最高裁のSAS判決後、PTABはIPRのpartial institutionができなくなりましたが、その代わりとなる裁量によるinstitutionの判断を多く取り入れるようになりました。今回はその流れから、新たにPTABは以下のinstitutionに関する2つの判決を判例扱い(precedential)し、1つを有益なもの(informative)として指定しました。
Becton, Dickinson and Company v. B. Braun Melsungen AG, Case IPR2017-01586 (PTAB Dec. 15, 2017) (Paper 8) – (precedential as to section III.C.5, first paragraph (pages 17–18))
この判例はIPRのInstitutionに関してPTABが考慮した要素について議論されているものです。この判例は以前有益なものという扱いでしたが、今回判例に格上げされました。また、この判例は、2019年7月に発行されたTrial Practice Guideのガイドラインとも合致するものです。
判例として扱われる部分は、以前特許庁に提出された先行文献かそれと同等なもの、または、同じような主張がIPRの申立書に含まれていたときに、PTABがどう§ 325(d)において裁量権を行使できるか6つの要素を特定して議論しています。
Valve Corporation v. Electronic Scripting Products, Inc., Case IPR2019-00064, -00065, -00085 (PTAB May 1, 2019) (Paper 10) (“Valve II”) (precedential)
この判決は、35 U.S.C. § 314(a)におけるIPRのInstitution却下に関するものです。これは、General Plastic factorsについて言及していて、特に最初の要素である“whether the same petitioner previously filed a petition directed to the same claims of the same patent”に関するもので、IPRの申立人が以前のIPRに参加していたことにより、同じ特許の同じクレームに対して申立書を前回提出していると見なすことを示しています。この判例により、1人の申立人が複数の申立書を提出した時以外にもGeneral Plastic factorsが適用されることが明確になりました。
Adaptics Limited v. Perfect Company, Case IPR2018-01596 (PTAB Mar. 6, 2019) (Paper 20) (informative)
この判決は35 U.S.C. § 312(a)(3) におけるIPRのInstitution却下に関するものです。これは、申立書に具体性が欠けていて根拠が過剰に存在する際の判断について言及しています。また、35 U.S.C. § 314(a)において、効率的な運用、特許システムの堅実さ、特許権者への手続き上の平等性などの理由で、申立てを却下することができるということも示しています。
まとめ
PTABにおける判決は法律上限られた時間の間に行われなければいけません。また、リソースも限られているため、IPRが多用される今日、このような判例などを用いてInstitutionの判断をより厳しくする動きは納得できる流れです。今後もこのトレンドは続くと思うので、IPRを検討する場合は、最新の判例やガイドラインを参考にし、institutionが行われるかを見極めることが大切になってきます。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者: Matthew W. Johnson. Jones Day (元記事を見る)