービスを利用する側としては、オプションが少ないので、今回の判決をきっかけに、より斬新で、使用する弁護士のことを考えたサービスが全く別の企業やスタートアップから提供されるような未来もそう遠くはないのかもしれません。

LexisNexisとWestlawは長年司法業界に携わり、昔から本などで司法情報を弁護士に提供し、デジタル化のコストが高い時代に、司法の情報のデジタル化を促進するためには必要なものでした。しかし、デジタル化が当たり前になった今の時代は、新しいサービスを生み出す上で、著作権侵害などを理由にイノベーションの弊害をもたらしているのもまた事実です。

LexisNexisやWestlawは膨大なデータを持っているので、第三者がすぐに同等のサービスを展開することは難しいかも知れませんが、新たにパブリックドメインになった司法情報をうまくパッケージ化し、AIなどの最新の技術を使うことで、全く新しい企業やスタートアップが新しい価値を見いだしていける環境が整い始めているのかもしれません。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者: Amol Parikh. McDermott Will & Emery(元記事を見る

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