前回、速報として地裁がQualcommの米国独禁法違反を認めたことをお伝えしましたが、233ページにも及ぶ判決文をまとめた記事があったので紹介します。
判決のカギになった事実
- ライセンシーは cellular SEPs, Non-cellular SEPs, and non-SEPsという3つのカテゴリーすべてのライセンスを受けなければいけない状態であったこと。
- Qualcomm は競合モデムチップメーカーへのライセンスをやめ、OEMにチップの値段ではなく、スマートフォンの値段の5%をロイヤルティーとして求めていた。OEMにはLGE, Sony, Samsung, Huawei, Motorola, Lenovo, BlackBerry, Apple, Nokia などが含まれている。
- Qualcomm はライセンス契約を結ばない限りOEMにモデムチップを販売しなかった。
- Qualcomm はCDMAモデムチップとLTEモデムチップの一部でマーケットパワーを持っていた
- チップ供給の停止などを含むOEMに対するQualcomm の行動が反競争的であった。
- Qualcomm の証人に信頼性がなかった。
差止救済措置
地裁判事は以下の5つの救済措置を命令しました。
- 特許ライセンスをモデムチップの提供の条件としないこと。チップ供給などを停止するなどの脅威を示さないでライセンスの交渉や再交渉を行うこと。
- 他のモデムチップメーカーにもSEP特許のライセンスをFRAND条件のもと行うこと。
- モデムチップの独占契約を行わないこと
- 顧客が政府機関に法律の取り締まりや規制に関する情報提供を行うことを妨害しないこと。
- 以上の救済が適切に行われるため、Qualcomm は裁判所に今後7年間、上記の項目に対する対応と記録をレポートとして提出すること。
特許権者への影響
SEPを持っている特許権者は、規格団体においての契約における義務(つまりFRAND条件でのライセンス)の他に、独禁法違反のリスクについても対応を迫られることになります。
また、SEPとnon-SEP特許をバンドルしたportfolioベースでのライセンスも今後は問題になってくる可能性があります。
今回のQualcomm の案件は事実主導のケースであって、今後の特許ライセンスの取り扱いにどのような影響を与えるかは未知数です。しかし、この地裁での判決が高裁でも是正される場合、大きな影響を与えることは間違えないでしょう。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Michael T. Renaud, Bruce D. Sokler, Richard G. Gervase, Jr. and Harold S. Laidlaw. Mintz(元記事を見る)