今回のアメリカ政府の許可に伴い、ロシアでの知財活動に関する支払いができるようになりました。これにより審査費用や維持費が払えなくて権利が抹消するという最悪の事態は回避されそうです。しかし、ロシアにおける知財権の尊重に関しては不透明な点が多く、引き続き注意して動向を観察する必要があります。
米国特許商標庁(USPTO)は、米国財務省外国資産管理局(OFAC)による一般許可証第31号の発行に伴い、ロシアにおいて特定の知的財産(IP)関連取引が許可されたことを発表しました。許可された取引には、特許、商標、著作権取得のための出願と手続き、および更新料と維持料が含まれます。
米国特許庁はロシア特許庁との提携を解消したまま
USPTOは3月、ロシア知的財産庁(Rospatent)だけでなく、ユーラシア特許機構(EAPO)、ロシアと協力してきたベラルーシ知的財産庁との関わりを打ち切ると発表しています。また、3月11日より、ロスパテントが早期審査機関として行った業務に基づく場合、USPTOのグローバル特許審査ハイウェイ(GPPH)への参加要請を認めない、としました。また、ロスパテントが行った業務に基づく出願に対して、GPPHの下で特別な地位を与えた保留案件については、「USPTOはその地位を取り除き、それらの出願を通常の処理・審査キューに戻す、つまりUSPTOではもはやGPPH出願として扱わない」と当時のUSPTO声明は述べています。
この発表についての新しい情報はなかったので、いまも米国特許庁はロシア特許庁との提携を解消したままと理解したほうがいいでしょう。
ロシアでの知財活動に関する支払いが規制対象外に
しかし、今回の発表で、一般許可証第31号に基づき、ロシア有害外国活動制裁規則(31 CFR part 587 (RuHSR))により禁止されている以下の取引が許可されるようになりました。
(1) 特許、商標、著作権、またはその他の知的財産権の保護を得るための申請の提出および遂行。
(2) 特許、商標、著作権、またはその他の知的財産権の保護を受けること。
(3) 特許、商標、著作権、またはその他の知的財産権の保護の更新または維持。
(4) 特許、商標、著作権、またはその他の知的財産権保護に関する異議申立または侵害訴訟の提起および遂行、またはかかる訴訟に対する防御の開始。
気をつけたい点が、今回の許可は、「ロシア連邦政府の特定有害外国活動に関する財産の阻止」と題する行政命令14024の規定の対象となるロシアの金融機関の開設、維持、引き落とし、または行政命令14066もしくは14068で禁止されている製品の米国への輸入を許可するものではないというところです。
あくまでも、上記の(1)から(4)に示されたロシアでの知財活動に関する支払いに関するもののみが規制対象にならないといった内容ですので、許可の範囲としては限定されたものになります。
参考文献:USPTO Issues Update on Relations with Russian Patent Office