PTABにおける実在する利害関係者の決定は上訴できない

ESIP Series 2 v. Puzhen Life USA, LLC No.19-1659 において、連邦巡回控訴審は、35 U.S.C. セクション 314(d)(以下「セクション 314(d)」)に規定されている「上訴不可」規定は、すべての実在する利害関係者(real party-in-interest)の特定に関する PTAB の決定の司法審査を禁じるものであるとしました。

この判決は、最高裁判決であるThryv, Inc. v. Click-to-call Techs., L.P., 140 S. Ct. 1367 (2020)に続くものです。(関連記事

背景

ESIPは米国特許第9,415,130号の所有者であり、この特許は殺菌保護と芳香拡散を組み合わせた気化器または拡散器を対象としていました。Puzhen社は、特許請求の範囲が自明であるとしてIPRの申し立てを行い、PTABは最終的に特許請求の範囲は自明であると認定しました。PTABは、最終決定書の一部に、Puzhenが「すべての実在の利害関係者」を特定できなかったことを理由に、Puzhenの申立書の提出を禁止するべきとするESIPの主張にも対処しました。具体的に、ESIPは、被告製品を販売し、IPR estoppelが適用されることに同意していた連邦地裁訴訟の共同被告が、実質的な利害関係者(real party-in-interest)とみなされるべきであると主張しました。このESIPの主張と証拠を検討した結果、PTABは、問題視されていた当事者は35 U.S.C.第312条(a)(2)項の意味における実質的な利害関係者ではないと判断し、従ってPuzhenの申立ては妨げられるべきでないと判断しました。ESIPはこの判決を不服として連邦巡回控訴に上訴しました。

35 U.S.C. §312(a)によると、IPRの申立書は、以下を含む場合にのみ「考慮される」とされています。(1)手数料の支払い、(2)すべての実在の利害関係者の特定、(3)異議を唱えられた各請求項、各異議の理由、およびそれを裏付ける証拠の「具体的な」特定、(4)規則により長官が要求するその他の情報、および(5)特許権者のためのこれらの書類のコピー。Cuozzo Speed Techs., LLC v. Lee, 136 S. Ct. 2131 (2016)では、最高裁は、§314(d)が「IPRを開始する特許庁の決定に関連する法令の適用及び解釈に密接に結びついている問題」の上訴審査を禁止しているため、特に§312(a)の下、そのようなPTABの決定を審査することは禁止されているとしました。同様に、Thryvでは、最高裁は、申立書の適時性に関する問題は、「制度関連法」の適用に関する「通常の紛争」であり、上訴審理の対象外であると判断しました。

Reyna判事が執筆した意見書の中で、連邦巡回控訴裁パネルは、第314条(d)項に基づく司法審査の排除が、第312条(a)(2)項の「利害関係のある真の当事者」という要件に関するPTABの決定にまで及ばないという原則的な理由はないと判断しました。つまり、裁判所は、すべての実在する利害関係者(real party-in-interest)の特定はPTAB機関に関連する法令を巡るもう一つの「通常の紛争」であり、審査を妨げるものではないと判断しました。

解説

通常、PTABでにおけるIPR手続きに対する法的な問題があれば、PTABでの判決は連邦巡回控訴裁に上訴できます。しかし、それには例外があり、35 U.S.C. セクション 314(d)に規定されている「上訴不可」規定の事柄に含まれている問題の場合、連邦巡回控訴裁に上訴できません。(つまり、PTABにおける判断が最終的な判断で、それを覆すことはもうできないということ。)

しかし、PTABにおける判断のどの部分が35 U.S.C. セクション 314(d)に規定されている「上訴不可」規定の事柄なのかは明確ではなく、これに関する訴訟があります。

今回の判決でも引用されたThryv判決ですが、これは最高裁が2020年4月20日に下したもので、PTABによるIPRのタイムバーの決定は上訴できない(つまり、35 U.S.C. セクション 314(d)に規定されている「上訴不可」規定の事柄)と判断されました。関連記事

今回の事件も同じような問題で、すべての実在する利害関係者(real party-in-interest)の特定に関する PTAB の決定が35 U.S.C. セクション 314(d)に規定されている「上訴不可」規定の事柄に含まれるのかが問題になりました。

今回問題になったすべての実在の利害関係者の特定は、IPRの申立時に必要なものです。当然申立は、IPRを開始するか否か(Institution)の判断の前に行われるので、「IPRを開始する特許庁の決定に関連する法令の適用及び解釈に密接に結びついている問題」の上訴審査が禁止されていることから、すべての実在する利害関係者(real party-in-interest)の特定に関する PTAB の決定が35 U.S.C. セクション 314(d)に規定されている「上訴不可」規定の事柄に含まれるとされました。

今回のESIP判決、また最高裁によるThryv判決を見ると、今後もPTABにおけるInstitutionに関わる様々な判決が、「上訴不可」になってくる可能性があります。そのため、IPRを検討する場合、Institutionが行われるよう最善の努力が求められます。もしそこで失敗したら、問題によっては、「上訴不可」と判断されてしまい、PTABにおける決定が最終判断になってしまいます。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Lisa L. Furby and Matthew W. Johnson. Jones Day (元記事を見る

ニュースレター、公式Lineアカウント、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

公式Lineアカウントでも知財の情報配信を行っています。

Open Legal Community(OLC)公式アカウントはこちらから

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

manufacturing
特許出願
野口 剛史

すべての技術者が特許について知っておくべき1つの秘密

特許出願にビジネス主導型のアプローチを採用し、ただ単に数を追い求めるだけでなく、強い特許の取得を目指す取り組みを社内全体で行っていく必要があります。特に、発明者になるエンジニアや研究者には強い特許とはどのようなものかという理解の共有が大切です。

Read More »