審査官の評価システムを考慮した出願戦略(実務応用編)

審査官は生産性と質の面で評価され、その評価は担当する特許案件の権利化にも影響を与えています。今回は、後編として、審査官の評価システムを理解した上で、どのように審査官の評価を日々の権利化活動に応用できるか考えていきます。

前編のまとめ

前編では、審査官評価システムを実務に応用する際の仮定と、審査官の審査基準やバイアスに依存しない、有効な特許を作る方法を紹介しました。今回は前半を踏まえた実務応用編です。

特許審査を審査官とのコラボ

特許を許可することは、出願人にも審査官にもメリットがあることです。ということは、少なくともこの部分に関しては審査官も出願人も利害が一致していることになります。しかし、書面では審査官もどこまで許可できるかは明言しないので、(電話)面談などを通して、実際に審査官と話して、心証を確認する必要があります。

審査官の関心に合うように自分の主張をおこなう

審査官の評価はカウントシステムです。カウントされるものによっては、出願人に有利なものもあれば、そうでないものもあります。全体的に見たとき、システムは特許を許可する方向にバイアスがかかっています。 しかし、Signatory Review Programなどの特定の時期には、審査が厳しくなり、なかなか特許が許可されないこともあるのが事実です。

しかし、このカウントシステムには特徴があり、office actionのたびにカウントされるものが異なります。つまり、あるoffice actionでは出願を拒絶する方にバイアスがあり、他のoffice actionでは許可する方にバイアスがかかるということです。つまり、毎回のoffice actionがどのステージであって、どちらにバイアスがかかっているのかを理解した上で主張を行うことで、出願が有利に進められます。

特に、after-finalの際のインセンティブは知っておく価値があります。(元記事に添付されているPDFには、after-final office actionの種類によって得られるカウントの違いを示した表があります)

例えば、after-final replyで出願人が審査官の拒絶理由に対する論理的な問題点を指摘したとします。その場合、審査官の返答の種類によるカウントが大きく異なります。例えば、審査官が既存の最終拒絶を取り下げたとします。そうすると、審査官は新しいNon-final office actionを発行しなければいけません。その際のカウントは0です。そうではなく、拒絶を取り下げ、特許を許可すると、カウントは0.5です。しかし、審査官が出願人を説得し、RCE(request for reconsideration)を提出させた後で、特許を許可すれば、カウントは一気に、2.25に増えます。このように、after-finalのカウントシステムは、advisory actionを発行するよう強くインセンティブがもうけられています。

RCEが提出されたと仮定すると、その後の拒絶理由通知でカウントは1、特許を許可すると1.75のカウントが与えられます。つまり、RCEの時点では、審査官は、特許を許可することに対して約2倍のインセンティブが与えられていることになります。

このカウントシステムを有効活用することを考えると、Final rejectionを取り下げるよう審査官に求めるのは非常に難しいので、避けるべきでしょう。そうではなく、after-finalの面談で補正についてお互いに納得できるところまで持ってきて、RCEの後に、同意が得られたクレーム補正を提示し、特許を許可してもらうという流れだと、審査官も多くのカウントが得られ、出願人も望むクレームに近いものが手に入ります。

審査官の年功序列を意識する

審査官に対するインセンティブは出世するごとに変わっていきます。審査官の地位が高くなるほど、より特許を許可しやすい環境になります。最初は、上司の上級審査官などの信頼を得て、後には、自分の裁量で比較的自由に判断することができてきます。

特許庁のデータによると、primaryになる期間を中心とした8年間の勤務で、 per-action allowance rate が23%から36%に伸びたという統計も出ています。また、審査官からの上訴も勤続年数が増えるごとに減っていきます。

審査官の年功序列を考えた上で、実務を考えると、どのような主張をすればいいのかも見えてきます。例えば、若いjunior examinerが担当の場合、適切ではない拒絶理由を維持する方にインセンティブが傾いていたとしても、junior examinerは上司に報告が義務付けられているので、拒絶理由についての間違えを指摘するのも有効です。また、審査官がGS-13(公務員のランク・給与など待遇の目安になるもの)である場合、Signatory Review Programの期間なのか聞いてみるのもいいです。その期間中は生産性に対するカウントが低くなる時期です。

まとめ

審査官に対するインセンティブを理解することで、出願をより効率的に、効果的に、権利化することができます。特に、ここではインセンティブの仕組みを応用した実務例を多く紹介したので、参考にしていただけたら幸いです。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者: Eric D. Blatt. Rothwell, Figg, Ernst & Manbeck, PC(元記事を見る

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